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2024年2月10日実技part2

2024年2月10日実技part2

part2 問題文

●設 例●
会社員のAさん(42歳)は、三大都市圏にあるM市内の戸建て住宅で、母Bさん(66歳)、妻Cさん(40歳)、長女Dさん(14歳)との4人で暮らしている。Aさんの父親はM市内で農業を営んでいたが、3年前にがんで死亡し、自宅の土地建物はAさんが、甲土地(1,100u、地目:宅地)と数カ所ある生産緑地(現在は特定生産緑地)は母Bさんが相続した。ほかに相続人はいない。
甲土地は、アスファルト敷きの月極駐車場として利用しており、一定の収入を得ているが、固定資産税・都市計画税の負担を考えると収益性は高くない。幅員18mのK街道(国道)から6m市道を15mほど入った場所にあり、近隣商業地域と第一種低層住居専用地域にまたがっている。K街道沿いは店舗やマンション等が混在し、甲土地周辺は戸建て住宅やアパート等が立ち並んでいる。
Aさんは、休日には生産緑地で母Bさんの農作業を手伝っているが、最近、休日出勤の多い今の会社を退職して農業に専念したいと考えるようになった。ただ、農業収入だけで今後の生計を維持できるのか不安に感じている。母Bさんは、心身ともに健康で、元気なうちは農業を続けたいと思っている(厚生労働省の2022年簡易生命表によると、女性・66歳の平均余命は約23年である)。
そのような折、Aさんと母Bさんは、乳幼児、小児用品店を全国展開しているX社の担当者の訪問を受け、「駐車場を確保できる甲土地にぜひ出店させてほしい」と提案を受けた。

【X社の提案内容】
・建設協力金方式
・店舗は鉄骨造平屋建て、延べ面積500u、建築費9,000万円、建物の固定資産税・都市計画税は年間70万円(見込み)
・建築資金は、建設協力金として全額X社が建築主に貸し付ける。
・賃借期間20年の普通借家契約
・敷金1,000万円、建設協力金9,000万円(20年間均等返済、無利息)、年間賃料2,400万円
(建設協力金の年間均等返済450万円を含む)
・営業開始後5年間は解約しないが、その後は1年前の解約予告で退去可能

Aさんと母Bさんは、提示された年間賃料に魅力を感じ、X社からの提案を前向きに検討したいと思っている。ただ、どのようなリスクがあるのか、建築する店舗の名義は誰にすればよいのかなどわからないことも多く、FPであるあなたにアドバイスを求めている。

(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから直接聞いて確認する情報
(2)FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.甲土地にX社が希望する店舗を建築することはできますか。
3.甲土地にX社が希望する店舗を建築する場合、Aさんと母Bさんのどちらの名義で建築するのがよいでしょうか。その理由とともに教えてください。
4.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

【甲土地の概要】


【参考】

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part2 ポイント解説

1. アドバイスに当たって必要な情報

(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
甲土地は相続で取得しているが、相続により財産を取得した場合、その取得日・取得費を引き継ぐことから、当時の状況の詳細が分かる資料があるかという確認が必要。
また、Aさんは農業に専念することを希望しつつも、農業収入だけで今後の生計を維持できるのか不安に感じていることから、今後のライフプランを確認することが必要。
特に、長女Dさんは14歳でこれから学費が多くかかる時期になるため、長女の進学希望(公立志向か私立志向か)も確認しておくことが必要。

(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地・建物の物理的状況を、実際に確認することが必要。
また、用途地域・地方自治体の都市計画等を確認し、今後の開発予定・環境変化を把握することが必要である。
本問の場合、乳幼児・小児用品店の需要についても、直接周辺の住民や不動産業者に確認が必要。

2. 甲土地にX社店舗を建築することの可否

建築物の敷地が異なる用途地域にわたる場合、その敷地全体に対して、過半の属する用途地域の用途制限が適用されるため、甲土地には第一種低層住居専用地域の用途制限が適用される。
第一種低層住居専用地域では店舗建築はできないことから、甲土地全体を利用した店舗建築はできず、近隣商業地域部分(400u)と第一種低層住居専用地域の一部分を合わせた店舗とし、その裏側の第一種低層住居専用地域に店舗の来客用の駐車場を設置することが必要となる。

3. 甲土地にX社店舗を建築する場合のリスクと建築主としての名義選択

◆建設協力金方式のリスク
建設協力金方式の契約期間途中でテナント側が倒産や中途解約した場合、予定していた賃貸収入の消滅や転用しづらい仕様の建物が残るといったデメリットに加え、残された建物と保証金の処理が複雑になるデメリットがある。
通常、建設協力金方式の契約では、中途解約の場合にテナント側は建設協力金の返済の権利を放棄し、オーナー側は解約後の建設協力金返還が不要となる条項を入れてあるはずであるが、今回の契約でも同様の条項が盛り込まれているか、確認が必要。

◆建築主としての名義選択
Aさん名義でX社店舗を建築する場合、AさんがBさん名義の甲土地を借りて建物を建築し、X社から賃料を受け取れるため、Aさんは農業収入に加えて不動産収入を得ることが可能となる。
個人(親子等)間で土地を使用貸借する場合、地代を支払ったとしても、その土地の固定資産税以下であれば、土地の使用貸借とみなされ、贈与税等の課税関係は発生しない。ただし、地代の支払いが固定資産税程度であれば、土地の使用貸借とみなされるため、土地の使用権は相続税評価上はゼロとされ(借地権の価値ゼロ)、土地の相続税評価額は自用地となる。
よって、AさんはBさんの固定資産税・都市計画税を負担しつつ、贈与税無しで甲土地を活用して不動産収入を得ることも可能だが、相続税評価上は第三者に賃貸していても減額評価されない点がデメリットとなる。

これに対し、Bさん名義でX社店舗を建築する場合、Bさんが自身名義の甲土地に建物を建築し、X社から賃料を受け取ることになるため、Aさんは直接的には不動産収入を得られない。ただし、自分が所有する土地に建築した家屋を、他に貸し付けている場合、土地は貸家建付地として評価され、自用地評価よりも借地権や借家権の割合分が減額された相続税評価額となる(自分の土地にアパートを建てて賃貸している等)。
Aさんは直接的には不動産収入を得られないものの、Bさんとは同居中であり、家計も同一で今後も家族関係が良好であれば、不動産収入がBさん名義となっても問題はない。また、相続税評価上で第三者への賃貸による減額評価が適用されるメリットがある。

以上を考慮すると、相続税評価上の減額評価が無いものの、今後長女の学費等で安定的な収入が必要なAさんに直接不動産収入が入るように、Aさん名義で建築した方が良いと思われる。また、駐車場部分の賃貸借契約はBさん名義とし、Bさんにも不動産収入が入るようにすることも検討に値すると思われる。

4. 関与すべき専門職業家

建設協力金方式の利用における、測量結果に基づく適正な不動産価格・地代、賃料の算定は、不動産鑑定士が適当。
また、甲土地の相続税評価額や不動産収入に関する課税上の取扱いに関する具体的な税務相談については税理士、建設協力金方式採用時の建物の所有権保存登記については司法書士が適当。

◆この試験問題の公開体験談

【note】momochan 2月10日Part2

【note】來ちゃ♪ FP1級実技試験 Part2 20240210

【note】はひんら@FP1級合格note FP1級実技試験 面接(2024年2月10日 PART2)

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