問54 2021年9月応用
問54 問題文
《設例》の〈X社とY社の財務データ〉および〈X社とY社の株式に関するデータ〉に基づいて、Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄(1)〜(5)に入る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、計算結果は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入し、小数点以下第2位までを解答すること。また、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
I 「株式投資の代表的な評価指標である( 1 )は、売上高当期純利益率、使用総資本回転率、財務レバレッジの3指標に分解して、要因分析を行うことができます。X社とY社の( 1 )の値を比較すると、( 2 )社の値のほうが上回っています。( 2 )社の値が上回る主な要因は、3指標のうち、( 3 )によるものであると考えられます」
II 「X社とY社を財務的な安定性を測る指標であるインタレスト・カバレッジ・レシオで比較すると、X社の値が( 4 )倍、Y社の値が□□□倍です。両社ともに財務的な余裕があるといえます」
III 「X社とY社を株主への利益還元の度合いを測る指標である配当性向で比較すると、X社の値が( 5 )%、Y社の値が□□□%であり、X社の値がY社の値を上回っています」
問54 解答・解説
複数の財務指標による指標値算出に関する問題です。
I 自己資本当期純利益率=自己資本利益率(ROE)=当期純利益/自己資本×100 で、ROEは売上高当期純利益率・総資本回転率・財務レバレッジに分解(逆に言えばこれら3つの指標でROEを導くことが可能)できます。
売上高当期純利益率=当期純利益/売上高×100
総資本回転率=売上高/総資本
財務レバレッジ=総資本/自己資本
この中で、設例の財務データに明示されていないのは、自己資本です。
自己資本は純資産から非支配株主持分(少数株主持分、被支配株主持分)と新株予約権を差し引いたものです。
X社の自己資本=1,900,000−4,000−66,000=1,830,000
Y社の自己資本=350,000−27,000=323,000
よって、両社の自己資本当期純利益率(ROE)は以下の通りです。
X社の自己資本当期純利益率=188,000÷1,830,000×100=10.273…
→10.27%(小数点以下第3位四捨五入)
Y社の自己資本当期純利益率=42,500÷323,000×100=13.157…
→13.16%(小数点以下第3位四捨五入)
従って、自己資本当期純利益率はY社の値のほうが上回っているといえます。
また、ROEを分解した3指標は以下の通りです。
X社の売上高当期純利益率=188,000÷3,500,000×100=5.371…5.37%(小数点以下第3位四捨五入)
Y社の売上高当期純利益率=42,500÷780,000×100=5.448…→5.45%(小数点以下第3位四捨五入)
X社の総資本回転率=3,500,000÷3,600,000=0.972…→0.97回(小数点以下第3位四捨五入)
Y社の総資本回転率=780,000÷830,000=0.939…→0.94回(小数点以下第3位四捨五入)
X社の財務レバレッジ=3,600,000÷(1,900,000−4,000−66,000)=1.967…→1.97倍(小数点以下第3位四捨五入)
Y社の財務レバレッジ=830,000÷(350,000−27,000)=2.569…→2.57倍(小数点以下第3位四捨五入)
従って、売上高当期純利益率と財務レバレッジではY社が上回っていますが、総資本回転率ではX社が上回っています。
ROE=売上高純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ ですので、本問の場合、財務レバレッジで大幅にY社が上回っていることが、ROEでも上回る要因といえます。
II インタレスト・カバレッジ・レシオとは、借入金に対する企業の利息支払い能力を示す指標で、これが高ければ、安心して融資できるってことで、銀行等の金融機関が融資の際に参考とする指標でもあります。
インタレスト・カバレッジ・レシオ=事業利益÷金融費用
(事業利益=営業利益+受取利息・配当金、金融費用=支払利息・割引料)
では、問題文の数値を式に当てはめてみましょう。
X社:事業利益=380,000+6,000+4,000=390,000、金融費用=9,000
Y社:事業利益=95,000+1,200+1,000=97,200、金融費用=2,000
よって、
X社のインタレスト・カバレッジ・レシオ=390,000÷9,000=43.333…倍 ⇒ 43.33倍(小数点以下第3位四捨五入)
Y社のインタレスト・カバレッジ・レシオ=97,200÷2,000=48.60倍
III 配当性向=1株当たり配当額÷1株当たり当期純利益×100(%)ですが、配当金支払額÷当期純利益×100(%) でも表せます。
本問の場合は後者の方が計算しやすいため、以下の通りとなります。
X社の配当性向=76,000÷188,000×100(%)
=40.425…→40.43% (小数点以下第3位四捨五入)
Y社の配当性向=8,500÷42,500×100(%)
=20.00%
従って、配当性向ではX社がY社を上回っており、株主への利益還元の度合いが高いといえます。
以上により正解は、(1)ROE (2)Y(社) (3)財務レバレッジ
(4)43.33(倍) (5)40.43(%)
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