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2024年2月10日実技part1

2024年2月10日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(60歳)は、大学を卒業後、コンサルタント会社に入社し、さまざまな企業の経営戦略立案プロジェクトに従事した。その経験とスキルを活かして、40歳のときにデジタルマーケティング会社を起業し、会社を大きく成長させた後、52歳のときに取引のあった大手商社にM&Aにより売却した。売却後もしばらくは会長として事業を支えていたが、55歳で退任して事業から完全に身を引き、現在に至っている。
Aさんは、現在、M&Aで得た資金の一部で都内に購入したマンションで不動産賃貸業を営む傍ら、複数の会社の社外取締役を務めている。また、経営戦略アドバイザーとして若い起業家の相談に応じており、ベンチャー出資を求められることも多い。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
1.現預金・有価証券 : 6億5,000万円

2.自宅
(タワーマンション1室、築15年、45階建ての25階に所在、市場価格2億5,000万円)
(1)土地(持分換算15u) : 3,000万円
(2)建物(専有面積80u) : 2,000万円
計5,000万円

3.賃貸マンション
(タワーマンション1室、築10年、30階建ての20階に所在、市場価格1億5,000万円)
(1)土地(持分換算10u) : 2,500万円
(2)建物(専有面積50u) : 1,500万円
計4,000万円

4.賃貸マンション(1棟、築10年、5階建て、市場価格5億円)
(1)土地(250u) : 1億円
(2)建物 : 5,000万円
計1億5,000万円

5.X社株式(非上場株式) : 1,000万円(少数株主。起業家の求めに応じて出資)

6.借入金 : △3億円

合計 : 6億円

※不動産の相続税評価額は、2023年4月に知り合いの税理士が試算したものである。
※不動産の市場価格は、大手不動産仲介会社が簡易査定したものである。
※借入金は、賃貸物件の取得に係る事業性ローンで、投資効率を高めるために利用した。
※Aさんの相続に係る相続税額は、約1億7,400万円(配偶者の税額軽減、小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

【Aさんの年間収入の概要】
1.役員報酬 : 1,000万円(2社の社外取締役による報酬の合計)
2.賃料収入 : 2,000万円(賃貸マンションの貸付による収入の合計)
合 計    : 3,000万円 ※金融資産の運用収入は考慮していない。

なお、Aさんは、2024年1月からマンションの相続税評価方法が改正されたとの新聞報道が気になっており、FPであるあなたに具体的な内容を教えてほしいと思っている。

【Aさんの家族構成】
妻Bさん(58歳) :専業主婦。Aさんと自宅で同居している。
長男Cさん(30歳):金融機関勤務。妻と2人で社宅に住んでいる。
長女Dさん(27歳):食品メーカー勤務。Aさん夫妻と同居している。

【親族関係図】

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part1 ポイント解説

1. 納税資金の確保、相続税の軽減対策

(1)生命保険の活用(法人契約だとより軽減効果有り)
(2)小規模宅地の特例の活用
(3)贈与税の配偶者控除の活用
(4)法人の設立と法人への不動産の賃貸

本問では相続税は配偶者の税額軽減・小規模宅地の特例適用前で約1億7,400万円であるのに対し、現預金・有価証券が6億円超あるため納税資金の確保にそれほど必要性はないと思われるが、基本的な対策として、上記の方法の活用は検討すべきである。

2. 遺産分割対策・資産承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 相続時精算課税制度の活用・直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度の活用
(3) 贈与税の配偶者控除の活用
(4) 配偶者居住権の設定

3. マンションの相続税評価方法の改正に関する説明

マンション等の区分所有物件の場合、敷地を多くの入居者で共有しているため、1室当たりの土地面積が小さく、戸建てに比べて土地・建物の評価額が大幅に低い傾向にあった。特にいわゆるタワーマンションでは高層階と低層階の取引価格の乖離が著しいものの、固定資産税や相続税評価額には反映されないことから、相続税対策としてのマンション購入が注目されてきた。
そこで、過度な相続税対策に歯止めをかけるべく、マンション1室の評価方法について、2024年1月以降に相続や贈与で取得した分については取引状況の変化が反映されるようになった。

具体的には、市場価格と相続税評価額の乖離が著しい場合でも、最低でも市場価格の6割になるよう評価額を調整して評価する。
マンション1室の評価額=(相続税評価額×マンション1室の評価乖離率)×評価水準0.6

なお、この評価方法の改正は居住用の1室マンションが対象であり、事業用物件や1棟所有の賃貸マンションは従前通り路線価で評価する。従って、本問の場合2.の自宅タワマンと3.の賃貸タワマンは大幅に相続税評価額が増えてしまうものの、4の1棟賃貸マンションは税理士が試算した通りになると思われる。

3. 所得税対策としての法人化

◆メリット
・賃貸収入は法人のものとなるため、法人税の比例税率と所得分散による所得税軽減効果有り。
⇒法人設立による所得税負担の軽減は、個人所得が900万円程度以上ないと十分なメリットを享受できないが、Aさんの場合不動産収入だけで2,000万円であり、税負担のメリットを享受できると思われる。
・相続発生の際、不動産ではなく株式の相続となるため、純資産価額方式による評価となっても相続税負担の軽減効果有り。またより分割しやすい資産となるため、スムーズな遺産分割効果有り。

◆デメリット
・法人側には不動産取得による登録免許税・不動産取得税、オーナー側には保有不動産の法人への譲渡による譲渡所得税の負担有り。
株式の散逸により不動産の帰属が曖昧になる可能性有り。
・賃貸収入は法人のものとなるため、オーナーが自由に使えるお金に制限がかかるようになる(役員報酬の範囲内)。

また、不動産賃貸業を法人化する場合、土地の名義は個人のままとし、建物のみ法人に譲渡することで、賃貸収入のみ法人に移行する方法を提案する。
法人は個人の土地を借りる形となるため、税務署に「土地の無償返還に関する届出書」を提出することで、借地権の認定課税を避けることができる。さらに、土地は貸宅地となり、相続時には自用地価額の80%相当額として評価されるため、相続税対策にもなる。
法人からは個人に地代を支払うが、家賃収入に比べれば低額であり、多くの所得を法人に移行することが可能。
建物のみであれば法人の資金負担も少なく、簿価が時価と大きな乖離がなければ、簿価で譲渡することで個人側にも譲渡所得が発生しない

4. ベンチャー出資した非上場株式の取り扱い

特定新規中小会社(株式会社)の株式は、取得金額1,000万円まで「寄附金控除」の対象となる。
これはいわゆる「エンジェル税制」で、ベンチャー企業などに出資した場合、1,000万円までが寄附金控除として所得控除され、税負担が軽減されるというもの(エンジェル=創業間もない企業に対し資金を供給する富裕な個人投資家)。

よって、X社株式がエンジェル税制の対象となるものであるか、税理士に確認しておくべきである。

また、同族株主以外の株主が株式取得をする場合や、議決権割合が合計15%未満のグループに属する少数株主が株式を取得する場合には、その株式は配当還元方式で評価する。x

なお、本問ではAさんには現預金・有価証券を6億円超保有しているものの年間収入には金融資産の運用収入は考慮していないが、上場株式の譲渡損益と非上場株式の譲渡損益の通算は不可であり、損失繰越についても控除の対象外であることに注意が必要。

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、法令の遵守(コンプライアンスの徹底)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)、能力の啓発の6つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・事業承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

◆この試験問題の公開体験談

【note】momochan 2月10日Part1

【note】來ちゃ♪ FP1級実技試験 Part1 20240210

【note】はひんら@FP1級合格note FP1級実技試験 面接(2024年2月10日 PART1)

目次          2024年2月10日part2
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