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2023年6月18日実技part2

2023年6月18日実技part2

part2 問題文

●設 例●
Aさん(50歳)は、個人で10年前に開業した美容外科クリニックを経営している。経営は順調であるが、毎年の所得税の負担が大きいと感じており、また、将来の経営への漠然とした不安も感じている。
2023年2月、Aさんの父親が急逝し、実家の近隣にある甲土地(地積800u)と甲土地上にある甲建物(S造平屋建て、築15年、延べ面積300u)を、外資系金融機関に勤める弟Bさん(46歳)とともに相続することになった。母親は10年前に他界している。甲建物は、父親が15年前、建設協力金方式により建築したもので、地元中堅スーパーマーケットのX社に賃貸している。

【X社との賃貸条件】
・20年間の普通借家契約、建設協力金は20年間均等返済(無利息)
・敷金960万円、月額賃料120万円(建設協力金の月額返済23万円を含む)

Aさんは、安定した収入が得られる資産を得たことを心強く思っていたが、先日、AさんのもとをX社の担当者が訪れ、スーパーの経営悪化を理由に甲建物の賃貸借契約を中途解約したいとの申出を受けた。甲土地は、最寄駅から徒歩15分の場所にあるが、数年前から駅前の再開発が進んで大型店舗が次々と進出し、地元の中小店舗は軒並み経営が厳しく、X社も当地から撤退を余儀なくされたとのことである。
Aさんは、弟Bさんに解約の申出を受けたことを伝え、後日、一緒に地元不動産会社のY社を訪問して今後のことを相談したところ、Y社から、「駅ビルが開業して駅近辺に商業機能が集中し、甲建物に入る新たなテナントを探すのが難しい状況です。もったいないですが建物は取り壊し、賃貸マンションを建築してはどうでしょうか」との提案を受けた。甲土地周辺は、駅前の再開発に伴い、マンション需要が高まっており、十分採算が取れるとのことである。Aさんは、先祖代々の土地である甲土地を手放したくはないと考えている。
Aさんと弟Bさんは、Y社から、「賃貸マンション経営は所得税や将来の相続税の軽減になる場合があります。また、区分所有建物にしてご兄弟で分け合えば、今後の資金需要に応じて個別に売却することも可能です」との話も聞き、前向きに検討したいと思っている。建築資金についても、父親から相続した資産に借入金を組み合わせて十分に捻出できそうである。そこで、Aさんは、X社に、すぐに代わりのテナントが見つからないときは、甲建物を取り壊し、甲土地を更地で返還してもらえないかと交渉したいと思っている。

(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから直接聞いて確認する情報
(2)FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.建設協力金方式の概要について教えてください。また、甲建物の賃貸借契約の解約にあたって、X社に甲土地の更地返還を要求することは可能ですか。
3.賃貸マンションを建築するメリット・デメリットを教えてください。また、賃貸マンション経営が所得税や相続税の軽減になる仕組みについて教えてください。
4.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

【甲土地の現況】

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part2 ポイント解説

1. アドバイスに当たって必要な情報

(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
甲土地・建物は相続で取得しているが、相続により財産を取得した場合、その取得日・取得費を引き継ぐことから、当時の状況の詳細が分かる資料や賃貸借契約書の内容の確認が必要。
また、提案されている土地活用は数十年にわたる長期間のプランであるため、今後のライフプランやその資金計画等、推定相続人の意向についても確認が必要。

(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地・建物の物理的状況を、実際に確認することが必要。
また、用途地域・地方自治体の都市計画等を確認し、今後の開発予定・環境変化を把握することが必要である。
本問の場合、特に土地活用による安定的な収益を得ることを希望しているが、甲土地には今後同じような賃貸不動産が建築される可能性もあるため、地元の不動産業者と接触して周辺事情を把握しておくことが必要。

2. 建設協力金方式の概要と更地返還の可否

◆建設協力金方式の特徴
建物は土地所有者が建設し、その建物に入居予定のテナント等から貸与された保証金や建設協力金を、建設資金の全部または一部に充当して建物を建設する事業方式(建設協力金方式)。
建設協力金方式の場合、建物は土地所有者が建設・所有することから、土地は貸家建付地、建物は貸家、建設協力金・保証金は債務となるため、相続税負担の軽減が期待できる。
ただし、契約期間途中でテナント側が倒産や中途解約した場合、予定していた賃貸収入の消滅や転用しづらい仕様の建物が残るといったデメリットに加え、残された建物と保証金の処理が複雑になるデメリットがある。

◆建設協力金方式で更地返還の可否
建設協力金方式では、土地所有者が建設した建物をテナントに貸し出すため、契約期間満了や中途解約によりテナントが退去する際は、テナント側には建物の撤去や更地での返還の必要はなく、地主側には建物とその敷地が残る
建設協力金方式では、建物を入居予定のテナント仕様で建築するため、テナントにとっては利用しやすい建物に入居できるものの、地主にとっては退去後の使途が限定されやすいというデメリットがある。

3. 賃貸マンションを建築するメリット・デメリットと税負担の軽減効果

◆メリット
甲土地の有効活用により、不動産収入を確保しつつ、Aさんの相続財産における金融資産の割合を増大させ、賃貸マンションの区分所有が可能になるため、将来の遺産相続の際に遺産分割を容易にすることができる。

◆デメリット
建築費負担が大きいため、保有している金融資産の一部を建築費に充当する必要がある。また、今後同じような賃貸不動産が建築される等により、不動産収入が当初の想定を下回ることも考えられる。

◆所得税・相続税の軽減効果
所得税法では、業務用の建物や機械等の、時間経過や利用頻度で価値が減少する資産については減価償却資産として取り扱い、建物などの取得価額のうち、毎年一定額または一定割合を経費計上することが可能。よって、実際の現金支出が無くとも、価値が下がった分だけ必要経費にすることが可能。
また、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得の損失は、他の所得と損益通算可能であるため、減価償却により不動産所得が赤字となった場合には、事業所得や給与所得と損益通算し、源泉徴収された所得税の還付を受けることが可能。
さらに、相続税については貸家建付地として借地権・借家権割合に応じて相続税評価額を抑えることができる。

なお、賃貸用資産の取壊しによる資産損失額は、事業的規模ならば、全額を必要経費に算入可能であり、不動産所得が赤字の場合は他の所得との損益通算が可能であるため、賃貸マンション建設に際して既存の甲建物を取り壊しても所得税が軽減される可能性がある。

4. 関与すべき専門職業家

甲土地・建物の有効活用における、正確な測量については測量士測量結果に基づく適正な不動産価格・地代、賃料の算定は、不動産鑑定士課税上の取扱いに関する具体的な税務相談については税理士、不動産賃貸の媒介等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、宅地建物取引士が適当。

◆この試験問題の公開体験談

【note】たやみー fp1級実技試験2023/6/18 Part 2

2023年6月18日part1          目次
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