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2010年6月5日実技part1

2010年6月5日実技part1

part1 問題文

●設 例●
 Aさん(70歳)は、35歳で独立、現在の甲社を築いた創業者社長である。甲社は伝導機器の卸売業としては地区最大であり、多くの機械メーカーを固定客に持ち安定した経営をしており、今後とも順調な業績が見込まれている。甲社の直前期の年間売上高は86億円、経常利益は5億8,000万円である。現在は、長男が専務として事実上会社を取り仕切っており、Aさんは、そろそろ長男に事業を承継しようと思っているが、顧問税理士に相談したところ、自社株の評価が高く自社株の承継および将来の相続税の納付について心配している。甲社の株式のうち80%をAさんが所有している。
 Aさんの家族構成は、下記のとおりであり、長男に自社株を中心とした甲社に関する財産を相続させたいと考えている。二男は大学の教授で、専門分野で高い評価を受け、本人も研究に生きがいを感じており、会社の経営にはまったく関心がない。ただし、最近、自宅建設を計画しており、Aさんは将来の財産分与を視野に入れ、4,000万円程度の支援をしようと考えている。長男と二男は性格も人生観も違い、必ずしも仲がよくないのも心配の一つである。
 また、Aさんは余剰資金の運用手段として、知人から紹介された個人向け国債の購入を検討しようと思っているが、内容についてはよくわからない。
 現状でのAさんの相続財産は約15.8億円、現時点での相続税の見積額は、一次相続と二次相続を合わせて約6億400万円である。

〈Aさんの家族構成〉
Åさん (70歳): 甲社社長           妻  (68歳):
長男  (45歳): 甲社専務取締役・既婚   二男 (42歳): 大学教授・既婚

〈甲社の概要〉
株主構成 :Aさん 160万株(80%)    :妻       10万株(5%)
               :長男   20万株(10%)    :元従業員 10万株(5%)
資本金     :100百万円            発行済株式総数 : 200万株
従業員数  :85人          株式評価上の会社規模 :「大会社」
類似業種比準価額は610円、純資産価額は1,080円である。

〈Aさんの財産の概要〉…各財産の金額は相続税評価額である
 現金・預金                               250百万円
 自宅(土地・建物)                       70百万円 *小規模宅地等の評価減適用後
 倉庫(土地・建物)                     100百万円 *会社に賃貸
 従業員社宅3棟                        110百万円
 賃貸マンション1棟(土地・建物)    80百万円
 甲社株式                                 976百万円 *現在の評価額
 合計                                     1,586百万円

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part1 ポイント解説

● 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。
1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策
 (1) 株式の公開(上場)
 (2) 生命保険・金庫株の活用
 (3) 自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
 (4) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用

2. 遺産分割・事業承継対策
 (1) 遺言の作成
 (2) 遺留分に関する民法の特例の活用
 (3) 代償分割
 (4) 長男への甲社株式の譲渡

3. 自宅資金援助方法
 (1) 住宅取得等資金の贈与税の非課税制度の特例の活用
 直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合、平成22年中であれば1500万円まで、平成23年中であれば1000万円まで非課税措置の適用を受けられる。
 ただし、贈与を受ける側の合計所得金額が2000万円以下等、一定の条件がある。(平成22年中は2000万円を超えても500万円まで非課税。)
 また、この非課税措置は暦年課税の基礎控除110万円や、相続時精算課税の特別控除2500万円とも併用可能

4. 個人向け国債の検討
 固定3年/5年と変動10年の3種類があり、違いは以下の通り。
  3年・・・固定金利(基準金利−0.03%)、中途換金は1年後以降可、毎月発行
  5年・・・固定金利(基準金利−0.05%)、中途換金は2年後以降可、年4回発行
 10年・・・変動金利(基準金利−0.80%)、中途換金は1年後以降可、年4回発行

 Aさんは70歳と高齢のため、満期までの期間が短く発行から1年経過後には中途換金可能な固定3年での運用を提案する。
 ただし、中途換金の場合、直前2回分の各利子相当額の8割が差し引かれる

● FPと職業倫理
 FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
 本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、顧客に対し金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な納税資金対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」 ということになるかと思います。

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