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2010年6月5日実技part2

2010年6月5日実技part2

part2 問題文

●設 例●
 Aさん(70歳)は中小企業の創業者で、同社の会長職にある。自宅と会社は隣接し、三大都市圏の中心都市の都心近くの中小工場と住宅が混在する地域にあり、最寄駅までは徒歩10分程度である。家族は妻と子供3人(長女、長男、二男)で、長男が社長として会社を継ぎ、長女と二男はそれぞれ結婚、独立して生計を立てている。
 Aさんは、相続対策の検討を始めたところである。基本方針として、おおむね法定相続分により財産を相続させることとしつつ、所有する自社株は全株を長男に取得させたいと考えている。しかし、このままでは、相続税の納税資金が不足しそうであることに加え、相続財産のおよそ過半を不動産が占めていることから、遺産分割がしにくく、遺族間でもめるのではないかと心配している。
 そのような折、長男が、等価交換方式などによる土地の有効活用について、友人(大手不動産会社勤務)から提案を受けた。長男はすでにその友人の勧めには乗り気のようであり、Aさん自身も、貸地・貸家の収益性の低さと自宅の老朽化を何とかしたいと思っていたこともあり、その友人の話を聞いてみたいと考えた。
 Aさんは、その友人の話を聞く前に、適切なアドバイスがほしいと考え、ファイナンシャル・プランナーに相談することにした。
 Aさんの所有する不動産は次のとおりである(下図参照)。

自宅……妻と二人で居住。建物(築後35年)は老朽化が進み、使い勝手もよくない。
貸地甲…会社の社屋(木造2階建事務所、築後20年)で使用。建物は会社名義で、通常の権利金を
      授受し、世間相場並みの地代を収受している。
貸地乙…15年前に長男が木造2階建て住宅(長男名義)を建て家族で居住している。権利金や地代
      の収受はまったくない。
貸地丙…古いアパートの跡地を、去年から1年更新で、資材置場(建物なし)として地元建設会社に
      世間相場並みの賃料で賃貸している。
貸家……古いアパートを所有。建物は木造2階建、2DKタイプ(和室2部屋)が、各階に5部屋ずつあ
      り、普通借家契約で賃貸中。現在の入居率は6割程度。

〈Aさんの相談事項〉
1.事業の承継を考えた場合に問題になりそうな不動産はあるか。あればどのように対策を立ててお
  いたらよいか。
2.自宅とアパートを建て替える場合、どのような問題点があるか。
3.建て替えるため、アパート入居者に契約期間満了時に確実に退去してほしいので、契約を定期借
  家契約に変更したいと思っているが、問題はないか。

 

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part2 ポイント解説

●顧客の抱える問題と解決策
1. 事業承継の際問題となる不動産とその対策
  問題
 遺言や生前贈与等により相続対策を取っていない場合、相続財産は相続人による共有となる。従って、会社の社屋として使用している貸地甲についても、相続人である妻・子供3人による共有となり、事業承継者である長男だけの意思で利用・処分することが困難となる。
  対策
 遺言や生前贈与により、貸地甲を事業承継人である長男が確実に相続できるようにする。ただし、非事業承継人の遺留分を侵害する可能性もあるため、遺留分の放棄や、自社株については遺留分に関する民法の特例を活用する等、生前に相続人間での遺産分割協議をしておくことが望ましい。

2. 自宅とアパートを建て替える場合の問題点
  問題
 自宅は前面道路に1.8mしか接しておらず、建築基準法上の接道義務(2m以上)を果たしていないため、このままでは建て替えが難しい。
 また、アパートの前面道路幅員は4mのため、容積率の制限を受けることから、容積率の上限は240%(4m×60%)となり、指定容積率300%までの有効活用が難しい。
  対策
 自宅部分の接道義務を果たしつつ、指定容積率300%までの有効活用を行うためにも、自宅・アパート部分に加えて、長男宅である貸地乙や地元建設会社使用中の貸地丙も含めた一体活用が望ましい。

3. アパート入居者との普通借家契約を定期借家契約に変更
  問題
 居住用建物については、普通借家契約をそのまま定期借家契約に変更することは、法律で認められていない
  対策
 各入居者ごとに、現在の普通借家契約満了時に、現契約の更新ではなく新規に定期借家契約の締結することを要請する。ただし、入居者が希望すれば現契約を更新できるため、家賃の値下げ等、入居者側のメリットに配慮した契約内容とするか、入居者に相応の立退き料を支払って退去してもらう必要がある。

●FPと関連法規
 相続・遺産分割等に関わる具体的な法律問題に関しては、弁護士を紹介し、具体的な税金の質問等に関しては、税理士を紹介すべきです。
また、媒介や契約代理等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、不動産業者を紹介すべきです。
 本問では、顧客は遺産分割で遺族が揉める事、相続税の納税資金不足、土地の有効活用方法について不安を感じており、各問題について具体的な検討を行う際にはそれぞれの専門家の協力を仰ぐべきと考えます。

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