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2011年5月28日実技part1

2011年5月28日実技part1

part1 問題文

●設 例●
 Aさん(74歳)は不動産賃貸業を営んでいる。
 賃貸物件としてマンション・アパート・駐車場を所有しており、賃貸収入は年間50百万円と多額である。そのため、所得税などの税負担が重いと感じている。所得税の申告はAさん自身が行っている(青色申告)。妻(69歳)は夫の不動産管理業務を手伝っており、青色専従者給与を受け取っている。
Aさんは、不動産管理会社設立について関心を持ちはじめたのだが、すでに設立している地主の友人からはその効果は十分あると聞かされている一方、別の友人からは効果はほとんどないと聞かされており、不動産管理会社についてもっと詳しく知る必要性を感じている。
また、万一の場合の相続税の負担が重く、納税資金が不足するのではないかと懸念しており、その対策について検討したいと考えている。
 長男(48歳)はAさんの後継者であり、現在は地元企業に勤務しAさんと同居している。長女(42歳)は他家に嫁いでいるが、賃貸マンションに住んでおり、将来はマンションを購入する予定である。
Aさんは、金融資産について、今までは預金と国債を中心に運用してきたが、利回りが低いので別の運用方法を検討している。新聞記事に、昨年、投資信託の人気が上昇し、残高が相当増加したとあり、投資信託についてもっと知りたいと思っている。
 昨年、相続税額の試算をしたところ、約95.5百万円(一次・二次合計)であった。
 Aさんは、ファイナンシャル・プランナーに相談することにした。

T 所得状況など
   不動産賃貸収入 50百万円(必要経費 20百万円)
   年金など       2百万円

U 主な保有資産(各財産の金額は相続税評価額である)
   自宅       土地  300u  60百万円
             建物  150u  10百万円
   マンション(1棟)土地  400u 150百万円(小規模宅地等の評価減適用後)
             建物 1,200u  80百万円
   アパート (2棟)土地  500u 100百万円
             建物  480u  30百万円
   駐車場      土地  500u  125百万円
   現金預金・国債                      85百万円
   借入金                150百万円
                 合計   490百万円

V Aさんの家族
   Aさん(74歳)
   妻 (69歳)   専業主婦
   長男 (48歳)  既婚  会社員  夫人は専業主婦
   長女 (42歳)  既婚  夫は会社員 子供2人

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part1 ポイント解説

● 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。
1. 納税資金の不足・所得税と相続税の軽減対策
 (1) 法人の設立(法人税の比例税率と所得分散による所得税軽減効果有り)
 (2) 法人の設立後の役員退職金支払い(出資金軽減効果、退職所得控除による所得税軽減効果有り)
 (3) 生命保険の活用
 (4) 駐車場に賃貸不動産を建築することによる評価額引き下げ
 (5) 不動産の売却

2. 不動産管理会社設立のメリット・デメリット
 ◆ メリット
   ・ 社会的信用の向上(法人会計による適正な財務管理)
   ・ 法人税の比例税率による所得税負担の軽減
   ・ 親族を役員にすることによる所得分散効果
   ・ 役員退職時の役員退職金の損金算入 等
 ◆ デメリット
   ・ 法人会計による決算業務等の事務負担の増加 等
⇒不動産管理会社設立による所得税負担の軽減は、個人所得が900万円程度以上ないと十分なメリットを享受できないが、Aさんの所得は多額であり、税負担のメリットを享受できると思われる。

3. 自宅資金援助方法
 顧客から明確な相談事項として挙げられてはいないが、長女が将来マンションを購入する際には、直系尊属からの住宅取得等資金贈与に関する贈与税の非課税制度の特例の活用を提案。

4. 投資信託に関する説明
 投資信託は、多数の投資家から資金を集め、資産運用の専門家が債券や株式などで運用し、得られた収益を投資家に分配する金融商品。
 元本保証ではなく、購入時や解約時の手数料や信託報酬といったコストがかかる場合もある。
 また、日経225やTOPIXといった一定のベンチマークに連動した成績を目指すパッシブ運用型と、ベンチマークを上回る成績を目指すアクティブ運用型があり、一般的にアクティブ運用型の方が信託報酬等のコストが高いことに注意が必要。

5.  FPと職業倫理
 FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ
 本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、顧客に対し金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な納税資金対策や、法人設立のメリット・デメリットをきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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