2011年6月5日実技part2
2011年6月5日実技part2
part2 問題文
●設
例●
Aさん(70歳)は、大都市近郊都市の駅近くの甲土地とその上に建つ事務所ビルを保有し、自己の事業に使用している。その事業は近年業績が落ち込んでおり、また、自身が高齢となり長男(42歳)はすでに独立していることから、Aさんは廃業することを決断し、今後は年金とビルの賃貸収入で生計を立てたいと考えはじめた。
甲土地のある地域は、事務所と店舗で構成される市街地再開発事業が高稼働で開業した街区に隣接しているため、今後の発展が見込まれている。しかし、Aさんのビルは築後40年以上経過した老朽建物なので、貸家にしてもテナントはなかなか決まらないだろうと不動産業者に指摘された。Aさんは、安定した収入源とすることがなによりの希望であるため、現在のビルには固執しないものの、建替えについては、資金の蓄えに乏しくノウハウが不足しているとの思いから、単独で行うことには不安を持っており、専門家に相談したいと考えていた。
そのような折、最近、隣地の乙土地を取得した不動産会社X社より、甲土地と乙土地の敷地で一体開発し、事務所兼店舗ビルを建築する共同事業の提案があった。それによると、Aさんは資金負担なく建物を取得でき、それをX社が借り受けることで安定収益が見込めるという。また、共同化することで地域の需要に合った広さの店舗や事務所のフロア面積を確保でき、住宅等に比べて、高い賃料を期待できるという。Aさんは、それなら安定して賃貸需要が見込める表通りに面した1階に店舗を含めて床配分を受けたいとX社に要望したところ、その場合、Aさんの取得面積全体は小さくなるとの説明を受けた。
X社の提案について長男に話したところ、長男は、「第三者との共同開発だと資産が共有になりはしないか。共有になると困る。やはり、単独で建て替えたほうがよいのではないか」という懸念を示した。Aさんは、X社に長男の話を伝えたところ、「共同事業だが区分所有建物とするので長男の懸念は払拭されるだろう」との説明があった。
Aさんは、X社の提案には魅力を感じているが、これから詳しい提案内容の説明を受けるにあたって、あらかじめファイナンシャル・プランナーの意見を聞いておくことにした。
〈Aさんの相談事項〉
1.単独での建替えとX社との共同事業は、有効活用の手法として、それぞれどのような特徴があるのか。また、X社の提案によると、1階を取得すると取得面積全体が小さくなるというのはなぜか。
2.X社が「区分所有建物とするので長男の懸念は払拭される」と説明した理由について知りたい。
3.X社との共同事業を推進すべきか。
part2 ポイント解説
● 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。
1. 単独での建替えと、X社との共同事業(1階取得による取得面積縮小理由含む)の、それぞれの特徴
◆単独での建替え=自己建設方式
本件における単独での建替えは、自己建設方式といえる。
自己建設方式とは、土地の所有権者や借地権者が自己資金または自身が融資を受けた資金等で、マンション等を建設し、土地の有効活用を図るもの。
土地の所有権者や借地権者は、所有権や借地権を譲渡することなく、建物を取得できるメリットがある。
ただし、大きな資金負担が必要になるデメリットがある。
◆X社との共同事業=等価交換方式
本件におけるX社との共同事業は、等価交換方式といえる。
等価交換方式とは、土地の所有権者や借地権者がその権利の一部または全部をデベロッパーに譲渡し、代わりにデベロッパーが建てたマンション等の一部を取得するもの。
土地の所有権者や借地権者は、資金負担無しで建物を取得できるメリットがある。
また、借地関係が複雑な場合にそれを整理し、建物の専有部分を複数取得することで、遺産分割対策としてもメリットがある。
ただし、土地・建物の所有権はデベロッパー等との共有になるため、その後の土地・建物の活用等については共有者全員の同意が必要となるデメリットがある。
また、等価交換方式では、土地や借地権の評価額に応じて建物の取得面積が決まるが、「表通りに面した1階(店舗部分含む)」は2階以上よりも利用価値が高く、評価額も高めになると考えられる。よって、Aさんが「表通りに面した1階(店舗部分含む)」を望むならば、その分取得面積全体は小さくなる。
2. 「区分所有建物とするので長男の懸念は払拭される」とした理由
長男の懸念は、Aさんの資産がX社との共有になり、自由な活用が難しくなることだと考えられるが、X社との共同事業により取得する建物の専有部分は区分所有となるため、Aさんが自由に使用・収益・処分することができる。
ただし、例えば共同事業で建築した事務所兼店舗ビルを建替えする場合等、専有部分だけでなく共有部分も含めた活用等を行なう際は、他の区分所有者の同意も必要となる。
3. X社との共同事業推進の可否
◆資金負担・収益面
等価交換方式であれば、Aさんに資金負担が生じず、その後のビルの賃貸収入も安定的に見込まれるため、Aさんにとって有益。
特に、現状の甲土地は第1種住居地域の用途制限が適用され、事務所ビルとして活用せざるを得ないが、乙土地との一体利用により用途地域が商業地域に変更され、有効利用の幅が拡大する(敷地の過半を商業地域部分が占めるため)。
また、現在の幅員6mの市道に加えて、10mの市道にも面するようになるため、利用価値・評価額を高めることにもつながる。
◆遺産相続面
長男が資産が共有となる点について懸念を示しているが、区分所有建物のため、Aさんが長男に贈与・相続することも可能であり、Aさんの年齢から、相続発生時にビルの建替えが発生することも考えにくく、大きなデメリットとなる可能性は低い。
◆FPの提案
以上により、X社との共同事業を推進していくべきと提案するが、X社に全て丸投げするのではなく、信頼できる事業パートナーであるかを含め、今後逐次条件を設定していくことも提案する。
●FPと関連法規
X社との共同事業に関わる不動産の登記等に関しては、司法書士を紹介し、具体的な税金の質問等に関しては、税理士を紹介すべきです。
また、媒介や契約代理等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、不動産業者を紹介すべきです。
本問では、X社との不動産取引とそれに伴う税負担が大きな焦点であるため、具体的な検討を行う際には、不動産業者・司法書士・税理士の協力を仰ぐべきと考えます。
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