問53　2011年9月応用

Ａさんが60歳到達後も，厚生年金保険の被保険者としてＸ社に勤務し，特別支給の老齢厚生年金と雇用保険法の高年齢雇用継続給付を同時に受給することができるとした場合，以下の〈条件〉と〈資料〉の計算式を利用して，Ａさんが60歳以後に受け取ることができる在職老齢年金の額（物価スライド特例年金額，平成23年度価額）を，次の(1)，(2)の順に従って求めなさい。
計算過程を示し，答は円単位とすること。なお，資料中の「□」は，問題の性質上，伏せてあるので，適切な数値を求めて計算すること。

(1) 在職老齢年金と高年齢雇用継続基本給付金との併給調整前の在職老齢年金の額はいくらか。

(2) 在職老齢年金と高年齢雇用継続基本給付金との併給調整後の在職老齢年金の額はいくらか。

〈条件〉
・60歳以後の標準報酬月額および賃金月額：240,000円
・60歳以後の総報酬月額相当額（58歳以降，賞与なし）：240,000円
・60歳到達時の賃金月額またはみなし賃金日額に30を乗じて得た額：400,000円
・特別支給の老齢厚生年金（報酬比例部分）の年金額（注）：1,500,000円
（注）物価スライド特例年金額，平成23年度価額である。

〈資料〉
（１）支給停止基準額の計算式（平成23年度価額）
・基本月額が280,000円以下であり，かつ，総報酬月額相当額が460,000円以下であるとき
　支給停止基準額＝(総報酬月額相当額＋基本月額−280,000円)×1／2×12

（２）在職老齢年金と雇用保険法の高年齢雇用継続基本給付金との併給調整
・標準報酬月額が，60歳到達時の賃金月額の61％未満であるとき
　調整額＝標準報酬月額×□／100×12

在職老齢年金と高年齢雇用継続基本給付金に関する問題です。

年金支給開始年齢に到達した後も、厚生年金の被保険者として勤務する場合には、60歳台前半の「在職老齢年金」の仕組みが適用されます。
これにより、賃金（賞与を含む）の額に応じて、年金の一部または全部が支給停止となる場合があり、支給停止となる基準額は、基本月額（月額換算の年金）と総報酬月額相当額（月額換算の賃金）の合計により決定されます。

資料より、基本月額が280,000円以下で、総報酬月額相当額が460,000円以下のとき、
支給停止基準額＝(総報酬月額相当額＋基本月額−280,000円)×1／2×12　です。
（総報酬月額相当額＋基本月額が28万円以下の場合、支給停止なし）

Ａさんの60歳以降の総報酬月額相当額は24万円で、年金月額（基本月額）は12.5万円（150万円÷12ヶ月）ですから、「総報酬月額相当額＋基本月額」は36.5万円となり、28万円を超えるため、年金の一部が支給停止となります。
従って、支給停止基準額＝(24万円＋12.5万円−28万円)×1／2×12＝51万円
よって、
(1)Ａさんの在職老齢年金の支給額（併給調整前）＝150万円−51万円＝99万円　

また、高年齢雇用継続基本給付金と在職老齢年金を同時に受給する場合、60歳以降の賃金の低下割合に応じて、標準報酬月額の6％を限度に在職老齢年金が支給停止されます（併給調整）。

在職老齢年金の調整額は以下の通りです。
賃金の低下率 　　　　　　調整額（年額）
61％以下・・・・・・・・・・60歳以降の標準報酬月額×6％×12
61％超75％未満・・・・ 60歳以降の標準報酬月額×低下率に応じた6％未満の率×12

Ａさんは60歳到達時の賃金月額が40万円で、60歳以後の標準報酬月額が24万円ですから、低下率＝24万円÷40万円×100＝60％　です。
従って、調整額＝24万円×6％×12＝17.28万円
よって、
(2)Ａさんの在職老齢年金の支給額（併給調整後）＝99万円−17.28万円＝81.72万円　

以上により正解は、(1) 990,000円、(2) 817,200円

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