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2012年1月28日実技part1

2012年1月28日実技part1

part1 問題文

●設 例●
 Aさん(75歳)は、不動産賃貸業を営んでいる。毎年の不動産所得の金額は、10百万円前後で推移している。家族は、妻と子供3人の計4人で、子供3人は、それぞれ別の町で独立して家庭を築いている(全員、自宅は持家である)。
 Aさんは将来のことを考え、遺産分割の遺言書を作成しようと思っているが、どのように分割したらよいのかアドバイスを求めたいと思っている。また、将来の相続税と納税資金についても不安に思い税理士に試算をしてもらったところ、相続財産の評価額合計が1,730百万円(小規模宅地等の評価減適用前)、相続税の総額が一次相続では約640百万円(配偶者の税額軽減前)、二次相続で約260百万円であるとのことであった(一次、二次とも小規模宅地等の評価減適用前での税額である)。
 Aさんの財産は下記のとおりであるが、次のような留意事項がある。

・ 非上場X社の株式2万株があり、X社から、そのうちの半分の1万株を300百万円ほどで買い取りたいとの提案を受けている。300百万円で売却した場合の税引後の手取資金は、約200百万円となる。
・ 自宅については、二次相続の際に売却してもよいと思っている。
・ 妻Bの固有財産はない。

<Aさんの財産(いずれも相続税評価額)>
 @預貯金 : 70百万円
 A国 債 :100百万円
 B非上場X社株式 :2万株
  ※X社株式は発行済株式総数10万株で、Aさんの兄が8万株所有している。
  ※X社株式の法人税法上の時価は、1株30千円である(相続税評価額も同額)。
 C駐車場土地(600u、更地)  :200百万円
 D賃貸マンション 土地(400u):400百万円(小規模宅地等の評価減適用前)
  同 上      建物     : 80百万円
 E自 宅             土地(240u):240百万円(小規模宅地等の評価減適用前)
      同 上           建物       : 40百万円
(この自宅については、二次相続の際に売却してもよいと思っている。)

<Aさんの家族構成>
 Aさん(75歳)
 妻B (70歳)・・専業主婦
 長男C(47歳)・・公務員、子供2人
 二男D(45歳)・・銀行員、子供2人
 長女E(41歳)・・主婦、子供1人

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part1 ポイント解説

● 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。
1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策
 (1) 生命保険・金庫株の活用
 (2) 小規模宅地等の評価減の特例の活用
 (3) 相続税の配偶者控除(配偶者の税額軽減)の活用
 (4) 国債・不動産の売却

2. 遺産分割・事業承継対策
 (1) 遺言の作成
 (2) 国債・不動産の売却
 (3) 管理会社の活用による不動産賃貸業の継続

3. 金庫株の説明
 企業が自社株式を相続人から買い取ることにより、相続人はその買い取り額を相続税の納税資金とすることが出来る。ただし、特定の者から買い受ける場合には株主総会の特別決議が必要であり、取得額は分配可能額の範囲内という制限がある。
 また、個人が非上場株式をその発行会社に譲渡した場合、買い取ってもらった金額のうち資本金額を超える分については、「みなし配当」として総合課税の対象となり、累進税率が適用される。しかし、相続や遺贈で取得した株式の場合は、株式等の譲渡所得とされ、分離課税で税率は一律20%となり、相続税の取得費加算も可能

4. 小規模宅地の特例の改正に関する説明
 小規模宅地の特例では、特定居住用宅地は240uを上限に、80%減額となり、不動産貸付用宅地は、200uを上限に、50%減額となる。
 ただし、特定居住用宅地は、配偶者以外が取得する場合には、取得する別居親族は、相続開始前3年以内に自宅を所有していないことと、相続開始からの申告期限まで継続保有すること等が必要。
 本問では、長男・二男・長女は全て別居親族だが、全員を自宅を所有しており対象外となる(配偶者が所有する自宅に居住する場合も対象外)ため、このため、自宅については妻が相続する場合のみ、小規模宅地の特例が適用される。
 また、賃貸マンションのように貸付用宅地に小規模宅地の特例を適用する場合には、相続人が貸付を継続することが必要となる。
 なお、駐車場用地については、更地の場合は原則として小規模宅地の特例対象外となる(アスファルト等の構築物があれば対象となる)。

5. 二次相続まで考えた対策に関する説明
 二次相続とは、例えば夫死亡後に妻と子ども2人が遺産相続し、その後妻死亡時に発生する相続のこと。
 一次相続では、配偶者の税額軽減により相続税負担が軽くても、二次相続では配偶者の税額軽減がなく、また法定相続人も1人少なくなっていることから、二次相続の方が相続税負担が増加する場合がある。
 また、小規模宅地の特例も、別居親族が取得する場合は適用されないケースがあるため、二次相続の際は全く適用されずに相続税負担が増加する可能性がある。

6. 遺産分割方法の提案
 まず、相続税の軽減対策として、自宅土地・建物については、小規模宅地の特例を受けるため、妻に相続させる(賃貸マンションよりも、特例による減額効果が高い)。
また、相続税の配偶者控除(配偶者の税額軽減)により、配偶者は1億6千万円または法定相続分までは相続税が非課税となるため、妻に対して法定相続分(2分の1)まで相続させることで、一次相続時の税負担を大幅に減額させることができる。従って、妻には自宅に加えて賃貸マンションや駐車場も相続させることで、ほぼ全体の半分を相続し、さらにはAさん死亡後も安定した不動産収入を得ることができる(不動産管理については管理会社に委託することも可能)。

 X社株式については、Aさん存命中にX社に譲渡した場合、みなし配当として総合課税の対象となり累進税率が適用されるが、相続発生後であれば、譲渡所得として一律20%の分離課税となり、相続税の取得費加算も可能となるため、手取資金の増加が期待できる。従って、X社の経営状態や大株主のAさんの兄も確認した上で、相続発生時の譲渡も検討に値する。

 以上により、一次相続時の納税資金は、国債とX社株式の譲渡資金で対応可能と思われる。
また、二次相続発生時は自宅の売却資金を納税資金とし、賃貸マンションや駐車場といった不動産は、区分所有や分筆により、子ども3人に相続させるか、代償分割を提案する。

● FPと職業倫理
 FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
 本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、顧客に対し金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な納税資金対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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