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2012年6月2日実技part1

2012年6月2日実技part1

part1 問題文

●設 例●
 Aさん(68歳)は、老舗和菓子屋を営むX社の代表取締役社長である。X社はAさんで3代目で、都心に本店および工場を構え、百貨店にも出店しており、従業員も菓子製造部門と販売部門で50名程度をかかえている。
 X社は、長年、名物の和菓子のおかげで業績は安定していたが、近年は減収減益が続いており直近の2年間は赤字決算になっている。ただし、Aさんの顧問税理士によると、X社の株価は過去の内部留保と本店と工場の土地の含み益が多額なため、業績が低迷しているにもかかわらず思ったほど下がってはいないとのことであり、余剰資金も3億円程度ある。
 Aさんの家族構成は以下のとおりである。長男(38歳)は、大学卒業後にいったんは大手金融機関に勤めたが、父親の要望で将来X社の跡を継ぐために他の菓子メーカーに転職した後、昨年X社に入社したばかりであり、まだ取締役にはなっていない。
 Aさんは、そろそろ長男を取締役にするとともに事業を承継させたいと考え始めているが、経営者としての教育や株式の移転方法などについて、どのようにすればよいか悩んでいる。経営者仲間からは、平成21年度税制改正で創設された「非上場株式等についての贈与税、相続税の納税猶予制度」を利用したらどうか、との助言を受けている。また、長女と二男へも相応の財産を相続させたいと思っている。とくに、現在は借家住まいの長女からは住宅資金について相談を受けており、援助の方法を考えている。
 現時点でのAさんに係る相続税の総額は、税理士の試算によると、約5億900万円とのことである。

〈Aさんの資産(土地については小規模宅地等の評価減は考慮していない)〉
X社株式(Aさんが100%保有) : 10億円(会社区分:中会社の大)
X社の駐車場用地       : 1億円
金融資産           : 1億円
自宅(家屋および敷地)    : 1億円  
合 計              13億円

〈Aさんの家族構成〉
Aさん(68歳)
長男(38歳):X社の後継者(妻と子供1人、自宅を保有)
二男(32歳):勤務医(独身、賃貸マンションに居住)
長女(30歳):専業主婦

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part1 ポイント解説

● 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。
1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策
 (1) 生命保険・金庫株の活用
 (2) 役員退職金の支給
 (3) 自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
 (4) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用
 (5) 小規模宅地の特例の活用

2. 遺産分割・事業承継対策
 (1) 遺言の作成
 (2) 遺留分に関する民法の特例の活用
 (3) 長男への後継者教育(各部門ローテーション・権限の委譲)

3. 長男への事業承継対策の詳細
◆非上場株式の贈与税の納税猶予制度の活用
非上場株式の贈与税の納税猶予制度を活用することで、後継者である長男が先代経営者であるAさんから株式を生前贈与された場合、課税価格の100%に対応する贈与税について、Aさんが死亡するまで納税の猶予を受けることが出来る。
ただし、後継者が贈与前から所有していた分を含め、発行済議決権株式等の総数の3分の2までが適用対象であるため、対象外となる分は長男が自己資金で買い取るか、X社が金庫株として買い取り、対価を納税資金とすることもできる。
また、本特例を受けるには、先代経営者は贈与時までに会社の役員を退任し、後継者が贈与時以降に承継会社の代表者であることが必要であるため、現在代表権の無い長男に代表権を与える必要がある。なおかつ、後継者は役員等に就任して3年以上経過していることが必要 なため、現時点では長男を後継者に指名しても本特例は適用できないことから、3年以上の期間をかけて事業承継を進めていくこととなる。

◆長男への後継者教育
後継者教育には、一般に社内・社外で行うものがあり、社内教育としては自社の各分野(営業・財務・労務等)のローテーションや、責任ある地位への権限委譲等がある。また、社外教育としては、他社勤務や子会社・関連会社の経営、セミナー活用等がある。
長男は大手金融機関と同業他社での勤務経験があり、一定の知識・経験を積んでいるものの、X社には昨年入社したばかりであることから、後継者教育として各部門を経験させ、その後責任ある地位に就かせた上で権限を委譲することで、円滑な事業承継を図ることが出来ると思われる。

4. 長女への自宅資金援助方法
◆住宅取得等資金の贈与税の非課税制度の特例の活用
直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合、平成24年中は、省エネ・耐震性住宅は1,500万円まで、それ以外の住宅は1,000万円まで非課税措置の適用を受けられる。
また、この非課税措置は暦年課税の基礎控除110万円や、相続時精算課税の特別控除2500万円とも併用可能

5. 二男・長女に相応の財産を相続させる遺産分割対策
◆遺留分に関する民法の特例の活用
Aさんが長男に贈与した]社の株式について、遺留分算定基礎財産価額に算入しない「除外合意」や算入額を固定する「固定合意」により、]社株式に関わる遺留分減殺請求を回避することができる。
ただし、推定相続人全員の合意が必要なほか、経済産業大臣の確認等、適用を受ける要件がある。

◆小規模宅地の特例の活用
小規模宅地の特例では、特定居住用宅地は240uを上限に、80%減額となる。
ただし、特定居住用宅地は、配偶者以外が取得する場合には、取得する別居親族は、相続開始前3年以内に自宅を所有していないことと、相続開始からの申告期限まで継続保有すること等が必要。
本問では、長男は自宅を取得しており、長女は住宅取得資金の援助を要請しており近い将来自宅を取得すると思われるが、二男は賃貸マンションに住んでいるため、二男が取得する場合には要件を満たすことで特例を受けられる。
   
以上の特例を活用し、X社が自社株式を金庫株として買い取った対価や役員退職金等も含めて遺産分割を行うことができれば、税負担を抑えつつ、相続人間の争いを回避しながら、二男・長女に相応の財産を相続させることが可能と思われる。

 FPと職業倫理
FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、顧客に対し金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な納税資金対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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