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2013年6月1日実技part1

2013年6月1日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(85歳)は土地資産家である。Aさんには子供が3人おり、いずれも仲がよく近所に住んでいる。長男・二男はサラリーマンでそろそろ定年退職が近いが住宅ローンもまだ残っており、暮らし向きは決して楽ではない。長女は嫁いで近所の賃貸住宅に住んでおり、Aさんが妻を亡くしてからは献身的にAさんの身の回りの世話をしてくれている。長女はマイホームがほしいと常々話している。
Aさんは長寿の家系で今もすこぶる健康で独りで住んでいるが、不動産収入が自分に集中していることや、遺産分割は長男を中心に相続させるべきか子供3人で均分に相続させるべきかまだ決めていないことなど、将来のことが心配になってきている。

〈Aさんの財産の概要:相続税評価〉※相続税の総額は、約10億円と見積もられている。
自宅土地660u   :300百万円(小規模宅地等の評価減適用前)
自宅建物250u   : 10百万円
貸宅地3,300u   :300百万円(年間地代30百万円)
※貸宅地には事業用定期借地権が設定されている。
賃貸ビル土地3,300u:300百万円
賃貸ビル建物6,600u:200百万円(年間賃料100百万円)帳簿価格=時価=200百万円
駐車場土地6,600u :600百万円(年間賃料15百万円)
金融資産      :600百万円 
合計        2,310百万円

駐車場土地は戸建て用地に適しており、複数の戸建て分譲業者から「売らないか」と持ちかけられているが、どのように判断したらよいかわからない。
取引銀行より、対策として(1)資産管理会社を新規設立して賃貸ビル建物の売却、(2)収益物件購入、(3)駐車場土地に賃貸マンション建設、(4)遺言作成、(5)生前贈与、(6)生命保険の活用などの提案を受けているが、どうしたらよいかわからない。
先日紹介された収益物件で非常に条件がよく気に入ったものが出てきた。
収益物件の時価は1,500百万円で、相続税評価は400百万円、年間賃料90百万円である。

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part1 ポイント解説

● 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。
1.  納税資金の不足、所得税・相続税の軽減対策
(1) 生命保険の活用
(2) 小規模宅地等の評価減の特例の活用
(3) 法人の設立(法人税の比例税率と所得分散による所得税低減効果有り)
(4) 法人の設立後の役員退職金支払い(法人税の低減、退職所得控除による所得税低減効果も有り)

2. 遺産分割・事業承継対策
(1) 遺言の作成
(2) 不動産の購入・建設・売却
(3) 生前贈与・生命保険の活用

3. 不動産収入の本人集中による問題点
多額の不動産収入を得ているものの、すべてAさん個人の所得となっているため、毎年多額の所得税負担が発生していると考えられる。そこで資産管理会社の設立や資産の生前贈与等により所得分散を図り、現在の所得税負担を軽減しながら、将来の相続税の納税資金に備える ことが必要。

4. 戸建て用地に適した駐車場土地の売却判断
Aさんの他の不動産(貸宅地・賃貸ビル)に比べると、駐車場土地は収益性が低い。しかし、戸建て用地に適していることから、住宅街近郊にあるものと考えられるため、取引銀行の提案のように、賃貸マンションを建設することで、より多くの賃料を得ることが出来ると見込まれる(ただし用途地域等の規制の事前確認要)。さらに、賃貸マンションの建設により、当該土地は相続税評価上では貸家建付地として、借地権・借家権割合分が減額評価され、相続税の負担軽減も図ることが可能。
本問では、資産保全を図りながら相続税対策を行う必要があることから、賃貸マンション建設による賃料見込や建設資金の融資可否等、まずは取引銀行と検討の上、戸建て分譲業者への売却を検討することを提案する。

5. 取引銀行による提案に関する説明
(1)資産管理会社の新規設立・賃貸ビル建物の売却
土地の名義は個人のままとし、建物のみ法人に譲渡することで、賃貸収入のみ法人に移行する方法。
法人は個人の土地を借りる形となるため、税務署に「土地の無償返還に関する届出書」を提出することで、借地権の認定課税を避けることができる。さらに、土地は貸宅地となり、相続時には自用地価額の80%相当額として評価されるため、相続税対策にもなる。
法人からは個人に地代を支払うが、家賃収入に比べれば低額であり、多くの所得を法人に移行することが可能。
建物のみであれば法人の資金負担も少なく、簿価が時価と大きな乖離がなければ、簿価で譲渡することで個人側にも譲渡所得が発生しない

(2)収益物件購入
時価評価に対して相続税評価は大幅に低く、また取得資金を融資で賄う場合には債務控除となるため、相続税の負担軽減効果 が期待できる。

(3)駐車場土地に賃貸マンション建設
前述4.の通り。

(4)遺言作成
相続財産の大半が不動産のため、均等な遺産分割は困難であることから、生前の遺言作成は相続争い回避には必須。また、遺言作成の際は遺留分に配慮 することが必要。

(5)生前贈与
平成25年度税制改正により、相続時精算課税の適用対象が20歳以上の孫に拡大(贈与年の1月1日時の年齢)されたため、一定額まで贈与税の非課税措置を受けながら、孫に対しても生前贈与を行うことが可能となる。
ただし、相続発生時は孫への贈与分は「相続税の2割加算」の対象 となるため、注意が必要。

(6)生命保険の活用
死亡保険金には、法定相続人の数×500万円までの非課税枠があり、また保険金受取人の固有の財産となるため、遺産分割協議の対象外 となる。よって、相続税の負担軽減を図りながら、特定の相続人に資産を遺すことが可能。

6. 遺産分割方法の提案
長女のマイホーム希望については、直系尊属からの住宅取得資金贈与の非課税制度や、自宅土地を長女に相続させ、小規模宅地の特例を適用する方法が考えられる。
全体的な遺産分割方法としては、Aさんには子・孫が多く、均分に相続させると将来的には資産が細切れとなってしまう可能性が高い。
可能であれば長男を中心に相続させ、長女や二男による遺留分減殺請求権の行使を抑制するように、前述の対策を実施していくことを提案する。

 FPと職業倫理
FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、顧客に対し金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な納税資金対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」 ということになるかと思います。

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