2013年6月1日実技part2
2013年6月1日実技part2
part2 問題文
●設
例●
Aさん(52歳)は、地方の資産家の生まれであり、現在は首都圏で会社勤めをしている。この3月に故郷で一人暮らしをしていた母親を亡くし、不動産等の財産を相続した(Aさん以外に相続人はいない)。
相続財産の概要は、次のとおりである。
(1)
不動産:自宅、アパート、貸し駐車場
(2)
預貯金、株式等
Aさんは、故郷に戻る予定はなく、相続した不動産(既成市街地等内にはない)を売却し、相続税を支払った残りのお金で、都内で収益不動産を購入しようと考えた。
Aさんの給与収入は約1,500万円、家族は妻と社会人の子供2名(娘・息子各1名で、いずれも未婚)で都内の1戸建てに4人で暮らしている。
不動産投資に充当できる現預金は3億円で、不足分は借入で調達するつもりである。借入に関しては以前から取引先のS銀行より変動金利2%での融資セールスを受けている。
Aさんはリスク資産への投資経歴が長く、投資に際してはミドルリスク・ミドルリターンのスタンスである。また、勤務先の株式を含めた株式・債券や別荘・自宅等、万一のときに処分可能な資産を保有している。
折しも、知り合いの不動産業者から、下記物件P(賃貸マンション:売却希望価格5億円)の紹介を受けた。物件Pは、東京S区内の著名な住宅地にあって、住環境に優れている。なお、所有者は、事情があって売り急いでいるとのこと(Aさんの知り合いの不動産鑑定士の意見によれば正常価格は6億円程度)である。
Aさんは、物件Pの近くの大学出身で付近の地理に明るく、将来は、居住してもよいと考えている。
【物件Pの概要】
・利回り:単純利回り7%(平均稼働率95%)
・地積660u、建物延面積1,200u
・公法上の規制:第2種低層住居専用地域。建ぺい率60%・容積率200%、準防火地域、高さの最高限度12m、敷地面積の最低限度70u
・建物の構造等:3階建て鉄筋コンクリート造、築12年。メンテナンス状況良好。検査済証あり。
・建築会社:T建設(1部上場ゼネコン)
・部屋数は、大きめの3LDK中心に12戸。各戸3ナンバー対応の駐車場有り。
・最寄り駅のK大学駅からは徒歩20分と距離があるが、周辺は大規模な公園等の緑が多く、日用品スーパーや高級スーパーが近くにある。
・現在のところ、役員社宅等のニーズが高く、入居者募集には懸念がないとのことである。
〈Aさんの相談事項〉
1.投資用不動産購入のメリットを整理して教えてほしい。
2.故郷の不動産を売却したときに利用できそうな税制上の特例があれば教えてほしい。
3.物件Pを購入しようと考えているが、どういう点に留意すればよいか、リスクも示してアドバイスしてほしい。
part2 ポイント解説
● 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。
1. 投資用不動産購入のメリット
実物不動産への投資による収益は不動産所得となるが、不動産所得の赤字は、他の所得と損益通算可能であるため、Aさんの場合、諸経費が家賃収入を上回る場合には、給与所得から源泉徴収された所得税・住民税の還付が受けられる。
また、相続の際、不動産の相続税評価額は路線価・固定資産税評価額となるが、時価よりも低い価額となるケースが多く、時価評価となる預貯金・有価証券よりも有利となる。
2. 故郷の不動産売却時に利用可能な税制上の特例
問題
顧客は故郷の不動産を譲渡し、新たに収益不動産を購入しようとしているため、「特定の事業用資産の買換えの特例」を適用できる可能性がある。
特例が適用された場合、譲渡収入の80%について課税を繰り延べられるが、適用要件の1つとして、譲渡する不動産は所有期間が10年超である必要がある。
対策
Aさんは相続で不動産を取得しており、取得日は引き継がれる。所有期間10年超であれば、「特定の事業用資産の買換え特例」が適用されるため、母親が不動産を取得した日を確認する必要がある。
不明な場合には、法務局で登記簿を確認
する。
3. 物件P購入に関する留意点・リスク
物件Pの現在の所有者が売り急ぐ事情が、所有者自身の事情によるものか、物件自体や周辺環境に問題があってものか、確認する必要がある。物件自体や周辺環境によるものであれば、大きなリスクとなる可能性がある。
また、Aさんは投資経歴も長くミドルリスク・ミドルリターンのスタンスではあるが、本件では借入金は変動金利、物件は役員社宅等の高ニーズと、仮に景気低迷による悪い金利上昇が起きた際には、金利負担の増加と稼働率低下(企業の社宅利用低下)が同時に発生するため、その場合には自身や社会人の子どもが居住する等の対応を事前に検討しておく必要がある。
なお、利回りについても、単純利回りは、不動産投資における諸経費(固定資産税・維持管理費等)を考慮していないため、投資判断に有効とは言いがたい。
従って、不動産の投資判断には、諸経費を考慮した純利回り(実質利回り・ネット利回りとも言う)を確認することが必要。
純利回り(%)=(家賃収入−諸経費)÷総投資額×100
● FPと関連法規
相続や不動産投資に関わる具体的な税金の質問等に関しては、税理士を紹介すべきです。
また、媒介や契約代理等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、不動産業者を紹介すべきです。
本問では、顧客は不動産投資を検討しており、顧客の知り合いの不動産業者とは別の不動産業者の協力を仰ぐことも検討に値します。
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