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2013年6月8日実技part1

2013年6月8日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(75歳)は中小企業X社の創業社長である。X社は毎期1億円程度の利益を計上する自他ともに認める優良中小企業である。X社株式は、Aさんが100%保有している。
取引銀行からは、「X社株式の評価が高くAさんに相続が発生したら納税や遺産分割などで大変なことになる。今年の税制改正で『経営承継円滑化法』が随分利用しやすくなるなど、事業承継・資産承継の税制が大きく変化してきているので、何らかの対策を検討しておくことが必要ではないか」と指摘されている。Aさんは以前『経営承継円滑化法』の活用を検討したが、贈与税の納税猶予を使うと役員を辞めなければならないことと、借入れを伴う不動産対策との併用が効かないことがネックになり活用を断念したことがある。ちょうど来年長男に代表権を譲ろうかと考えていたが、対策はどうしたらよいかわからない。
Aさんには3人の息子がおり、長男(後継者)はX社の専務取締役、二男三男はともに他社のサラリーマンをしている。それぞれ3人の子供をもうけ、自宅も保有しているが、いずれも住宅ローンや子供の教育資金負担などを抱えており決して暮らし向きは楽ではない。
Aさんの自宅(独居)は会社名義で土地330u、建物280u(土地建物合計時価200百万円、相続税評価50百万円)で豪華社宅に該当し家賃は相場家賃(毎月50万円)を会社に払っている。X社保有の本社土地は400u、建物800u(土地建物合計時価300百万円、相続税評価75百万円)である。(自宅および本社土地は小規模宅地等の評価減適用前)
いずれも時価は帳簿価格を少し下回る程度と言われている。税理士からは「小規模宅地等の評価減の特例をうまく使えればよいのにねえ」と言われたがよくわからない。
Aさんにかけられている生命保険は、個人契約の終身保険(死亡保険金額20百万円)と解約返戻金のピーク(200百万円)が来年到来する法人契約の逓増定期保険のみである。
Aさんの保有資産は、下記のとおりである。最近は国債に興味があるが、国債の価格変動と金利の関係がよく理解できていない。

〈Aさんの財産の概要〉※Aさんの相続税の総額は、約6億円と見積もられている。
X社株式    :800百万円(相続税評価:大会社・類似業種比準価額方式)
金融資産    :200百万円
退職金支給予定額:300百万円
賃貸不動産   :200百万円(年間家賃30百万円)

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part1 ポイント解説

● 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。
1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策
(1) 生命保険・金庫株の活用
(2) 役員退職金の支給
(3) 自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
(4) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用
(5) 小規模宅地の特例

2. 遺産分割対策・事業承継対策
(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用
(3) 相続時精算課税制度による生前贈与の活用
(4) 孫への住宅資金・教育資金贈与の非課税措置の検討

3. 経営承継円滑化法の改正の詳細
非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度等の、事業承継税制の適用要件や手続きが、平成25年度税制改正により拡充・簡素化。
◆後継者が先代経営者の親族のみ ⇒ 親族外承継も適用対象化
◆雇用の8割以上「5年間毎年」維持 ⇒ 雇用の8割以上を「5年間平均」で評価
◆先代経営者は贈与時に役員退任 ⇒ 先代経営者は贈与時に代表者退任(残留可)
◆先代経営者の個人債務等を株式から控除 ⇒ 個人債務等を株式以外の相続財産から控除(猶予税額の増加効果有り)

本問の場合、Aさんは以前贈与税の納税猶予制度を検討した際、役員退任と借入を伴う不動産対策が活用できないことから断念したが、今回の改正により、株式贈与時に代表者を退任しても、役員として残留は可能となり、また借り入れについても相続財産からの控除が認められるため、前向きに検討してよいと考えられる。

4. 小規模宅地の特例の活用方法
平成25年度税制改正により、小規模宅地の特例は、特定居住用宅地の適用面積が240uから330uに拡大され、居住用宅地と事業用宅地の併用も可能となり、最大730uまで80%減額が可能となった(平成27年1月1日以降の相続・遺贈より)。
本問の場合、自宅(豪華社宅)・本社ともに会社名義のため、このままでは小規模宅地の特例が適用できないが、例えば役員退職金としてAさんに現物支給すること、または融資を得て自宅・本社を買い取ること等で、特例適用を狙うことが可能。

5. 生命保険の活用方法
法人契約の逓増定期保険では、企業が受け取った解約返戻金は、役員退職金以外にも借入金返済や設備投資等の事業資金としても活用できるため、一旦解約して事業資金とするか、役員として残るAさんの死亡退職金の原資に充当することも提案できる(代表者退任後の役員報酬は、50%以上の減額が必要)。

6. 国債と金利の関係と個人向け国債の説明
社債や株式同様、国債も金融市場における売買の対象であり、債券の価格は、市場金利が上昇すると下落し、市場金利が低下すると上昇する。ただし、これは銀行等の金融機関が売買する通常の国債に関してであり、個人向け国債は発行から1年経過後には中途換金可能(国が額面金額での買い取りを保証している)であるため、金利が上昇しても、元本割れしない。
また、変動10年タイプであれば、金利変動にも対応するため、金利上昇リスクにもある程度対応できる商品といえる。

 FPと職業倫理
FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、個人向け国債に関しても金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な納税資金対策・事業承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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