2013年6月8日実技part2
2013年6月8日実技part2
part2 問題文
●設
例●
Aさん(70歳)は妻(68歳)との二人暮しである。子供は息子が二人で、それぞれ地方で仕事と家庭を持ち、Aさんのもとへ戻ることは難しい状況にある。
Aさんの戸建住宅(木造2階建4LDK)は、都心から35分程の、40年程前に大手不動産会社が即日完売した分譲地内にある。高台で日照・通風が良く、駅や買物などはやや急な坂を下るが15分程で済み、子育てには良好な環境であったが、建物は相当に老朽化が進んでいる。
Aさん夫婦はそれぞれ腰と膝に痛みを抱え、世間で言われるところの「高齢者が戸建住宅
に住む悩み」を現実に感じ始めてきており、住替えを思案中である。住替えにあたっては、老後資金捻出のためいずれ自宅を売却することになるが、さしあたり空家にしておくのも不安なので、漠然と「定期借家方式で貸す」あるいは「更地化して駐車場や資材置場として貸す」などを考えている。
また、Aさんは乗降駅近くの商店街のはずれに、父親から単独相続した甲土地を所有している。甲土地は父親の代から20年間青空駐車場用地として、近隣で商店を経営しているBさんに1年更新で賃貸している。
先日、甲土地の隣地所有者で医院を経営するX法人から「共同でRC造5階建、管理・運営は専門業者に委託する“サービス付き高齢者向け(賃貸)住宅”を建てないか。区分所有する床の持分割合は提供土地の面積比でどうか」との提案があった。まだ決めかねているが、いずれにしても、そろそろ資産整理を考える時期だと思っていたAさんは、とりあえずBさんに今年限りで甲土地の返却を求めたところ、Bさんは「20年間も借りていれば借地権があるはずなので、無償で返すことはないのでは」と友人に言われたと、素直には返却に応じてくれず困っていた。今回ファイナンシャル・プランナーが来訪したので相談を持ちかけた。
〈Aさんの相談事項〉
1.自宅を売却した場合に利用できる税制上の特例があればアドバイスしてほしい。
2.青空駐車場用地である甲土地には「借地権」があるのか。
3.X法人がAさんとの共同開発を希望する理由は何か。この持分割合を受け入れるべきか。提案のメリットや留意する点などをアドバイスしてほしい。
part2 ポイント解説
● 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。
1. 自宅売却時の税制上の特例
自宅売却時には、いわゆる居住用財産の譲渡所得の特例(3,000万円特別控除・買換え特例・軽減税率の特例)が利用できる。それぞれ一定の所有期間を満たすこと等の適用条件があるが、いずれも税負担の軽減・繰り延べ効果がある。
本問の場合、40年程前に購入した土地のため、売却時にはそれなりの売却益が発生すると考えられるが、新たな住宅を購入し住み替えるのであれば、買換え特例による税負担を繰り延べることが可能。
2. 青空駐車場用地である甲土地の「借地権」の有無
借地権は、建物所有目的で土地を賃借する際に発生するため、原則として青空駐車場に借地権は発生せず、契約満了時には土地を地主に返却する必要がある。また、契約満了前であっても、契約書上の通告事項(○○ヶ月前に通告する等)に沿っていれば、家屋の賃貸借契約のような立ち退き料も不要。
なお、父親の代からの付き合いもあり、円満な契約解消を望むのであれば、代用の駐車場の斡旋や不動産業者の紹介等、Bさんが納得できる対応策を用意するのが望ましいと思われる。
3. X法人とAさんとの共同開発(メリット・留意点等)
●X法人が共同開発を希望する理由
X法人所有地は、前面道路幅4mで路線価30万円だが、甲土地と一体利用することで、2方面の道路に面した角地となり、さらに前面道路幅8m・路線価40万円となる。これにより、容積率の制限を大幅に緩和することできるため、より大規模な土地開発が可能となる。
※前面道路の幅が12m未満の場合、容積率は以下の通り(前面道路幅は広い方)。
住居系用途地域の場合……前面道路幅×4/10
その他の用途地域の場合…前面道路幅×6/10
この計算式結果と指定容積率を比べて、小さいほうが容積率の上限となるため、前面道路幅が広くなると容積率の制限が緩和される。
●X法人が提示した持分割合の是非
路線価や前面道路幅が同等であれば、面積比による持分割合も妥当だが、本問の場合は甲土地の方が路線価や前面道路幅で大きく上回るため、その分を上乗せした持分割合を主張すべき
ものと考えられる。
●X法人提案のメリット
Aさんは戸建住宅からの住み替えを思案中であり、等価交換方式で賃貸マンションを建設し、各持分に応じたマンションの専有部分を得ることで、Aさんは資金負担無しにサービス付き高齢者向け(賃貸)住宅を入手できる。
また、建物の専有部分を複数取得することで、将来の相続発生の際、息子2人にそれぞれ専有部分を相続させるといったような遺産分割対策としてもメリットがある。
また、当該地域が既成市街地等およびそれに準じる地域であれば、地上3階建て以上で耐火構造の賃貸マンションを建設する場合、立体買い換えの特例の適用を受けることにより、不動産の譲渡益に関する課税を繰り延べる
こともできる。
●X法人提案の留意点
配分や細部の取り決めについて、X法人と全て合意して事業を進められるとは限らず、意見の対立が起こることもあるため、状況によっては信頼できる不動産業者を選定し、仲裁してもらうことも必要となる。
また、サービス付き高齢者向け賃貸では、通常の賃貸マンションよりもサービスを提供する管理・運営業者の質が重要
となるため、信頼できる業者かどうか確認することも必要。
FPと関連法規
相続や不動産収入に係る具体的な税金の質問等に関しては、税理士を紹介すべきです。
また、等価交換等における権利割合については不動産鑑定士、土地活用等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、不動産業者やデベロッパーを紹介すべきです。
本問では、顧客は主に土地の処分・有効活用方法について不安を感じており、借地人やX法人との交渉次第で、各専門家の協力を仰ぐべきと考えます。
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