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2013年6月16日実技part2

2013年6月16日実技part2

part2 問題文

●設 例●
Aさん(65歳)は、三大都市圏の市街地で、地主Bさんが所有する甲土地(JR線K駅徒歩6分)を、親の代から建物所有目的で賃借している。甲土地上には、親が建てた築45年の木造2階建て住宅(100u)と、同じく築45年の木造2階建てのアパート(240u)の2棟が建っている。Aさんは妻(65歳)と二人でこの戸建て住宅に居住している。Aさんは元会社員で定年退職後も嘱託職員として引き続き同じ会社に勤務している。Aさん夫婦には2人の娘がいるが、いずれも遠方の他家に嫁いでいて、こちらに帰る意向はない。Aさんの収入は給与収入400万円、アパート収入が現在入居している4室分で年300万円、公的年金が年140万円ほどである。金融資産は約3,000万円保有している。甲土地の借地契約はすでに更新を1度しており、2回目の更新が来年に迫っている。AさんはBさんとは良好な関係を保っており、今回の更新に当たってBさんから「更新せずに、借地権と底地を借地権割合で交換しないか、それとも現在デベロッパーのS社から提案が来ている等価交換事業(プランT)に一緒に参加しないか」との提案を受けた。プランTなら住居部分に全部で250u(居住住戸90u1戸、賃貸住戸40u4戸)の床がもらえるという。現在の建物はどちらも老朽化が著しく、アパートは全8室のうち4室が空室となっている。Aさんはもし借地権と底地の交換で土地を取得できるならば、その土地の半分を処分しその資金で残った土地に今の住宅とアパートの面積を合わせた規模の建物1棟(鉄骨造4階建て、自宅兼賃貸住宅340u)を建てたらどうかと考えている(プランU)。そこで、建て替えた場合の建築費用の見積りを知り合いの建築会社に出させたところ、6,000万円ほどであった。Aさんはいずれは妻と二人で、妻の知人が経営している自然環境の豊かなI半島にある高齢者住宅(入所一時金2,000万円/人 食事込管理費25万円/月/人)へ入居したいという希望をもっている。ただ、今はまだ仕事もしたいので、すぐに高齢者住宅に入居するつもりはない。
そこで今後の対応等について、ファイナンシャル・プランナーに相談することにした。

〈Aさんの相談事項〉
1.借地権と底地を交換する場合のメリット・デメリットは何か。そのときの課税関係はどうなるか。
2.等価交換事業(プランT)に参加した場合のメリット・デメリットは何か。そのときの課税関係はどうなるか。
3.借地権と底地を交換して所有権となった土地の半分を処分し、残った土地に今の建物2棟と同規模の建物1棟(鉄骨造4階建て、自宅兼賃貸住宅340u)を建てる案(プランU)についてどう考えるか。そのときの課税関係はどうなるか。
4.将来、高齢者住宅に入居することを考えた場合、プランT,プランUのどちらにしたらよいと考えるか。他にも何かよいプランはあるか。


 

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part2 ポイント解説

● 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。
1. 借地人が借地権と底地を交換するメリット・デメリットと課税関係
 メリット
借地権を解消することで、土地の所有権を取得できるため、土地利用に関して元の地主の承諾を得ることなく、自由に土地利用が可能となる。
また、地代・更新料も不要となる。

 デメリット
現状のままの土地利用を継続する場合には、借地権と底地の交換により、下記のような借地権のメリットが失われる
(借地権のメリット)
一般に地代は土地の価格に比べて非常に低額なため、低いコストで土地利用が可能。
また、旧借地借家法が適用されている場合、地主の了解が得られなくとも、現状のままの借地契約は法定更新が可能なため、地主側に正当事由(正当と認められる特別な理由)がない限り、地代を支払えば、借地人は半永久的に土地を使うことが可能

 課税関係
底地と借地権を交換した場合、固定資産の交換の特例を適用することができれば、譲渡がなかったものとすることができる(交換比率は差額が高い方の20%以内)。
固定資産の交換の特例では、交換する資産は土地と土地、建物と建物のように互いに同じ種類の資産であることが必要となるが、借地権は土地の種類に含まれる 。)

2. 等価交換事業(プランT)のメリット・デメリットと課税関係
 メリット
建築費用の自己負担がないため、将来の高齢者住宅入居用の資金を温存し、また賃貸住戸40u×4戸により毎月の高齢者住宅の管理費も補うことが可能

 デメリット
建物取得分に応じた「共有持分」は得られるものの、土地の所有権や借地権は事実上失う

 課税関係
土地と交換して得た建物のため、税務上は「土地」として扱われるが、新たに取得した建物の取得価額は元の土地の取得価額を引き継ぐため、一般的に減価償却費の金額は少額となる。


3. 自己建設事業(プランU)の検討と課税関係
 メリット
借地権から自分自身の土地の所有権となり、残った土地に建築する建物も自分自身の所有権となるため、今後の土地活用・処分等は自由に行うことが可能
賃貸住戸は現在と同規模のため、建替えにより満室となれば、不動産収入の倍増が期待できるうえ、不動産収入で毎月の高齢者住宅の管理費を賄うことが可能。

 デメリット
建築費負担が大きいため、借地権と交換した底地の売却価格によっては、保有している金融資産の一部を建築費に充当する必要が出てくる。
また、固定資産の交換の特例では、交換により取得した資産は、交換により譲渡した資産の譲渡直前と同じ用途で使用することが必要なため、取得した土地の半分をすぐに処分すると、特例適用できない可能性もある。

 課税関係
当該地域が既成市街地等およびそれに準じる地域であれば、地上3階建て以上で耐火構造の賃貸マンションを建設する場合、立体買い換えの特例の適用を受けることにより、不動産の譲渡益に関する課税を繰り延べることができる。

4. 将来の高齢者住宅入居を前提としたプランニング
 プランT・Uの選択
入居予定の高齢者住宅は、毎月の管理費が2人で50万円となるため、公的年金だけでは不足する。いずれのプランでも不動産収入の増加は期待できるが、プランUであれば、賃貸住戸の規模は現在のまま、建替えによる満室が期待できるため、不動産収入だけで毎月の管理費を賄うことも可能と思われる。
従って、建築費の負担と、借地権と交換した底地の売却価格のバランスを確認する必要はあるものの、プランUを提案する。

 他に想定されるプラン
Aさん自身は親の代から賃貸経営を行ってきており、知識・経験も豊富と考えられるが、Aさんに万一の事態が起こった場合、相続する妻や娘2人の負担を考えると、収益性は劣るものの、事業受託方式や土地信託方式のように、建設・管理・運営を他者に任せる方式も検討に値する。

(1) 事業受託方式
土地の権利者が自分で資金調達し、マンション等の建設・管理・運営といった事業のいっさいをデベロッパーに任せる方法。
権利をそのまま維持でき、業務負担もないが、資金負担大。

(2) 土地信託方式
土地の権利者が信託銀行に土地を信託し、信託銀行が資金調達から建設・管理・運営まで行なう方法。
資金負担無しで信託配当金を受け取れるが、土地の名義は契約期間(信託期間)中は信託銀行に移る(信託した土地による収益は、土地の所有権者に対して課税(実質所得者課税の原則))。

 FPと関連法規
不動産取引に係る具体的な税金の質問等に関しては、税理士を紹介すべきです。
また、等価交換等における権利割合については不動産鑑定士、土地活用等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、不動産業者やデベロッパーを紹介すべきです。
本問では、顧客は主に土地の処分・有効活用方法について不安を感じており、地主や建築会社との交渉次第で、各専門家の協力を仰ぐべきと考えます。

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