TOP > 実技過去問ポイント解説 > 2014年6月実技 > 2014年6月7日実技part1

2014年6月7日実技part1

2014年6月7日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(75歳)は、衣料品小売業を営む非上場企業のX社の社長である。X社は昭和40年代に設立されており、Aさんは二代目に当たる。
X社は新しいファッションを取り入れることに定評があり、地域では有名なチェーン店となっている。
X社の売上高は18億円程度であり、毎期5,000万円程度の経常利益を計上しているが、衣料品の陳腐化による不良在庫が9,000万円(時価1,000万円)ほどあるため、Aさんはこれを処分して経営基盤を安定させたいと考えている。
また、X社には、過去に経営が困難であった際のAさんからの借入金が3,000万円残っており、Aさんとしては債権放棄をするかどうか検討している。
Aさんには妻(75歳)と2人の子がいる。長男(48歳)は後継者候補として17年前にX社に入社し、現在は副社長に就任している。長女(42歳)は他家に嫁いでおり、暮らし向きはほどほどであるが、子の教育費がかさむとこぼしている。長男には娘が1人、長女には息子が2人と娘が1人いる。
X社株式は、現在Aさんが75%所有しており、Aさんはこれを長男に移転させることを考えているが、どのようにすべきかわからず、株式移転の実行をためらっている。
なお、X社株式の残りの25%はAさんの弟が所有している。Aさんの弟はX社の経営には関心がないらしく、X社株式から配当金を受け取っているだけである。
また、Aさんは、長女から、子(Aさんの孫)への教育資金の援助を依頼されており、その方法についても知りたいと思っている。
Aさんには自宅とX社株式のほかに定期預金が1億8,000万円あるが、Aさんは、友人から勧められた投資信託に興味を持ち始めている。
現時点でのAさんの相続財産は約3億8,000万円(相続税評価額)であり、うち、自宅の評価額は約3,000万円(小規模宅地等の評価減適用後)、相続税の見積額は一次相続と二次相続の合計で約6,200万円(配偶者の税額軽減適用後)である。Aさんは、遺産分割や相続税対策についても相談したいと思っている。

〈Aさんの家族構成〉
Aさん(75歳) :X社社長
妻   (75歳) :専業主婦
長男 (48歳) :X社副社長
長女 (42歳) :専業主婦

〈X社の概要〉
資本金 :1,000万円
発行済株式総数 :2万株
株主構成 :Aさん75%、Aさんの弟25%
一株当たり相続税評価額:8,000円(会社規模は中会社に該当する)

ページトップへ戻る

part1 ポイント解説

 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。

1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策

(1)生命保険・金庫株の活用
(2)役員退職金の支給
(3)自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
(4)非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用
(5)X社への貸付金の債権放棄・株式転換

2.遺産分割対策・事業承継対策

(1)遺言の作成
(2)遺留分に関する民法の特例の活用
(3)相続時精算課税制度による生前贈与の活用
(4)孫への教育資金贈与の非課税措置の検討

3.X社の不良在庫処分の影響

不良在庫を処分することで、自社株式の評価要素の1つである、純資産の引下げにつながるため、自社株式の評価額の引下げ効果がある。

4.X社への貸付金の債権放棄の検討

X社への貸付金は、同族会社への貸付金であっても相続税の課税対象となるため、債権放棄するか、債権を株式に転換(増資)することで、相続税の課税対象から外すことが出来る。なお、債権放棄の場合、貸付金は消滅し、X社には債務免除益に応じた法人税が課され、債権を株式に転換すると、株式が相続税の課税対象となるため、総合的な判断が必要となる。
また、債権放棄によりX社株式の評価額が上昇すると、Aさんの弟も株価上昇の恩恵を受けるため、Aさんから弟への贈与(跳ね返り贈与)とみなされ、贈与税の課税対象となることがある。

5.X社株式の長男への移転方法

Aさん所有の株式については、非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用により、税負担を抑えながら移転することが可能。
ただし、適用対象は発行済議決権株式の3分の2までのため、Aさん所有分(全体の75%)のうち、適用外の株式は、長男への譲渡や金庫株とする必要がある。
また、弟所有分の25%についても、将来弟の相続発生により株式が散逸する可能性があるため、経常利益が順調なX社が金庫株として買い取ることが望ましい。

6. 教育資金贈与の非課税措置の説明

教育資金の非課税特例では、直系尊属から教育資金を一括贈与された場合、受贈者ごとに1,500万円まで非課税となる(学校等に直接支払われる入学金や授業料等ついては1,500万円まで、学校等以外の者に支払われる金銭については500万円まで)。
教育資金として、信託銀行等の取扱い金融機関に預け入れ、教育資金管理契約を締結することが必要なほか、受贈者が30歳になると教育資金管理契約が終了し、終了時に非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額がある場合(非課税口座にお金が残っている場合)には、その残額はその年の贈与税の課税価格に算入(贈与税が課税)される。
資金の使用使途が限定されており、自由度は低くなるが、贈与後3年以内に贈与者が死亡した場合でも、相続税の課税財産に加算されないため、確実に教育資金として贈与することが可能。

7. 投資信託に関する説明

投資信託は、多数の投資家から資金を集め、資産運用の専門家が債券や株式などで運用し、得られた収益を投資家に分配する金融商品。
元本保証ではなく、購入時や解約時の手数料や信託報酬といったコストがかかる場合もある。
また、日経225やTOPIXといった一定のベンチマークに連動した成績を目指すパッシブ運用型と、ベンチマークを上回る成績を目指すアクティブ運用型があり、一般的にアクティブ運用型の方が信託報酬等のコストが高いことに注意が必要。

 FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、投資信託に関しても金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

2014年6月実技 目次                6月7日part2
ページトップへ戻る

FP対策講座

<FP対策通信講座>

●LECのFP講座(キーワード検索欄で「1級」と検索) ⇒ FP(ファイナンシャル・プランナー)サイトはこちら

●1級FP技能士(学科試験対策)のWEB講座 ⇒ 1級FP技能士資格対策講座(資格対策ドットコム)

●通勤中に音声学習するなら ⇒ FP 通勤講座

●社労士・宅建・中小企業診断士等も受けるなら ⇒ 月額定額サービス【ウケホーダイ】

ページトップへ戻る

Sponsored Link

実施サービス

Sponsored Link

メインメニュー

Sponsored Link

サイト内検索

Sponsored Link

Copyright(C) 1級FP過去問解説 All Rights Reserved.