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2015年6月6日実技part1

2015年6月6日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(70歳)は、食品加工業を営む非上場企業X社の二代目社長である。X社は、年商13億円、経常利益5,000万円を計上し、業績は安定している。Aさんは、これまで約30年間、弟Pさん(副社長、68歳)とともに新商品の開発等をしながら業績を向上させてきた(創業者である父の相続時にAさん70%、弟Pさん30%の割合でX社株式を継承した)。
Aさんは、そろそろ社長職を引退し、専務として社業についている長男Cさん(42歳)に事業を承継しようと考えているが、この際、弟Pさんにも引退(Aさんと同程度の退職金を支払うことを考えている)を勧奨しようと思っている。
弟Pさんの家族は、X社に入社していないこともあり、弟Pさんの所有するX社株式が相続等により分散されることが懸念されるため、今のうちに対策を検討したいと考えている。
長男Cさんは、現在、X社株式を保有していないので、Aさんは保有しているX社株式(70%)を、どのタイミングでどのように移転させればよいか迷っている。
また、長女Dさん(39歳)は、上場会社に勤務する会社員と結婚し、3人の子とともに安定した生活を送っているので安心しているが、将来の相続についてはおおむね平等になるようにしてやりたいと考えている。なお、Aさんは現預金2億円を保有しており、最近、銀行等から投資信託での運用を勧められているが、そのリスク等を十分理解したうえで運用を考えてもよいと思っている。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
現預金 :2億円
X社株式:3億5,000万円
退職金 :1億円(支給予定額)
自宅土地(400u):1億2,000万円
自宅建物      :  2,000万円
賃貸不動産(土地・建物):2億円(年間家賃1,000万円)
合計  :9億9,000万円
※Aさんの相続に係る相続税額は、約3億5,000万円(配偶者の税額軽減適用前)と見積もられている。

【Aさんの家族構成】
妻Bさん(同居)、長男Cさん(妻、子2人)、長女Dさん(夫、子3人)
(C・DはAさんと別生計)

【X社の概要】
資本金:5,000万円 会社規模:中会社(Lの割合:0.75)
株主構成:Aさん70%、弟Pさん30%
株式の相続税評価額:類似業種比準価額 4,000円/株、純資産価額8,000円/株
発行済株式総数:10万株
従業員数:55人

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part1 ポイント解説

 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。

1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策

(1)生命保険・金庫株の活用
(2)役員退職金の支給
(3)自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
(4)非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用

2.遺産分割対策・事業承継対策

(1)遺言の作成
(2)遺留分に関する民法の特例の活用
(3)相続時精算課税制度による生前贈与の活用
(4)孫への教育資金贈与の非課税措置の検討

3.X社株式の長男への移転方法

Aさん所有の株式については、非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用により、税負担を抑えながら移転することが可能。
ただし、後継者は代表権を有していることが必要であるため、長男に代表権がない場合には、予め代表権を持つ役員としておくことが必要。また、適用対象は発行済議決権株式の3分の2までのため、Aさん所有分(全体の70%)のうち、適用外の株式は、長男への譲渡や金庫株とする必要がある。
また、弟所有分の30%についても、将来弟の相続発生により株式が散逸する可能性があるため、経常利益が順調なX社が金庫株として買い取ることが望ましい。

4.長女への平等な相続方法

(1)二次相続も考慮した遺言の活用
X社株式は、弟Pさんへの退職金支払いによって多少評価が下がると思われるが、それでも高額なため、長女には二次相続も考慮して自宅の土地建物と賃貸不動産を相続させることで、おおむね平等な相続を実現できる(現預金・退職金については、二次相続まで見越した納税資金として考えておく)。
具体的には、まずは妻が自宅と賃貸不動産を相続することで、老後の安定的な生活と家賃収入を得ることができる。その後、ニ次相続で長女に相続させるよう予め妻には長女に自宅と賃貸不動産を相続させる旨の公正証書遺言を作成させる。

(2)生命保険の活用
生命保険の契約者と被保険者が同じで、保険金受取人が異なり、受取人が相続人となる場合、支払われる死亡保険金は、みなし相続財産として、相続税の課税対象となるが、「500万円×法定相続人の数」までは非課税
本問の場合、Aさんが生命保険未加入のため、金融資産の一部を生命保険とすることは、納税資金対策や相続税の軽減対策のほか、遺産分割対策としても有効(死亡保険金は相続財産ではなく、保険金受取人の固有の財産とされるため、相続を放棄しても受け取り可能であり、民法上の相続財産に含まれず、遺産分割協議の対象とならない)。
不動産に関しては二次相続発生時まで長女に渡らないとする場合、まずは生命保険により長女は一定の金融資産を手にすることができるため、不公平感の軽減が期待できる。

5.投資信託に関する説明

投資信託は、多数の投資家から資金を集め、資産運用の専門家が債券や株式などで運用し、得られた収益を投資家に分配する金融商品。
元本保証ではなく、購入時や解約時の手数料や信託報酬といったコストがかかる場合もある。
また、日経225やTOPIXといった一定のベンチマークに連動した成績を目指すパッシブ運用型と、ベンチマークを上回る成績を目指すアクティブ運用型があり、一般的にアクティブ運用型の方が信託報酬等のコストが高いことに注意が必要。 基本的に元本保証の商品ではなく、将来の相続税負担に向けた資金運用先としてはややリスクのある投資となるため、まずは事業・資産承継税制の活用を検討した上で、投資判断することを提案する。

 FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、投資信託に関しても金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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