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2015年6月6日実技part2

2015年6月6日実技part2

part2 問題文

●設 例●
資産家のAさん(55歳)は、妻Bさん(52歳・専業主婦)、長男Cさん(27歳・不動産会社勤務)、長女Dさん(24歳・Aさんの手伝い)の4人で戸建て住宅に暮らしている。Aさんは、複数の賃貸不動産を所有しているが、立地条件の違いもあり、それぞれ賃料収入にばらつきがある。年間の賃貸収入は3,000万円ほどであり、預貯金等の金融資産を約3億円保有している。そのほか、現在更地となっている甲土地の有効利用を検討している。
Aさんは地元の不動産管理会社に業務の一部を委託しているものの、長女Dさんとの2人だけの賃貸マンション経営では人手が足りず、将来事業が行き詰まる可能性があることを心配している。また、Aさんは、新聞・雑誌等で相続税の増税に関する記事を目にするたびに、漠然とした不安を抱えていたが、知人から「不動産管理会社を設立すれば、所得税や相続税の軽減につながる。不動産管理会社を設立し、現在賃貸中のマンションや甲土地をうまく活用するとよいのでは」と聞き、具体的な検討を始めた。
Aさんは、賃貸マンションの運営にあたって不動産管理会社X社(同族会社)を設立して、メリット・デメリットを十分に理解したうえで実行に移したいと考えている。その際は、Aさんの手伝いをしている長女Dさんのみならず、妻Bさんや地元の不動産会社に勤務している長男CさんにもX社に入って、不動産管理等を手伝ってもらいたいと考えており、妻Bさん、長男Cさん、長女Dさんもこれに賛同している。
甲土地においてのマンション建築資金は、Aさんの預貯金をX社に貸し付けるか、銀行融資(内諾を得ている)を考えている。なお、普通借地権を設定する際、甲土地は権利金の授受の慣行のある地域にあり、最寄駅からは徒歩5分の好立地で、マンションの賃貸需要は旺盛である。Aさんは、具体的な検討に入る前に、ファイナンシャル・プランナーに相談することにした。

(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。
2.AさんがX社を設立して賃貸不動産を経営した場合、個人で経営した場合と比較してどのようなメリットがありますか。他方、デメリットは何ですか。
3.不動産管理会社の活用には、通常、どのような形態が考えられるか、メリット・デメリットを整理して説明してもらいたい。また、これらの形態を踏まえ、X社の設立時期および活用方法(業務内容・出資・役員構成)をアドバイスしてほしい。
4.X社が土地を借り受けた場合、Aさんは権利金の支払をX社に要求するつもりはないが、問題はないか。問題があるとすれば、その対応方法について説明してほしい。
5.Aさんの事案に関与する不動産関連の専門職業家にはどのような方々がいますか。

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part2 ポイント解説

 顧客の抱える問題と解決策

1.アドバイスに当たってあらかじめ必要な確認(情報収集)

顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、甲土地の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地の物理的状況を、実際に確認することが必要。
また、現状賃貸事業は好調のようだが、法人化・相続等を考慮して、他の複数の賃貸不動産についても、立地条件・入居状況等を確認し、今後の賃貸収入の推移を検討することが必要である。

2. 不動産管理会社設立のメリット・デメリット

◆ メリット
 ・ 社会的信用の向上(法人会計による適正な財務管理)
 ・ 法人税の比例税率による所得税負担の軽減
 ・ 親族を役員にすることによる所得分散効果
 ・ 役員退職時の役員退職金の損金算入 等

◆ デメリット
 ・ 法人会計による決算業務等の事務負担の増加 等
⇒不動産管理会社設立による所得税負担の軽減は、個人所得が900万円程度以上ないと十分なメリットを享受できないが、Aさんの賃貸収入は多額であり、税負担のメリットを享受できると思われる。

3. 不動産管理会社の活用形態・設立時期・活用方法等

管理委託方式 :管理会社に不動産の管理を委託する方法。
導入が比較的容易だが、管理料は賃貸収入の約5〜10%が上限となり所得移転効果が低い。
契約手続きが容易であるため、空き室が多い物件や店舗物件に適している。

サブリース方式:管理会社に不動産を一括して貸し付ける方法。
入居者との賃貸借契約の相手先が管理会社に変更となるため、契約変更の手続きが必要となるが、管理委託方式よりは所得移転効果が高い(賃貸収入の約15〜20%)。
銀行からのローン返済の原資を得つつ、所得移転が可能なため、ローンがある物件に適している。

不動産保有方式:土地は個人所有のまま、管理会社に建物を売却し、管理会社が個人に地代を支払う方法。
建物の所有権の移転手続きや不動産取得税等の移転コストがかかるが、全ての家賃収入が管理会社に入るため、最も所得移転効果が高い。
個人が得る賃貸収入は減るため、ローン返済の原資が不要な、ローン完済済みの物件に適している。

本問の場合、賃貸不動産は複数あり、その賃貸収入も多額であることから、早い段階での不動産保有方式による不動産管理会社の設立が望ましい。 また、法人設立による所得移転・資産分散効果を最大限に活かすため、出資者・役員は推定被相続人となる親ではなく子を中心とすることが望ましい。

4. 権利金の支払有無による税法上の問題

法人が役員保有の土地を建物の所有を目的として賃借する場合、法人から役員へ権利金や相当の地代の支払がないときでも(通常の地代のみの支払いを含む)、「土地の無償返還に関する届出書」を提出すれば、法人側では借地権の認定課税はされない
また、地主が個人の場合、届出書の提出の有無に関わらず、認定課税はされない(役員側では課税なし)。個人の場合、法人と違って必ずしも経済的利害だけで取引が行われるとは限らないため、無償による資産の譲渡や役務の提供は収入があるとみなさないため
なお、「土地の無償返還に関する届出書」の提出がないときは、法人側では原則として借地権の認定課税(権利金の慣習がある地域の場合は権利金相当額)されます。

5.関与すべき専門職業家

法人と役員間の取引における権利金の支払有無による税法上の問題や不動産管理会社設立後の税務申告等、具体的な税金の質問等に関しては、税理士が適当。
また、不動産管理会社の設立登記については司法書士、不動産の賃貸借や土地売却に関する、媒介や契約代理等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、不動産業者が適当。

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