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2015年6月7日実技part1

2015年6月7日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(73歳)は、首都圏近郊のK市内の駅から徒歩10分の住宅街に暮らしている。夫は7年前に亡くなり、Aさんは現在、夫の残したアパートなどからの収入を糧に生活している。
Aさんには長女Bさん(50歳)と二女Cさん(47歳)の2人の娘がいるが、長女Bさんは隣県で百貨店の店長をしており、夫所有のマンションに夫と子2人(長男22歳、長女19歳)とともに暮らしている。他方、二女Cさんは独身でAさんと同居し、都心の大手メーカーに勤務している。現在、長女Bさん、二女Cさんともに生活は安定し、親子関係はもちろんのこと、姉妹の仲も良好である。
Aさんは、親として娘2人の将来のことを何かと心配しており、特に同居している二女Cさんの将来については気がかりが多い。Aさん自身が亡くなった後、生活が困らないようにしてあげたいと思っているが、具体的にどうすればよいのかわからないでいる。
Aさんの夫は生前、社長として精密機械製造業のX社を営んでいたが、娘2人が後を継がなかったため、現在は夫の甥(53歳)が社長を務め事業を継続している。X社と亡くなった夫は、生前、工場建設にあたり、夫所有の土地に対して相当の地代による借地契約を結んでおり、現在もAさんとX社は相当の地代を支払う契約(改訂方式)を締結しているが、Aさん自身は、その内容をよく知らないでいる。しかし、X社の経営は、最近の円安の影響を受け厳しい状況になりつつあることを甥から聞いており、Aさんは夫の後を継いでくれた甥のために何とかしてあげたいと思っているが、同時に、この工場用地が将来、娘2人の重荷にならないかと心配している。
夫から相続した上場株式は、当初、興味がなく、配当金を受領するだけだったが、最近、友人から上場不動産投資信託(J-REIT)の話を聞き、これについて興味を持つようになり、その内容について教えてほしいと思っている。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
1.自宅土地(330u):9,900万円
2.自宅建物(築40年):100万円
3.賃貸アパート
  (1)敷地(300u): 7,380万円
  (2)建物(12部屋): 120万円(年間賃料720万円)
4.駐車場用地(150u・10台):4,500万円(年間賃料240万円)
5.X社工場用地(600u):1億2,800万円(時価2億円 借地権割合60%)
  (X社より年間地代収入1,200万円)
6.上場株式:3,000万円
7.X社株式:2,400万円
8.現預金 :1億円
合計:5億200万円
※現在の相続税試算額は、約1億5,300万円と見積もられている。

【X社の概要】
資本金:1,000万円
株主構成:甥(代表取締役)80%、甥の妻(取締役)10%、Aさん10%
発行済株式総数:2万株 1株当たりの相続税評価額:12,000円
従業員数:25人(平均年齢39歳) 年商:18億円 利益:1,000万円
余剰資金:2億5,000万円

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part1 ポイント解説

 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。

1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策

(1)生命保険・金庫株の活用
(2)小規模宅地の特例の活用
(3)X社工場用地のX社への売却

2.遺産分割対策

(1)遺言の作成
(2)相続時精算課税制度による生前贈与の活用
(3)孫への教育資金贈与、結婚・子育て資金贈与の非課税措置の検討

3.小規模宅地の特例適用の詳細

小規模宅地の特例では、特定居住用は330uを上限に80%減額、貸付事業用は200uを上限に50%減額となる。
また、特定事業用は400uを上限に80%減額となる。
なお、小規模宅地の特例を複数の宅地に適用する場合、一定の限度面積の制限があり、どの宅地に適用するかは納税者が選択できる。
本問の場合、自宅の評価額が高額なため、自宅に特例適用することが望ましいと思われるが、特定居住用宅地は、配偶者以外が取得する場合には、取得する別居親族は、相続開始前3年以内に自宅を所有していないことが必要なため、同居している二女が相続することが望ましい(自宅330uに限度面積まで特例適用すると、賃貸アパートや駐車場用地に特例適用はできない)。
また、X社工場用地はAさんの事業用地ではなく、AさんはX社の役員でもないため、特定事業用・特定同族会社事業用宅地のいずれにも該当しない。

4.娘2人の将来も考慮した相続

(1)二女の将来を考慮した相続
二女に対しては、前述の小規模宅地の特例適用による自宅と、賃貸アパートを相続させることで、将来一定の水準の生活を維持できるものと思われる。
また、長女に対しても、駐車場用地の他、後述のX社工場用地や株式の整理により、分割しやすい金融資産や区分所有賃貸不動産等とした上で相続させることを提案する。
相続人間の相続財産の差額については、代償分割(二女が、相続する自宅を担保に融資を受ける等)も提案する。

(2)X社の工場用地・株式の取り扱い
娘2人がX社の経営に関わっておらず、X社の経営が厳しい状況になりつつあることを考慮すると、将来的に地代や借地権の取り扱いについてトラブルになる可能性があるため、Aさん存命中に借地関係・X社株式を整理しておくことが望ましい。

底地を売却した後、新たに事業用資産に買い換える場合、事業用資産の買換え特例を適用することができれば、譲渡収入の70〜80%について課税を繰り延べできる。
事業用資産の買換え特例は所有期間10年超の土地建物等の譲渡に適用されるが、相続した資産の場合、被相続人の取得日からカウントするため、本問のように10年以内に相続した場合でも適用可能。)
よって、X社が潤沢な余剰資金でAさんの底地を買い取り、Aさんは売却代金で新たな賃貸不動産等を購入(遺産分割しやすいように複数の区分所有不動産とすることも検討の余地有り)することで、税負担を抑えながら借地関係を整理することが可能。
また、X社としても以降地代の支払いがなくなるため、メリットがある。

同様に、X社株式についても将来の相続発生による散逸防止のため、X社が余剰資金により金庫株として買い取ることが望ましい。

5.上場不動産投資信託(J-REIT)に関する説明

◆メリット
実物不動産とは異なり、少額から購入することもできるため、一度に購入せずに、ドルコスト平均法で少しずつ購入し価格変動の影響を抑えることも可能。
また、少しずつ売却することもできるため、資金流動性が高い

◆デメリット
株式市場に上場されているため、投資法人の投資先の状況とは別に、株式市場の騰落状況の影響を受けるリスクがある。
また、通常の株式投資信託と異なり、解約請求や買取請求ができない(クローズド・エンド型)ため、換金の際は市場での売却が必要となる。このため、場合によっては売却したいときに買い手がなく、売却できない事態も有り得る。

 FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、J-REITに関しても金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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