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2015年6月7日実技part2

2015年6月7日実技part2

part2 問題文

●設 例●
会社員のAさん(64歳)は、首都圏近郊のM市内の自宅で、妻Bさん(59歳)および長男家族(夫婦・子2人)とともに暮らしている。
このたび、前面道路拡幅に伴ってAさん宅が収用されることになり、自宅の土地建物を譲渡し、対価補償金として6,000万円を取得することになった。自宅は30年前に、Aさんの父親から相続した宅地および築50年の建物(取得費は不明)である。収用に伴う移転先については、大手ハウスメーカーX社から同社所有の土地付二世帯建物プラン(総額6,000万円)の提案があり、長男夫婦とも相談し、代替資産として購入する意向である。
Aさんの給与収入は1,000万円で、来年65歳の定年時には退職金として3,000万円を受け取る予定である。なお、金融資産は預貯金4,000万円を保有している。最近、Aさんは、知人から「定年後をどう過ごすか、老後の資産運用対策についての検討を今からしておいたほうがよい」と勧められ、この機会に二世帯住宅の購入の件も含め、次の3点について検討することにした。

1.対価補償金でX社の二世帯住宅を代替資産として購入した場合、収用に伴う譲渡課税は、どうなるか。
2.妻Bさんに対し、二世帯住宅の持分を一部贈与し、労に報いたいと考えている。
3.定年以降のAさん夫婦の生計費は、Aさんが受け取る公的年金では月額15万円程度不足する見込みであるとAさんは想定している。このため、Aさんは現在保有する預貯金4,000万円を老後の生活資金に充当し、退職金3,000万円は余裕資金として、金融商品で運用するつもりである。

Aさんは、上記の資金運用に関しては、老後の生活資金は安全性と流動性を重視するが、余裕資金は、低金利が続いているので安全性と流動性とともに多少のリスクを覚悟して、収益性も追求したいと考えている。なお、不動産投資については、投資金額が大きいので投資対象から除外し、これに代わる金融商品はないか検討している。そこで、Aさんは、これらの検討事項につきファイナンシャル・プランナーに相談することにした。

(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して最適なアドバイスをするために、示された情報のほかに、Aさんから聞くべき情報は何ですか。取得する不動産についてFPとして調査しておくべきことは何ですか。
2.収用に伴う譲渡課税の特例(課税の繰延べと特別控除)を選択する際のポイントを説明してほしい。
3.妻Bさんへの贈与に関し、贈与税が非課税となる方法を教えてほしい。
4.保有資金4,000万円と退職金3,000万円について、Aさんが金融商品で運用する場合、Aさんのニーズに合った金融商品を3つ以上選び、選択した理由を説明してほしい。
5.@本設例に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。
  Aその際どのようなことに留意すべきですか。

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part2 ポイント解説

 顧客の抱える問題と解決策

1.アドバイスに当たってあらかじめ必要な確認(情報収集)

顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、Aさん宅の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地の物理的状況を、実際に確認することが必要。
同様に、取得予定の代替不動産についても登記簿と現地の確認を行うほか、用途地域・地方自治体の都市計画等を確認し、今後の開発予定・環境変化を把握することが必要である。

2.収用に伴う譲渡課税の特例(課税の繰延べと特別控除)のポイント

「収用に伴う譲渡課税の特例」は、公共事業などの収用により資産を譲渡した場合、その補償金で代替資産を購入したときには、譲渡した資産の取得費を代替資産に引き継ぎ、将来に課税を繰り延べる(課税繰延べの特例)ことや、譲渡所得の計算の際、補償金から特別控除5,000万円を差し引く(5,000万円の特別控除)ことができる特例。

<特例適用のポイント>
課税繰延べの特例の適用を受けるためには、原則として収用等のあった日から2年以内に代替資産を取得することが必要(ただし、収用等のあった日より前に先行取得したものであっても、一定の要件に該当すれば代替資産として認められる。)。
5,000万円特別控除の特例の適用を受けるためには、公共事業施行者から買取り等の申出を受けた者(その相続人を含む)が、申出があった日から原則6カ月以内に土地建物等を譲渡することが必要。
「課税繰延べの特例」と「5,000万円特別控除の特例」は選択適用(併用不可)。

3.妻Bへの贈与が非課税となる贈与方法

贈与税の配偶者控除により、夫婦間で居住用不動産や居住用不動産の取得資金を贈与した場合、最高2,000万円を配偶者控除額として控除可能
また、贈与税の配偶者控除は、居住用不動産の一部の持分のみの贈与であっても、適用可能
さらに、贈与税の配偶者控除は、贈与税の基礎控除110万円と併用可能なため、最大で2,110万円までの持分贈与を非課税とすることができる。

4.生活資金と余裕資金を運用する金融商品

<生活資金の運用先>
生活資金4,000万円は、安全性と流動性を重視するため、個人向け国債による運用を提案する。個人向け国債は発行から1年経過後には中途換金可能(国が額面金額での買い取りを保証している)であるため、金利が上昇しても、元本割れしない。

<余裕資金の運用先>
余裕資金3,000万円は、ある程度のリスクを覚悟しながら収益性を追求するため、株式投資信託とJ-REITによる運用を提案する。
株式投資信託については、日経平均やTOPIX等の指数連動型のインデックスファンドとし、市場平均程度のリスクを取りながら、平均的な収益を得られるようにする。
また、J-REITに投資することで、投資金額を抑えながら、株式よりは安定感のある不動産投資が可能となる。
投信もJ-REITも、まずは少額から投資を開始し、市場変化に慣れてから、徐々にETFに移行することで、さらに信託報酬等のコスト低減につなげることを提案する。

5.関与すべき専門職業家

@関与する専門職業家
収用に伴う譲渡課税の特例や贈与税の配偶者控除の適用による納税額の変化等、具体的な税金の質問等に関しては、税理士が適当。
また、代替不動産の所有権の移転登記については司法書士、金融商品の選定に関し、投資顧問契約に基づく、特定の有価証券に係る動向や投資判断についての助言に該当するものについては、投資助言・代理業の登録をしている金融商品取引業者が適当。

A留意点
本問では、顧客は主に代替不動産の取得に関する税負担と老後の資産運用対策に不安を感じており、具体的なプランの実施について検討する際は、業務独占資格である他士業の業務を行わないよう、各専門家の協力が必要。ただし、FPの職業倫理として守秘義務があることから、各専門家への協力依頼に際して顧客の個人情報を提供する必要がある場合には、その都度事前に顧客の承諾を得ることが必要。
また、対象となる業務独占資格も保有している場合でも、金融商品取引法等における重要事項の説明義務等、対象となる法令順守に努めることが必要。

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