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2015年6月13日実技part1

2015年6月13日実技part1

part1 問題文

●設 例●
個人で不動産賃貸業を営んでいるAさん(75歳)は、妻Bさん(70歳)との2人暮らしである。Aさんの所有財産の概要ならびに親族関係図は以下のとおりであり、年間の家賃収入は賃貸ビルより30百万円、賃貸アパートからは5百万円である。
妻Bさんは、父親の相続により上場株式を中心に多額の金融資産と賃貸マンションを取得し、株式の配当と不動産収入で年間10百万円程度の収入がある。
長女Cさん(47歳)は商社勤務の夫(50歳)と結婚し、長らく海外で生活していたが、数年前に帰国し、現在はAさんの自宅近くの賃貸マンションで子とともに暮らしている。
長女Cさんは、2人の子(Aさんの孫)も成長し時間の余裕ができたことから、Aさんの賃貸ビルの1階を無償で賃借し、輸入雑貨店を営んでいる。最近は経営も順調で利益を年間5百万円程度計上したことから、法人化を考えており、Aさんは相談を受けている。
二女Dさん(44歳)は国家公務員の夫(45歳)と結婚し、日々の生活資金には困ってはいないものの、住宅取得資金についてAさんに援助を求めている。
Aさんは、妻Bさんについては生活資金の心配がなく、近所に住む長女Cさんに将来は自分と妻Bさんの面倒をみてもらいたいと考えているため、妻Bさんには自宅を、長女Cさんには賃貸ビルを、二女Dさんには賃貸アパ−トを相続させ、現預金と国債の金融資産はそれぞれ3分の1ずつ均等に相続させればよいと考えている。
Aさんは、最近、金融資産の運用について、外貨建て資産への分散投資を友人から勧められており、この機会にファイナンシャル・プランナーに相談することにした。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
自宅敷地(300u) : 70百万円
自宅建物      : 20百万円
賃貸ビル敷地(600u):350百万円
賃貸ビル建物    :100百万円
賃貸アパート敷地(300u): 60百万円
賃貸アパート建物  :30百万円
現預金       :240百万円
国債        :30百万円
合計:900百万円
※Aさんの相続に係る相続税額は、約309百万円(配偶者の税額軽減適用前)と見積もられている。

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part1 ポイント解説

 顧客の相談内容・問題点に対する解決策。

1. 納税資金の不足、相続税・所得税の軽減対策

(1)生命保険の活用(法人契約だとより軽減効果有り)
(2)小規模宅地の特例の活用
(3)長女を代表取締役とした法人の設立と法人への不動産の譲渡

2.遺産分割対策

(1)遺言の作成
(2)相続時精算課税制度による生前贈与の活用
(3)孫への教育資金贈与、結婚・子育て資金贈与の非課税措置の検討

3.法人設立による相続税・所得税の軽減対策

Aさんが現在多額の賃貸収入を得ており、また不動産の評価額も多額であるため、所得税・相続税の負担が大きいと考えられる。よって、法人の設立による税負担の軽減対策を提案する。

(1)長女を代表取締役とした法人の設立
法人設立による所得移転・資産分散効果を最大限に活かすため、出資者・役員は推定被相続人となる親ではなく子を中心とすることが望ましい。
建物の所有権の移転手続きや不動産取得税等の移転コストがかかるが、全ての家賃収入が法人に入るため、所得移転効果が高い。また、法人税の比例税率と所得分散による所得税・相続税低減効果有り。

(2)法人への不動産の譲渡
設立した法人に対し、賃貸建物のみを簿価で譲渡することで、譲渡損益を発生させずに不動産を個人から法人に移転させることが可能。
買い取り資金がない法人であっても、利息無しの長期分割払いとすることで対応可能となる。

(3)土地の無償返還に関する届出書の提出
法人側での借地権の認定課税を避けるため、土地の無償返還に関する届出書を提出するか、相当の地代を支払うこととする。

4.Aさんが想定する遺産分割方法への提案

Aさんが現在想定している遺産分割方法では、相続する財産額に相続人間で大きな差が出来てしまうため、将来争いの元となる危険性がある。また、二次相続まで想定すると、妻に相続させる自宅や妻自身の多額の財産の分割方法についても、Aさんの分割方法が影響を及ぼすこと可能性がある。

前述の法人の設立により、二女を法人の役員や従業員とすることで、二女に対しても生前より所得移転を進め、長女がAさんと妻Bさんの今後の面倒を見ることを勘案しても、今後十数年間の全体として不満が残らないように、分割方法を検討することが必要。

5.外貨建て金融商品に関する説明

外貨預金や外貨建債券といった外貨建て金融商品には、為替変動リスクがあるため、基本的に円高外貨安になると、円ベースで評価損が膨らむことになる。ここ数年は、急激な円安が進んできているが、高金利をうたっていても、為替変動による損益が最終的な運用実績を左右しやすい。 Aさんの現在の金融資産は、老後の生活資金かつ相続税の納税資金ともなるものであることから、外貨建て金融商品に投資するとしても、全体の一部に留めておくことを提案する。

 FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、外貨建て金融商品に関しても金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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