問54　2015年10月応用

《設例》の【財務データ】【株価データ】に基づいて、Ｍさんが、Ａさんに対して説明した以下の文章の空欄(1)〜(4)に入る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、計算結果は表示単位の小数点以下第３位を四捨五入すること。また、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

�T 「Ｘ社とＹ社の財務データについて比較検討すると、売上高はＸ社がＹ社の約1.54倍ですが、総資産経常利益率ではＸ社の値が約（　1　）％、Ｙ社の値が約□□□％であり、Ｙ社の資産効率のほうがよいといえます」

�U 「株主還元率としての配当性向の比較では、Ｘ社の約（　2　）％に対してＹ社は約□□□％となります。また、配当利回りは、Ｘ社株式が約□□□％に対してＹ社株式は約（　3　）％となります。いずれもＹ社がＸ社を上回る結果となっています」

�V 「『ＲＯＥ×（１−配当性向）』の算式で算出される（　4　）は、企業の内部留保と利益率をベースに、今後の成長率を予測する際に用いる指標で、純資産と自己資本が同額であるとすると、Ｙ社がＸ社を上回る結果となっています」

複数の財務指標による指標値算出に関する問題です。

�T まず、総資本は資本と負債の合計ですから、総資産と値は同じ（総資本＝総資産）なため、
財務データ上の「資産合計」＝総資本＝総資産　ということになります。

総資産（総資本）経常利益率は、経常利益に対する資本効率を示す指標で、ROA（使用総資本事業利益率）の代用指標としても用いられます。
計算式は、総資産経常利益率＝経常利益／総資産×100です。
�]社の総資産経常利益率＝81,000÷2,730,000×100≒2.97％
Ｙ社の総資産経常利益率＝75,700÷1,176,000×100≒6.44％
となり、問題文の通りY社がX社を上回っています（約2.16倍）。

�U 次に、配当性向＝１株当たり配当額÷１株当たり当期純利益×100（％）ですが、配当金支払額÷当期純利益×100（％）でも表せます。
本問の場合は後者の方が計算しやすいため、
Ｘ社の配当性向＝25円×１億２千万株÷36,000百万円×100（％）
　　　　　　　＝8.333≒8.33％ （小数点以下第3位四捨五入）
Ｙ社の配当性向＝18円×３億５千万株÷48,000百万円×100（％）
　　　　　　　＝13.125≒13.13％ （小数点以下第3位四捨五入）

また、配当利回りは、株価に対する1株当たり年間配当金の割合のことです。
配当利回り＝1株当たり年間配当金／株価×100
Ｘ社の配当利回り＝25円÷1,900円×100（％）
　　　　　　　　＝1.315≒1.32％ （小数点以下第3位四捨五入）
Ｙ社の配当利回り＝18円÷970円×100（％）
　　　　　　　　＝1.855≒1.86％ （小数点以下第3位四捨五入）

以上のように、いずれもＹ社がＸ社を上回っています。

�V　最後に、『ＲＯＥ×（１−配当性向）』で算出できるのは、サスティナブル成長率です。
サスティナブル成長率＝ROE×内部留保＝ROE×(1−配当性向)

ROE(自己資本利益率)＝当期純利益／自己資本×100で、自己資本は純資産から少数株主持分と新株予約権を差し引いたものです。
本問の場合、資料に少数株主持分や新株予約権の記載はないため、純資産＝自己資本で計算します。

Ｘ社：36,000／630,000×100×(1−8.3％）
　　　＝5.542≒5.54％ （小数点以下第3位四捨五入）
Ｙ社：48,000／297,000×(1−13.13％）
　　　＝14.039≒14.04％ （小数点以下第3位四捨五入）
よって、今後の成長率を予測する観点では、Ｙ社がＸ社を上回っています。

以上により正解は、(1)2.97（％）　(2) 8.33（％）　(3) 1.86（％）
(4)サスティナブル成長率

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