問59 2016年1月応用
問59 問題文
法人税に関する以下の文章T〜Vの下線部(1)〜(3)のうち、最も不適切なものをそれぞれ1つ選び、その適切な内容について簡潔に説明しなさい。
T 「平成27年中に法人が有形減価償却資産(鉱業用減価償却資産等を除く)を取得して事業の用に供した場合、原則として、定額法または定率法のいずれかを選択して減価償却するが、『減価償却資産の償却方法の届出書』を所轄税務署長に提出しなかった場合、(1)償却方法は法定償却方法である定率法となる。また、いったん選択した償却方法を変更しようとするときは、原則として、(2)新たな償却方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日までに、『減価償却資産の償却方法の変更承認申請書』を所轄税務署長に提出して承認を受けなければならない。なお、建物(鉱業用のものやリース資産を除く)の償却方法については、定率法は選択できず、定額法となる。
ただし、中小企業者等が取得した減価償却資産については、一定の要件のもと、事業の用に供した事業年度において、その取得価額の全額を損金の額に算入することができる。この『中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例』の対象となる減価償却資産は、(3)取得価額が50万円未満のものとなる」
U 「法人がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出した交際費等のうち、接待飲食費については、当該法人が中小法人であるかどうかにかかわらず、その額の50%相当額を損金の額に算入することができる。
また、事業年度終了の日における資本金の額または出資金の額が1億円以下の中小法人(大法人に完全支配されている法人等を除く)については、その事業年度において支出した交際費等のうち、(1)定額控除限度額である年800万円を限度として損金の額に算入することができる。
X社の場合は、(2)定額控除限度額に接待飲食費の額の50%相当額を加えた金額がその事業年度における交際費等の損金算入限度額となる。
なお、法人が支出した飲食等のために要した一定の費用であって、その(3)飲食等の参加者1人当たり5,000円以下の費用で所定の事項を記載した書類が保存されているものについては、交際費等から除かれる」
V 「所得拡大促進税制(雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)とは、青色申告法人が国内雇用者に対する給与等の支給額を基準事業年度の給与等の支給額より一定割合以上増加させるなどの要件を満たした場合に、(1)当該支給増加額の10%相当額を法人税額から控除することができる制度である。ただし、当該税額控除は、X社の場合、法人税額の20%相当額が限度額となる。
平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度について本制度の適用を受ける場合は、(2)雇用者給与等支給額が基準雇用者給与等支給額と比較して5%以上増加していることが要件となる。
なお、同一事業年度において、本制度と雇用促進税制(雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除)は(3)重複して適用を受けることができない」
問59 解答・解説
減価償却・交際費の損金不算入・所得拡大促進税制に関する問題です。
T
(1)は、適切。法人は有形減価償却資産(建物・鉱業用資産・生物等以外の資産)を取得すると、定額法と定率法のいずれかを償却方法として選択できますが、どちらを選択するかを税務署長に届け出なかった場合は、法定償却方法(定率法)となります(「減価償却資産の償却方法の届出書」の提出)。
(2)は、適切。減価償却資産の償却方法を変更するには、原則として、新しい償却方法を採用する事業年度開始日の前日までに、減価償却資産の償却方法の変更承認申請書を税務署長に提出して承認を得ることが必要です。
(3)は、不適切。使用可能期間が1年未満か、取得価額10万円未満の減価償却資産は、減価償却せずに全額その年度に損金算入または経費計上可能で、青色申告する中小事業者の場合は、少額減価償却資産の特例により、全額その年度に30万円未満まで損金算入または経費計上可能です。
U
(1)は、適切。資本金1億円超の法人は、交際費のうち、飲食用の支出の50%まで損金算入可能で、資本金1億円以下の法人は、交際費のうち800万円まで、または飲食用の支出の50%までは損金算入することができます(有利な方を選択可能)。
(2)は、不適切。X社は資本金3,000万円の中小事業者ですので、交際費のうち定額控除限度額800万円まで、または接待飲食用の支出の50%までの、いずれか有利な方を選択して損金算入可能です。
(3)は、適切。1人当たり5,000円以下の社外の人との飲食費等で、所定の事項を記載した書類も保存されている場合の金額は、税務上損金不算入となる交際費に含まれません。
V
(1)は、適切。所得拡大促進税制とは、個人の所得水準の底上げ促進のため、従業員への給与等の支給額を基準事業年度から2%〜5%以上増加させる等の要件を満たした場合、給与等の支給増加額の10%を法人税額から控除できる制度です(青色申告事業者のみ)。
(2)は、不適切。所得拡大促進税制では、開始事業年度の経過に応じて、少しずつ給与の増加率を上げる必要があり、平成27年4月1日前に開始する事業年度においては、基準事業年度と比較して2%、平成27年4月1日〜平成28年3月31日までは3%、平成28年4月1日〜平成30年3月31日までは5%以上増加させる必要があります。
(3)は、適切。所得拡大促進税制と雇用促進税制は、同一事業年度内では重複適用できず、選択適用されます。
なお、雇用促進税制とは、前年より従業員を一定以上増やすと、法人税の税額控除が受けられる制度です。
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