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2016年2月6日実技part1

2016年2月6日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(68歳)は、首都圏近郊のM市内において個人で不動産賃貸業を営んでいる。Aさんの家族構成は、妻Bさん(65歳・Aさんと同居)、長男Cさん(38歳・会社員・すでに結婚し、都内の賃貸マンションで妻と子2人の4人暮らし)、長女Dさん(35歳・会社員・独身・Aさんと同居)である。
2カ月前に同居していた妻Bさんの母親Eさん(89歳)が亡くなり、四十九日の法要も過ぎたため、Eさんの相続財産を調べたところ、定期預金等が3つの金融機関に合計で3,200万円あることが判明した。Eさんはすでに夫を亡くし、収入は公的年金のみであったが、2カ月ごとに約20万円の年金振込があったようである。Eさんの相続人は妻Bさんのみであり、Aさんは相続に関する諸手続を手伝ってあげようと思っているが、何から手を付けてよいか、どんな書類を揃えればよいのか見当がつかない。
Aさんは、Eさんの相続をきっかけに、自分の相続について考えるようになった。
財産分割については、今は、Aさん自身が亡くなった後、遺された家族全員が生活に困ることのないよう、3分の1ずつ均等に相続させればよいと考えている。
ただし、円滑な相続を行うためには、事前にどのようなことをしたらよいのかわからないでいる。最近、将来の相続税額について税理士に試算をしてもらったところ、概算で約4,800万円(配偶者の税額軽減適用前・小規模宅地等の評価減適用前)であるとのことであった。
また、Aさんは、「ふるさと納税」に興味を持っており、やってみたいと思っているが、どのようにすればよいのかわからない。

【Aさんの家族構成】
〈M市内の自宅〉
Aさん  (68歳):不動産賃貸業
妻Bさん (65歳):専業主婦
長女Dさん(35歳):会社員・独身

〈都内の賃貸マンション〉
長男Cさん(38歳):会社員・既婚・子2人

【Aさんの所有財産等の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
1.自宅土地(250u) : 5,000万円
2.自宅建物(築35年): 500万円
3.アパートA
 (1)敷地(300u): 8,000万円
 (2)建物(築5年): 3,000万円(年間収入1,500万円)
4.アパートB
 (1)敷地(330u): 8,000万円
 (2)建物(築25年): 800万円(年間収入800万円)
5.金融資産
  預貯金 : 5,000万円
6.アパートローン : 3,000万円(残存期間20年)
合計 : 2億7,300万円

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part1 ポイント解説

1. 妻Bさんの相続に関する諸手続き

(1) 遺言の有無の確認。遺言があった場合の諸手続きの詳細は2.の通り。
(2) 年金支給の停止(死亡届)と未支給年金の請求手続き(日本年金機構に住民票コードを登録済みの場合は死亡届は不要)
(3) 準確定申告の申告・納付(本問では被相続人Eさんの収入は公的年金のみで、年収240万円程度と推定されるため、不要(公的年金の年収400万円以下で、公的年金の雑所得以外の所得金額が20万円以下の場合は、確定申告不要))
(4) 相続財産の目録作成
(5) 遺産分割協議(遺言がない場合、本問では法定相続人は妻Bさんだけのため不要)
(6) 相続財産の名義変更手続き(詳細は3.の通り)
(7) 相続税の申告・納税(詳細は4.の通り)

2. 遺言に関する手続き

(1) 遺言があった場合、偽造・変造防止のため、自筆証書遺言や秘密証書遺言は勝手に開封しない
(2) 検認の申立書、被相続人・相続人全員の戸籍謄本の用意
(3) 上記(2)を家庭裁判所に提出し、検認の請求
(4) 家庭裁判所から検認期日の通知
(5) 検認期日に、相続人立会いのもと、遺言書の開封と内容確認、検認調書の作成

3. 相続財産の名義変更手続き

預金の名義変更手続きは銀行の相談コーナー等で手続き可能。その際、被相続人・相続人全員の戸籍謄本や遺言書・遺産分割協議書が必要

4. 相続税の申告手続きの概要

相続税の申告と納税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内に行うことが必要。なお、相続税の申告書の提出先は、財産を取得した相続人の住所地の所轄税務署ではなく、被相続人の住所地の所轄税務署となる。
申告と納税は相続人自身でも可能だが、本問の場合相続財産が3,200万円であるため納税は発生せず、申告も不要しないと思われる(相続税の申告は、課税価格の合計が基礎控除以下であれば不要)。

5. 円滑な相続を行うための事前手続き

(1) 遺言の作成
(2) 小規模宅地の特例や、配偶者の税額軽減適用による二次相続時の相続税負担の試算
(3) 生命保険の加入
Aさんは3分の1ずつ均等に相続させることを考えているが、相続財産に多額の不動産が含まれることや、アパートごとの賃貸収入の大幅な違い、アパートローンという負債もあり、単純に均等な相続は難しい。
例えば、Bさんには小規模宅地の特例を適用した自宅(将来にわたって確実に居住可能とするため)と金融資産、長男CさんにはアパートAとアパートローン、場合によっては孫への教育資金贈与、長女DさんにはアパートBと住宅取得資金の贈与等により、相続税負担を軽減しながらある程度均等な相続が可能と思われるが、各種特例適用や方策による相続税負担の差異について、税理士の協力を得て事前に確認することを提案する。

6. ふるさと納税の説明

ふるさと納税は、任意の自治体に寄附した場合、所得税と住民税から一定の控除を受けることができる制度。「ふるさと」とあるが、自身の出身地に限らず、任意の自治体に寄附可能で、寄附額に応じた返礼品を配布する自治体も多い。
平成27年4月以降、ふるさと納税ワンストップ特例により、確定申告不要な給与所得者等に限り、ふるさと納税による寄附先が5団体以内であれば、確定申告不要で寄附金控除申請が可能となっている。
ふるさと納税を利用する場合、インターネット上のポータルサイトを利用するのが最も簡単であるが、本問のAさんの場合は不動産収入があり確定申告が必要であると思われるため、確定申告時に寄附控除の申請を行うことで適用される。

FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続手続き・相続財産の処分方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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