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2017年2月4日実技part1

2017年2月4日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(72歳)は、電気機械器具製造業を営むX社の代表取締役社長(創業者)である。
設立から40年近くが経過するX社は取引先から高い技術評価を受けており、安定した収益を確保してきた。Aさんは高齢を理由に引退を考えているが、X社を承継する者が親族のなかにおらず、事業承継について悩んでいる。また、Aさんは「引退するにあたって、法人(X社)に内部留保してきた資金について、個人(Aさん)に引き上げたい」と思っている。
最近、勤務医である長男Cさんが医院の開業を検討しており、その用地としてAさんが所有する甲土地を使わせてもらえないかとの相談があった。Aさんとしては、甲土地を長男Cさんに譲りたいと思っているが、二男Dさんおよび長女Eさんとの間で問題が生じないかと心配している。
長女Eさんは、公立中学の教員である夫と子2人の4人で賃貸マンションに住んでいる。2人の子は私立中学校への進学を希望しており、長女Eさんは将来の生活資金に不安を抱いている。Aさんは、いくらかの資金援助をしてあげたいと思っている。
なお、Aさんの相続に係る相続税額は、約1億5,000万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

【Aさんの家族構成】
妻Bさん(69歳) :Aさんと自宅で同居している。
長男Cさん(44歳):勤務医。妻と子2人で戸建て住宅(持家)に住んでいる。
二男Dさん(41歳):県庁職員。妻と子1人でマンション(持家)に住んでいる。
長女Eさん(38歳):専業主婦。中学教師の夫と子2人で賃貸マンションに住んでいる。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
1.現預金 :5,000万円
2.X社株式:2億5,000万円
3.自宅  :1億円(土地(400u)8,000万円、建物2,000万円)
4.甲土地 :1億円(500u、駐車場として賃貸中)
5.賃貸アパート:8,000万円(土地(250u)5,000万円、建物3,000万円)
合計:5億8,000万円

<X社の概要> 株主構成:Aさん100% 従業員数:30名
現金預金  1億6,000万円
売掛金     8,000万円
棚卸資産    9,000万円
固定資産    2,000万円
資産計   3億5,000万円

買掛金   1億円
資本金     1,000万円
利益剰余金 2億4,000万円
負債および純資産計 3億5,000万円

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part1 ポイント解説

1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策

(1) 生命保険・金庫株の活用(X社は過去の内部留保が多い)
(2) 役員退職金の支給
(3) 小規模宅地の特例の活用(節税効果は自宅が最適)
(4) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用

2. 遺産分割対策

(1) 遺言の作成
(2) 長男Cへの相続時精算課税制度による生前贈与
(3) 保険金を原資にした代償分割
(4) 長女Eへの住宅資金贈与、孫への教育資金贈与、結婚・子育て資金贈与の非課税措置の検討

3. 事業承継(親族外承継)と内部留保の移転方法

親族に後継者がいない場合、従業員等の親族外の者への承継を検討することが必要となる。ただし、親族と異なり、後継者とする理由や資質等について、従業員や取引先に理解を得ることが必要となる。
また、親族外承継の場合、現経営者の株式を後継者に全て譲渡することが望ましいが、後継者には自社株式取得の資金が無いことが多いため、役員給与の増額等の対策が必要となる。

さらに、自社の内部留保を個人(経営者)へ移転する方法については、役員退職金の支給や金庫株の活用が提案可能。
自己株式の取得は剰余金の分配とされるため、株主への配当と同様に、剰余金の分配可能額を超えて自己株式の取得を行うことはできない

X社の利益剰余金や現金預金は潤沢であり、数年間にわたって金庫株としてAさんの持ち株を買い取ることにより、X社の内部留保をAさん個人に移転することが可能となる。また、併せて後継者に対しても増額した役員給与等により持ち株を譲渡することで、結果として親族外に事業承継しつつ、内部留保の個人への移転が可能となる。

なお、個人が非上場株式をその発行会社に譲渡した場合、買い取ってもらった金額のうち資本金等の額を超える分については、「みなし配当」(配当所得)となり、個人間で譲渡した場合、低額譲渡すると買い手に対しては時価と譲渡価額との差額が贈与税の課税対象となり、売り手に対しては譲渡価額に基づいた譲渡所得が所得税の課税対象となる。

4. 二男D・長女Eが納得する遺産分割対策

甲土地を長男Cに相続させる場合、自宅を同居している妻Bに相続させることを前提にすると、賃貸アパートと預貯金・X社株式を二男Dと長女Eに相続させることが必要となる。

将来の生活資金に不安を抱いてる長女Eに対しては、預貯金や役員退職金、X社や後継者に買い取らせたX社株式の買い取り額といった金融資産を相続させ、二男Dには賃貸アパートと残りの金融資産を相続させることが適当と思われる。
(X社株式が相続税評価額で換金できた場合、税額軽減や評価減適用前の相続税負担額を差し引いたとしても、妻Bの納得が得られれば、子3人に1億円ずつ平等に相続させることは可能。)

前述のようにX社の親族外承継や内部留保の移転といった生前の対策が肝要であり、同時に移転できた内部留保を用いて、相続時精算課税制度による生前贈与・住宅取得や孫の教育・結婚・子育て資金贈与の特例を活用してできるだけ生前に充分な贈与を行っておくことが望ましい。

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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