2017年2月12日実技part2
2017年2月12日実技part2
part2 問題文
●設 例●
Aさん(65歳)は、長年勤めた会社を退職し、妻Bさん(63歳)とともに、大都市圏郊外のT市内の戸建て住宅で暮らしている。Aさんの自宅は、昭和58年に大手不動産会社が大規模に分譲したものであり、傾斜地にある。また、最寄りのT駅からバスで20分程度の場所にあり、商業施設からも離れている。自宅周辺では空き家が目立つようになってきた。
Aさん夫妻の1人娘である長女Cさん(37歳)は、大都市の中心地近くに購入した分譲マンションで夫と2人の子の4人で安定した生活を送っている。Aさん夫妻は、今のうちに、生活に不便で管理にも手間がかかる自宅を売却し、長女Cさん家族の近くにあるマンションに移り住みたいと考えている。両親が近くに住むことに、長女Cさんは賛成している。
Aさんは、自宅のほかに15年前に購入した賃貸アパートを所有している。当該アパートは最寄りのT駅から徒歩5分と好立地にあるが、入居率が低く、思うように収益はあがっていない。管理会社からは、外壁の塗替えや水回り設備の取替えをすれば、入居率はあがるとの説明を受けているが、近隣にある大学キャンパスの移転話もささやかれており、自宅同様、アパートも処分して、マンションの購入費用に充てるべきか悩んでいる。
自宅、賃貸アパートおよび住替えを検討している都心のマンションの概要は、以下のとおりである。以下(1)・(2)の金額面については、Aさんが地元の不動産業者および管理会社から聞いた内容である。なお、Aさん夫妻の年金収入は合わせて月額40万円、預貯金は8,000万円程度保有している。
(1)T市内の自宅
・土地200u、建物(木造2階建て)100u、築33年
・新築時の取得費は3,500万円(土地1,500万円、建物2,000万円)、住宅ローンは完済
・不動産業者からのヒアリングによると現在の売却価格は1,300万円程度とのこと
(2)T市内の賃貸アパート
・土地400u、延床面積350u(1Kタイプ計10戸)、前面道路の路線価は9万円、築15年
・取得費は5,000万円、借入金は完済
・年間の賃料収入は430万円(現在4戸が空室)
・維持管理費、税金の支払などの後に手元に残る金額は年間300万円程度
・外壁の塗替えや水回り設備の取替えにかかる費用は800万円程度
・現状のままで売却すると、売却価格は3,000万円程度
(3)住替えを検討している都心のマンション
・新築マンション(14階建て)の2階、専有面積75u、購入予定価格は5,500万円
(FPへの質問事項)
1.Aさんが売却を検討している不動産について、FPであるあなた自身が調べて確認しておくべきことはありますか。また、Aさんから聞くべき情報はありますか。
2.自宅を売却し、新築マンションを購入した場合、Aさんは課税上の特例の適用を受けることができますか。
3.収益物件を保有するメリット・デメリットについて、簡潔に説明してください。
4.上記2・3およびAさんの資産状況などを踏まえ、住替えにあたっての資金計画について、あなたの考えを話してください。
5.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。
part2 ポイント解説
1. アドバイスに当たって必要な情報
(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
賃貸アパートを処分した場合、Aさんの収入は年金のみとなるが、家計の収支や心情的に問題はないか、または別物件の不動産投資や他の資産運用も検討しているか等、今後のライフプランを確認する。
(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地・建物の物理的状況を、実際に確認することが必要。
特に、本問では賃貸アパートが最寄駅から徒歩5分という好立地にも関わらず、入居率が低いという問題があり、外壁や水回り設備だけが原因であるか、実際に確認が必要。
2. 自宅を売却し、新築マンションを購入した場合の課税上の特例
居住用財産の買換え時の譲渡損失の損益通算・繰越控除では、譲渡損失とその年の他の所得との損益通算が可能で、損益通算後も控除しきれない損失は、譲渡年の翌年以降3年以内での繰越控除が可能。
特例適用される譲渡資産の条件は、譲渡年の1月1日における所有期間が5年超(繰越控除は敷地面積500uの部分まで)、買換え資産の条件は、家屋の床面積50u以上(敷地面積は制限なし)で、買換えた新居の住宅ローン(適用年の12月31日時点で10年以上)があることである。
本問の場合、自宅売却時には譲渡損失が発生するため、賃貸アパートの不動産所得や公的年金等の雑所得と損益通算しつつ、控除しきれない損失は翌年以降3年間繰越控除することで、所得税・住民税負担を軽減可能。
3. 収益物件を保有するメリット・デメリット
収益物件のメリットとしては、不動産収入や、土地が貸家建付地として評価されることによる相続税や固定資産税等の税負担の軽減効果があげられる。
デメリットとしては、すぐに現金化できないため流動性リスク、固定資産税・都市計画税等の税負担、外壁や水回り等の不動産自体の管理コストがあげられる。
4.住替えにあたっての資金計画のアドバイス
まず、自宅売却した上で、新築マンションを償還期間10年以上の住宅ローンで購入し、居住用財産の買換え時の譲渡損失の損益通算・繰越控除により不動産所得や公的年金等の雑所得と損益通算し、所得税・住民税の負担軽減を図る。
損益通算しても控除しきれない損失は、譲渡年の翌年以降3年以内での繰越控除が可能であることから、自宅売却後の3年間は税負担なく不動産収入や年金収入を手元に残すことが可能。
なお、Aさんは65歳で定年退職済みであるため、通常の住宅ローンでは審査に通らない可能性があるため、預金に連動して金利が変動する預金連動型住宅ローンや返済はせずに借入者の死亡時に住宅を処分して返済資金に充当するリバースモーゲージ型住宅ローンを利用することが必要となる可能性が高い。
賃貸アパートは、自宅の譲渡損失の繰越控除が使い切るところまでは保有して不動産収入を確保するものの、近隣の大学キャンパスの移転話や入居率の低さ、さらにAさんが都心のマンションに移住することを考えると、処分した上で、都心の区分マンションへの複数投資の検討を提案する。
区分マンション投資は一棟物件よりも収益性は劣るものの、流動性リスクや管理コストも比較的低く、老後の収入源とするならば移住先に近い都心での運用が望ましいと思われる。
5. 関与すべき専門職業家
自宅の売却や新築マンションを購入した場合の居住用財産の譲渡所得の特例の適用可否や、適用した場合の譲渡所得税額の試算等については、税理士が適当。 また、測量結果に基づいた適正な不動産価格の算定は、不動産鑑定士が適当。
また、自宅や賃貸アパートの売却に向けた、不動産の賃貸借や土地売却に関する、媒介や契約代理等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては不動産業者、新築マンションの所有権保存登記については司法書士が適当。
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