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2017年2月12日実技part1

2017年2月12日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(70歳)は、父親が創業したX社の株式を20年前に相続により取得し、弟Eさん(63歳)とともに経営を行ってきた(Aさん50%、弟Eさん50%の割合でX社株式を継承した)。
Aさんは、3年前にX社の経営を弟Eさんに任せて引退しており、今後、AさんおよびAさん家族がX社の経営に関与する可能性はない。Aさんは、弟EさんにX社株式の買取りを依頼したところ、弟Eさんから快諾を得た。X社は、技術力を背景に業績は安定し、黒字経営を続けているものの、Aさんは、弟Eさんに迷惑を掛けたくないため、譲渡金額は相続税評価額よりも低い金額でもよいと考えている。
Aさんは、妻Bさん(65歳)および長女Cさん(40歳)家族と自宅で同居している。長女Cさんは、離婚後、2人の子(12歳・10歳)とともに実家に戻ってきている。Aさんは、長女Cさんと孫の今後の生活を心配しており、将来的には相応の金融資産、自宅の土地・建物および賃貸アパートを長女Cさんに譲りたいと思っている。Aさんは、子2人の仲は悪くないと感じているものの、いざ相続が起こった際に遺産分割で家族がもめることのないようにしたいと思っている。
Aさんの自宅の敷地は父親の相続により取得したもので、弟Eさんとの共有である。同じ敷地内に弟Eさんも自宅を建築し、家族とともに暮らしている。Aさんは、自宅の敷地について、共有のままでよいのか不安を抱いている。
また、Aさんは、先日、経営者仲間だった知人が認知症と診断されたことを聞き、将来のことを考えて、成年後見制度の概要について知っておきたいと思っている。

【Aさんの家族構成】
妻Bさん(65歳):Aさんと自宅で同居している。
長女Cさん(40歳):無職。離婚後、2人の子とともに、Aさんと同居している。
長男Dさん(38歳):勤務医。妻と子2人で戸建て住宅(持家)に住んでいる。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
1.現預金 :8,000万円
2.上場株式:3,000万円
3.X社株式(中会社):9,000万円
4.自宅土地(全体800u):6,000万円(持分50%の評価額)
  自宅建物(築30年):800万円
5.賃貸アパート一棟
 (1)敷地(500u):7,000万円
 (2)建物(12戸):2,000万円(年間収入1,000万円)

合計 : 3億5,800万円

※Aさんの相続に係る相続税額は、約7,750万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

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part1 ポイント解説

1. 非上場株式の買い取り対策

将来的な相続発生による株式の外部流出防止のため、Aさんが保有するX社株式を弟EさんかX社が買い取ることが望ましいが、時価(相続税評価額)より著しく低い価額で譲渡すると、低額譲渡として課税される恐れがある。
個人間で低額譲渡した場合、買い手に対しては時価と譲渡価額との差額が贈与税の課税対象となり、売り手に対しては譲渡価額に基づいた譲渡所得が所得税の課税対象となる。

また、法人が個人から保有する株式を時価より低額で買い取る場合、買い手である法人の取得価額は時価となり、時価と売買価格の差額は、受贈益として法人税が課される。さらに、売り手である個人もみなし譲渡所得として課税される(同族会社の場合、時価の2分の1以上で譲渡してもみなし譲渡所得課税される場合もある)。

従って、具体的な数字は税理士に相談しつつ、低額譲渡とならない程度でX社または弟Eさんとの買い取りを進めることが必要となる。

2. 遺産分割対策

(1) 遺言の作成
(2) 相続時精算課税制度による生前贈与、教育資金贈与、結婚・子育て資金贈与の非課税措置の検討

3. 円滑な遺産分割対策

妻には自宅土地・建物、無職である長女Cには賃貸アパート、長男Dには金融資産を中心に、法定相続分に相当する額を相続させることで、遺産相続争いの回避と相続発生後の生活の安定を図ることを提案する。
また、二次相続では配偶者の税額軽減がなく、また長女Cが自宅土地・建物を相続するとなる場合、長男Dには相応の代償分割が必要となる可能性があるため、生前から賃貸アパートの収入や相続した金融資産のうち、将来的な代償分割分の金額を確保しておくよう、長女Cにあらかじめ伝えておくことが必要である。

4.自宅敷地の共有の解消

共有持分となっている不動産について、持分だけの売却や抵当権設定は可能だが、共有物も含めた売却等については、共有者全員の同意が必要となるため、現実的には共有不動産の有効活用・処分は非常に困難であることが多い。
また、流動性の低さや権利関係の複雑化による担保価値の低下等も、問題点として挙げられる。

本問の場合、共有権者であるAさん・Bさんともに同じ敷地内に自宅を建築し居住しているため、共有不動産そのものを、各持分に応じた価格按分により分割し、各権利者の単独所有の不動産とする現物分割が適当と思われる。

現物分割の場合、共有持分に応じて現物分割すると、資産の譲渡や贈与に該当せず、課税されない(土地のように、効用を一にする一個の共有資産の場合)。
共有持分に応じた分割として、土地であれば面積を基準にした分割だけでなく、価額に応じて分割面積を定めても、面積算定が合理的なものであれば、認められる
よって、本問のプランでも、それぞれの取得する土地価額が均等となる面積として、専門家によって適切に算定されたものならば、課税対象外となると想定される。

5. 成年後見制度の概要と手続き

成年後見制度は、認知症などで判断能力が低下した場合に、財産管理や契約締結の支援を行う制度
法定後見制度と任意後見制度の2つがあり、法定後見制度では家庭裁判所で後見人を選任するのに対し、任意後見制度では本人の判断能力が十分なうちに、あらかじめ後見人を選任し、公正証書で任意後見契約を締結しておくことができる。

なお、実際に任意後見契約の効力が生じるのは、本人の判断能力が低下して、本人や配偶者等の請求により、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時からとなる。
なお、後見人は、自身の責任において、被後見人の財産を処分することが認められているが、法定後見の場合には、被後見人の居住用財産の処分に際して、家庭裁判所の許可が必要

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、非上場株式の譲渡方法や遺産分割対策、それらを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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