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2017年6月10日実技part1

2017年6月10日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(53歳)は、首都圏にあるX市の出身であるが、地方都市M市に所在するM大学に進学した。M大学卒業後は、同市に本社がある大手メーカーに就職し、現在は営業部門の部長職にある。Aさんの家族は、妻Bさん(48歳)、長男Cさん(20歳)および長女Dさん(18歳)の3人であり、M市内にある借上げ社宅(賃貸マンション)に住んでいる。
平成29年4月、X市内の実家で1人暮らしをしていた母親が死亡した。母親は、生前にAさんおよび姉Eさんと話合いをしたうえで、自筆証書遺言を作成しており、相続人であるAさんと姉Eさんは、その内容について納得している。Aさんは、今後、遺言書についてどのような手続をしたらよいか、また、財産の名義変更手続等はどのように進めたらよいか、さらに相続税の申告手続や必要書類についてなど、わからないことが多い。
Aさんは、実家には住む予定がないため、実家の敷地および建物を売却し、その売却資金でM市内に自宅を購入しようと思っている。なお、姉Eさんは、X市内に夫と暮らす自宅を保有しており、Aさんが実家を処分することに異論はないようである。
また、Aさんは、母親の相続をきっかけに、生まれ故郷であるX市に恩返しがしたいという気持ちが芽生えるようになった。Aさんは、「ふるさと納税」について、やってみたいと思っているが、その方法や仕組みがよくわからない。

【Aさんの親族関係図】


【遺言書の内容】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
1.Aさんが相続する財産
(1)実家敷地(330u): 8,000万円
(2)実家建物(昭和53年築): 500万円
(3)定期預金: 6,000万円

2.姉Eさんが相続する財産
(4)賃貸アパート敷地(200u):6,000万円
(5)賃貸アパート建物:3,000万円
(6)定期預金:6,500万円

合計:3億円

※母親の相続に係る相続税額の試算額(小規模宅地等の評価減適用前)は、Aさんが約3,300万円、姉Eさんが約3,600万円である。

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part1 ポイント解説

1. 自筆証書遺言書の手続き

(1)偽造・変造防止のため、自筆証書遺言は勝手に開封しない
(2)検認の申立書、被相続人・相続人全員の戸籍謄本の用意
(3)上記(2)を家庭裁判所に提出し、検認の請求
(4)家庭裁判所から検認期日の通知
(5)検認期日に、相続人立会いのもと、遺言書の開封と内容確認、検認調書の作成

2.相続財産の名義変更手続き

(1)預金の名義変更手続き(銀行の相談コーナー等)
(2)不動産の名義変更手続き(法務局で相続登記)
上記いずれも、被相続人・相続人全員の戸籍謄本や遺言書・遺産分割協議書のほか、不動産については登記簿謄本等が必要。
また、財産の名義変更ではないものの、公的年金については未支給年金の請求届出、クレジットカードの未払い分の支払い手続き等が必要になる。

3. 相続税の申告手続きの概要

相続税の申告と納税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内に行うことが必要。なお、相続税の申告書の提出先は、財産を取得した相続人の住所地の所轄税務署ではなく、被相続人の住所地の所轄税務署となる。
申告と納税は相続人自身でも可能だが、本問の場合相続人は被相続人の住所地とは離れて暮らしており、手続きにも慣れていないと思われるため、税理士に申告と納税手続きの代行を依頼することを提案する。

4. 小規模宅地の特例の活用方法

小規模宅地の特例は、特定居住用は330uを上限に80%減額、特定事業用は400uを上限に80%減額、貸付事業用は200uを上限に50%減額となり、特定事業用400uと特定居住用330uを併用する際は、それぞれ適用可能であるため、最大730uまで適用可能
本問の場合、実家土地330uに特定居住用宅地を適用すれば、大幅に相続税負担を軽減することができるが、配偶者以外が取得する場合には、取得する別居親族は、相続開始前3年以内に自宅を所有していないことと、相続開始からの申告期限まで継続保有すること等が必要
アパート敷地については、貸付事業用宅地として200uまで50%の減額対象となるが、2種類以上の宅地に特例適用する場合には一定の調整計算による制限があり、実家土地330uに適用した場合には適用できない。
Aさんは実家を売却して自宅を購入したい希望があるが、特例適用には相続税の申告期限まで保有継続が必要となるため、すぐに売却する場合にはアパート敷地に特例適用が可能。
Aさんと姉Eさんは遺言書の内容に納得しているが、本特例適用による相続税負担の差異についても、税理士の協力を得て事前に確認し、場合によっては代償分割等の検討も提案する。

5. 空き家売却時の譲渡所得の特例

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除は、相続や遺贈で取得した被相続人の居住用住宅を、相続開始日から3年後(その年の12月31日)までに、売却額1億円以下で譲渡すると適用される。
特別控除の対象となる住宅は、1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された一戸建てで、被相続人が1人暮らししていた物件。また、相続発生から譲渡まで事業・貸付・居住用に使われておらず、譲渡時に現在の耐震基準に適合していることが必要。
本問の場合、Aさんの実家は耐震基準さえクリアすれば特例適用が可能と思われるため、耐震基準に適合しない場合でもリフォームして敷地とともに譲渡することで、特例適用により譲渡所得への課税負担を大幅に軽減可能。

なお、空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除は、相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例(納付した相続税のうち一定額を取得費に加算)と併用できない

6. ふるさと納税の説明

ふるさと納税は、任意の自治体に寄附した場合、所得税と住民税から一定の控除を受けることができる制度。「ふるさと」とあるが、自身の出身地に限らず、任意の自治体に寄附可能で、寄附額に応じた返礼品を配布する自治体も多い。
ふるさと納税ワンストップ特例により、確定申告不要な給与所得者等に限り、ふるさと納税による寄附先が5団体以内であれば、確定申告不要で寄附金控除申請が可能となっている。
ふるさと納税を利用する場合、インターネット上のポータルサイトを利用するのが最も簡単であるが、本問のAさんの場合、実家を売却した年については、土地・建物等の譲渡収入があり確定申告が必要であると思われるため、確定申告時に寄附控除の申請を行うことで適用される。

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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