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2017年6月10日実技part2

2017年6月10日実技part2

part2 問題文

●設 例●
Aさん(50歳)は、会社員の夫および大学生の長男とともに、首都圏にあるM市内の自宅に住んでいる。昨年、Aさんの母親が亡くなり、預貯金3,500万円を相続により取得した。
Aさんは、投資経験はあまりないが、不動産投資で運用したいと考え、不動産会社の営業担当者から以下の2つの収益物件を紹介してもらった。

【甲物件:東京都23区内で都心に近い築15年の分譲ワンルームマンション2戸】
・鉄筋コンクリート造9階建て、総戸数24戸、利便性良好で空室はほとんどない。
・2戸保有している売主がまとめて総額2,400万円で売却を希望している。
・2戸とも専有面積は20u。2戸とも同一の月額賃料68,000円(共益費込)で貸している。マンション管理組合に対する管理費は月額9,000円/戸、修繕積立金は月額3,000円/戸
・現在まで大規模修繕は行われていない。
・管理費・修繕積立金控除後の満室想定利回りは約5.6%

【乙物件:M市内にある築12年の賃貸アパート】
・土地の権利は借地権(旧借地法土地賃借権、非堅固建物所有目的、月額地代30,000円)
・軽量鉄骨造2階建て、敷地面積110u、建物延床面積100u、総戸数4戸
・物件価格は2,700万円、近隣に有名大学があり、1戸平均月額60,000円で全室賃貸中
・地代控除後の満室想定利回りは約9.3%

Aさんは、収益物件について、投資に詳しい知人に相談したところ、「現在2つの収益物件の稼働率は高いが、通常、年数を経るに従って空室率は高くなる。近くに新築物件が建築されれば、競争は激しくなる。投資リスクを減らす意味では、J−REIT(上場不動産投資信託)への投資も検討に加えてはどうか」とアドバイスされた。

(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから直接聞いて確認する情報
(2)FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.甲物件の投資において、気をつけるべき点は何ですか。
3.乙物件について、何か問題になることはありますか。
4.実物不動産投資において、甲物件と乙物件、どちらの投資(購入)を勧めますか。
5.J−REITで投資先を選ぶ際には、どのような点を確認しますか。J−REITが実物不動産投資よりも投資対象として優れている点は何ですか。また、投資リスクは何ですか。
6.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

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part2 ポイント解説

1. アドバイスに当たって必要な情報

(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
投資経験があまりないAさんにとって、今回の不動産投資で希望する利回りや、引き受け可能なリスクについて、確認することが必要。
また、Aさんの夫や大学生の長男といった家族が、不動産投資についてどの程度が把握しているか確認が必要(相続財産自体はAさんのものであるが、預貯金ではなく不動産投資となれば、扶養の対象外となる可能性や損失発生の可能性など、家族への影響も考えられるため)。

(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地・建物の物理的状況を、実際に確認することが必要。
また、用途地域・地方自治体の都市計画等を確認し、今後の開発予定・環境変化を把握することが必要である。

2. 甲物件の投資において、気をつけるべき点

築15年とそれなりに築年数が経過しているため、そろそろ大きなリフォームが必要となってくる可能性が高い。
現在まで大規模修繕は行われていないため、購入後数年で多額のリフォーム費用が必要となるリスクがある。
また、投資対象は2室のみであるため、仮に1室が空き室となると、不動産収入が一気に半減してしまうリスクがある。

3. 乙物件に関する留意点

築12年とそれなりに築年数が経過しているため、満室維持のためにはいずれ大きなリフォームが必要となってくる可能性が高い。
借地上の建物を建て替える場合、「建物の増改築」であるか、「借地条件の変更」であるかで地主への手続き等が異なる。
建物の増改築:非堅固から非堅固に建て替える(木造から木造に改築等)の、借地条件を変更しない建て替えでは、契約書に増改築禁止の条項がなければ改築は自由で、地主の承諾は不要(承諾料も不要)。契約書に改築禁止の条項があった場合は、改築には地主の承諾が必要で承諾料(更地価格の5%程度)も必要

借地条件の変更:非堅固から堅固に建て替える(木造から鉄筋ビルに改築等)の、借地条件の変更を伴う改築では、地主の承諾と承諾料(更地価格の10%程度)が必要

4. 実物不動産投資において甲・乙物件、どちらの投資(購入)を勧めるか

各物件それぞれにリスクはあり、現時点の情報だけでは判断が難しいものの、乙物件では地主への地代・承諾料の支払いなどが発生し、地主との良好な関係を維持する必要があるため、不動産投資経験の無いAさんには、甲物件に比べてリスクが高いと考えられる(リフォーム時も大きな金額必要となる)。
実物投資を希望するのであれば、投資先は甲物件とし、残額は余裕資金とするか、乙物件との差額分をJ−REITに投資することを検討しても良いと考える。

5. 上場不動産投資信託(J-REIT)に関する説明

◆投資先を選ぶ際の確認事項
運用する投資法人が倒産した場合等は、一般的な株式と同様に上場廃止となり、証券取引所での売買ができなくなるため、四季報や格付け等によりその投資法人の信用力を確認しておくことが必要。

◆メリット
実物不動産とは異なり、少額から購入することもできるため、一度に購入せずに、ドルコスト平均法で少しずつ購入し価格変動の影響を抑えることも可能。
また、少しずつ売却することもできるため、資金流動性が高い

◆デメリット
株式市場に上場されているため、投資法人の投資先の状況とは別に、株式市場の騰落状況の影響を受けるリスクがある。
また、通常の株式投資信託と異なり、解約請求や買取請求ができない(クローズド・エンド型)ため、換金の際は市場での売却が必要となる。このため、場合によっては売却したいときに買い手がなく、売却できない事態も有り得る。

6. 関与すべき専門職業家

実物不動産投資における、測量結果に基づく適正な不動産価格・地代、賃料の算定は、不動産鑑定士が適当。
また、不動産収入やJ-REITに関する課税上の取扱いに関する具体的な税務相談については税理士、実物不動産投資を選択した際の登記については司法書士、J-REITの選定に関し、投資顧問契約に基づく、特定の有価証券に係る動向や投資判断についての助言に該当するものについては、投資助言・代理業の登録をしている金融商品取引業者が適当。

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