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2017年6月18日実技part2

2017年6月18日実技part2

part2 問題文

●設 例●
会社員のAさん(53歳)は、首都圏にあるS市の出身であるが、大学卒業後、地方都市N市に本社が所在する企業に就職した。現在は、N市内に購入したマンションで妻(50歳)および長女(20歳)と暮らしており、S市内の実家に居住する予定はない。
平成29年4月、S市内の実家で1人暮らしをしていた父親が死亡した。父親が所有していた実家はAさんが相続により取得する予定である。父親の相続財産は、実家のほかに、預貯金が2,000万円程度ある。

【父親が居住していた住宅(実家)の概要】
・土地150u、建物(木造2階建て)延床面積100u、築30年
・10年前にキッチン、バス、トイレのリフォームを行っている。
・父親の死亡後は、空き家のままになっている。

【実家の土地について】
・土地は、所有者Bさんからの賃借であり、土地の権利は旧借地法に基づく借地権である。
・約50年前からの借地であり、現在の建物は30年前に建て替えたものである。
・当初、権利金の支払はなく、現在の地代は月額4万円である。
・借地契約は、近いうちに更新時期を迎える。
・実家のある地域は、閑静な住宅エリアとして比較的人気があり、借地権付き建物の取引も散見される。借地権の取引慣行のある地域である。

Aさんは、実家に住む予定がないため、建物を取り壊して地主であるBさんに土地を返還すべきか、現状のままで第三者に売却あるいは賃貸すべきか悩んでいる。なお、建物の賃貸について、地元の不動産業者に聞いてみたところ、賃料は月額8万円程度ではないかとのことであった。
他方、土地所有者であるBさんからは、以下4点の要請があったが、AさんはBさんの要請する意味がよくわからず、どのように対応すべきか、悩んでいる。
ア.相続にあたり、賃借人の変更があったのだから、名義書換料を支払ってほしい。
イ.借地契約を更新するのであれば、更新料を支払ってほしい。
ウ.借地権を譲渡するのであれば承諾してもよいが、承諾料を支払ってほしい。
エ.借地契約を解消するのであれば応じてもよい。

(FPへの質問事項)
1.設例に記載されていること以外にAさんから聞くべき情報はありますか。また、Aさんが相続する住宅や借地権について、FPであるあなた自身が調べて確認しておくべきことはありますか。
2.Aさんが、相続した住宅を取り壊してBさんに土地を返還する案について、どのようにアドバイスをしますか。
3.借地契約に係る更新料、名義書換料、譲渡承諾料とは、どのようなものですか。
4.Aさんが借地権付き住宅をBさん以外の第三者に譲渡した場合の課税関係について教えてください。
5.上記2〜4を踏まえ、Aさんにどのようにアドバイスをしますか。
6.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

【父親が居住していた住宅(実家)の概要】

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part2 ポイント解説

1. アドバイスに当たって必要な情報

(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
地主との交渉はAさんが主体的に行うことが必要であるため、地主との関係とこれまでのトラブルの有無の確認が必要。
また、提示されている賃貸収入(月額8万円)について、遠方に居住するAさんの管理の手間等も勘案して、十分なものと考えているか(地代を差し引けば実際の収入は月額4万円)、今後のライフプランを確認する。

(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地の物理的状況を、実際に確認することが必要。
また、Aさんが遠方に居住している関係上賃貸管理が難しい面があるため、現地の不動産管理会社の状況や、売却代金や取壊費用等の相場を確認しておくことも必要。

2. 相続した住宅を取り壊して土地を返還する案へのアドバイス

普通借地権の存続期間満了後、契約の更新がない場合、借地人は地主に建物等の時価での買い取りを請求可能(建物買取請求権)
従って、Aさんは地主Bさんに対して借地権付建物の買い取りの申し出をすることが可能。
ただし、木造住宅のような非堅固な建物の場合、存続期間は30年とされているため、本問の住宅の残存価値は、10年前にリフォームを行っていたとしてもあまり大きな額は期待できない。

借地契約解除時には借地人に原状回復義務(更地にして返す義務)があるが、建物買取請求権を行使すると建物の所有権は地主に移るため、借地人は建物の取り壊しを行う必要はなくなる。

3. 借地契約に係る更新料・名義書換料・譲渡承諾料

◆更新料
更新料は、借地契約の存続期間満了後、更新時に借地人から地主に対して支払われるもので、更地価格の5〜10%であることが多い。
法律上の支払い義務があるものではなく、その地域の取引慣行によって支払われるものであるため、契約書上に明示されていなくても、地域の相場や前回の更新時の金額を参考に、両者合意の上で支払われる。

◆名義書換料
名義書換料は、贈与や相続によって借地契約の借地人が変わった際に、地主から新たな借地人に対して請求されることがある。法律上の支払い義務があるものではないが、契約書を新たに作成する手間賃として少額を支払うことが多い。

◆譲渡承諾料
借地権を譲渡する場合には、地主の承諾が必要であり、その際に借地人から地主に対して譲渡承諾料として借地権価格の10%程度が支払われることがある。
なお、譲渡承諾料は、名義書換料・名義変更料と呼ばれることもある。
ただし、借地権の相続は譲渡に該当しないため、地主への名義書換料や譲渡承諾料の支払いは不要

4.借地権付き住宅を第三者に譲渡した場合の課税関係

土地や建物の譲渡所得は、譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超えると長期譲渡所得となり、課税長期譲渡所得=譲渡収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除 となる。

本問の場合、空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除もしくは軽減税率の特例を適用することで、税負担を軽減可能。

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除
相続や遺贈で取得した被相続人の居住用住宅を、相続開始日から3年後(その年の12月31日)までに、売却額1億円以下で譲渡すると適用され、特別控除の対象となる住宅は、1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された一戸建てで、被相続人が1人暮らししていた物件。

軽減税率の特例
贈与・相続により財産を取得した場合、その取得日・取得費を引き継ぐため、自宅の所有期間が10年超であれば(譲渡年の1月1日時点で判断)、軽減税率の特例が適用可能

5. 上記2〜4を踏まえたアドバイス

第三者への賃貸(借地契約の更新)は、Aさんが遠方に住んでいることや地代を差し引いた実質的な家賃収入の少なさ、更新料の支払いを考えると、積極的には勧められるものではないと思われる。

借地契約の解消には、地主が応じる意向のようだが、建物買取請求権の行使をしても実入りは少なく、原状回復との兼ね合いで地主との交渉も必要となり、こちらも勧められない。

借地権の譲渡には、地主が応じる意向であり、承諾料の支払いが必要となるものの、空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除や軽減税率の特例により税負担は大幅に低くなると思われるため、借地権の売却代金で承諾料も支払うことが可能であり、実入りも大きいと思われるため、譲渡を勧める。

5. 関与すべき専門職業家

空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除・軽減税率の特例の適用可否や、適用した場合の譲渡所得税額の試算等については、税理士が適当。 また、借地権付き建物の相続や譲渡の際の建物の所有権移転登記は、司法書士、測量結果に基づいた適正な不動産価格の算定は、不動産鑑定士が適当。
なお、不動産の賃貸借や土地売却に関する、媒介や契約代理等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、不動産業者が適当。

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