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2018年2月10日実技part1

2018年2月10日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(75歳)は、電子部品製造業を営む非上場会社X社の代表取締役社長である。Aさんは、設立以来40年以上にわたり、副社長である弟Bさん(72歳)と二人三脚で経営に邁進してきた。その結果、大手得意先から技術力と小回りの良さを高く評価されるとともに、東南アジアへいち早く進出したことも奏功し、業績は順調に推移してきた。
しかしながら、事業環境は大きく変化し、X社ではAIやIoTに対応するための研究開発・設備投資が大きな経営課題となっている。Aさんは、これらの経営課題について、長男の専務取締役Cさん(45歳)に責任と権限を委譲しており、Cさんはその期待に応えてリーダーシップを発揮している。AさんとBさんは、早い段階でCさんに事業承継をしたいと考えているが、具体的に着手できていない。Bさんは、長女Eさんが既に他家に嫁いでいるため、自身が保有するX社株式をCさんに買い取ってもらいたいと考えている。役員退職金はAさん3億円、Bさん2億円を予定しているが、研究開発や設備の投資負担もあり、Aさんは資金繰りのバランスについて悩んでいる。
他方で、Aさんは、取引銀行/生命保険会社/リース会社/不動産会社の営業担当者から積極的な提案を受けているが、整理がついていない。Aさんは、X社や自身にとって有用な提案を採用したいと考えている。
なお、一次・二次ともに法定相続分どおりに相続した場合の相続税の総額は、一次相続では約5億円(役員退職金支給前・配偶者の税額軽減適用前)、二次相続では約2億2,000万円である(一次・二次ともに小規模宅地等の評価減適用前の税額であり、妻に固有の財産はないものとする)。

【X社の概要】
資本金 :3,000万円 株主構成:Aさん60%、弟Bさん40%
従業員数:80人 株式評価上の会社規模:大会社
年商:40億円/経常利益:3億円/東南アジアの現地法人(子会社)に余剰資金5億円

【Aさんの家族構成】
妻(73歳)    :専業主婦。Aさんと自宅で同居している。
長男Cさん(45歳):専務取締役。妻と子2人でマンション(持家)に住んでいる。
二男Dさん(40歳):公務員。妻と子1人で官舎に住んでいる。X社の経営には今後も関与する予定はない。Cさんとの関係は良好である。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
現預金   :3億円(退職金は考慮していない)
自宅    :1億円(土地(250u)8,000万円、建物2,000万円)
X社株式  :6億円
X社本社土地:3億円(400u、無償返還方式・通常地代にて賃貸している)

合計     13億円

【弟Bさんの家族構成】
妻(68歳)    : 専業主婦。Bさんと自宅で同居している。
長女Eさん(43歳): 会社員の夫と子2人で戸建て住宅(持家)に住んでいるが、夫の勤務する会社の業績が芳しくなく、生活に余裕はない。

【親族関係図】

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part1 ポイント解説

1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策

(1) 生命保険・金庫株の活用
(2) 役員退職金支払い(法人税の低減、退職所得控除による所得税低減効果も有り)
(3)自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
(4) 小規模宅地の特例の活用
(5) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用

2. 遺産分割対策・事業承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用
(3) 相続時精算課税制度・直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度の活用
(4) 孫への教育資金贈与の非課税措置の検討
(5) 金庫株を用いた長男Cから二男Dへの代償分割

3. 納税資金を考慮した相続税対策

Aさん所有の株式については、非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用により、税負担を抑えながら移転することが可能。
ただし、適用対象は発行済議決権株式の3分の2までのため、Bさん所有分の株式は、業績が順調なX社が金庫株として数年間にわたって買い取ることが望ましい(相続開始から3年以内にX社に譲渡した場合は、みなし配当課税は適用されず、譲渡価額と取得価額の差額が譲渡所得(所得税15%・住民税5%)となり、相続税の取得費加算も適用できるため、X社が相続開始までに取得資金を準備し、相続発生後に金庫株として買い取ることも提案可能)。

なお、平成29年度税制改正では、非上場株式の相続税評価額を算定する際、類似業種の上場会社の株価に、相続開始前前2年間の平均額が追加され、比準要素である配当・利益・簿価純資産の比重が1:3:1から1:1:1になるなど、業績好調な会社には有利な反面、内部留保の多い会社にとっては不利な評価額となっている。

4.役員退職金の支給と研究開発や設備の投資負担を考慮した資金繰りバランス

X社は、東南アジアに現地法人(子会社)を保有し、その余剰資金5億円と豊富である。外国子会社から日本の親会社に資金還流を行う場合、外国子会社から日本の親会社への利子や配当の支払いにより資金還流を図ることが可能。
利子による資金還流は受け取った利息が全額日本で課税されるのに対し、配当による資金還流は外国子会社配当益金不算入の適用により配当額の95%が免税となり、日本と諸外国の法人実効税率の差から、配当の方が有利となることが多い。

本問ではX社から子会社への貸付の有無が不明であり、上記の税負担の面からも、配当により資金還流を行い、退職金支払いの原資とすることが適当と思われる。

5. 各社の営業担当者からの積極的な提案の採否

各社の提案は、いずれも相続税対策や退職後の資金運用対策として、以下のようなものと考えられる。

●取引銀行  :遺言信託商品や投資信託等の金融商品
●生命保険会社:死亡保険金の非課税枠を利用した保険商品や運用も加味した保険商品
●リース会社 :航空機や船舶等を複数者で購入し、航空会社等にリースすることで、減価償却による利益圧縮を図るオペレーティング・リース
●不動産会社 :不動産の相続税評価額減額を目的とした不動産購入

いずれの提案も、AさんやX社に対して適合すると思われる自社商品等を紹介していると思われるが、どの担当者も原則として自社商品に関してのみ提案するに止まるため、これらの提案を総合的に勘案し、採否をアドバイスをすることはできない。
FPとしては、各社の提案内容を総合的に勘案し、必要に応じて提案内容について担当者にもヒアリングした上で、Aさんに提案の採否のアドバイスを行うことが必要。

6. 子・孫への生前贈与による遺産分割対策・資金援助

長男CさんがX社を承継することにより、長男Cさんの相続分が多くなる可能性が高いため、兄弟仲が良好とはいえ、二男Dさんを受取人とした生命保険や、X社本社建物の賃料を原資とした代償分割(相続後に分割払い)による、ある程度均等な相続も必要と思われる。
また、Aさんの妻の相続発生時(二次相続時)に、二男Dにより多くの遺産を相続させることも検討可能(遺産分割協議の中でこれらを記した公正証書遺言や贈与契約書の内容を検討することが望ましい)。

さらに、教育資金の非課税特例や、相続時精算課税制度・直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度の活用により、積極的な二男Dへの生前贈与も検討できる。

なお、弟Bさんの長女Eさんについても、生活に余裕が無い状況であるため、退職金支給後に教育資金の非課税特例や相続時精算課税制度の活用といった生前贈与も提案可能。

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、各社からの提案商品の採否において、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する必要がある局面です。また、金融商品取引法等における重要事項の説明義務についても、FP自身が販売担当者ではないとはいえ、各社の担当者から適切に行われるかの確認も必要です。さらに、様々な相続税の軽減対策・事業承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」も当然重要となります。

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