2018年6月17日実技part2
2018年6月17日実技part2
part2 問題文
●設 例●
資産家のAさん(65歳)は、大都市圏にあるX市内に甲土地を所有している。甲土地は父親から相続した先祖代々の土地で、その敷地には妻Bさん(60歳)と同居する築40年の自宅と賃貸マンションが建っている。Aさんは、預貯金を3億円程度保有しており、賃貸マンションの収入もあるため、生活は安定している。しかし、賃貸マンションは老朽化しており、空室が増えている。また、自宅の建物も古くなっており、いずれ建替えを検討しているところである。
先日、Aさんが賃貸マンションの建替えについて1人息子である長男Cさん(32歳)に相談したところ、長男Cさんは「新しいマンションに入居したい。両親のそばに住むことができれば、お互い安心だ。ぜひとも、計画を進めていこう」と賛成してくれた。Aさんと長男Cさんは、3年後ぐらいを目途に建替えを実施しようと決めた。なお、会社員の長男Cさんは昨年結婚し、X市に隣接するY市にある社宅に住んでいる。
Aさんは、今後空室については多少賃料を下げてでも定期借家契約に切り替えていき、建替えをスムーズに進めたいと考えている。定期借家契約での入居が芳しくなかった場合は、今年から施行される民泊新法(住宅宿泊事業法)を活用して、一定の収入維持ができるのではないかと思っている。賃貸マンションの建築資金は、自己資金と金融機関からの借入を充当しようと検討しており、ローンを組むにあたっては長男Cさんの協力を得ることにしている。
Aさんは、賃貸マンションの建替えをスムーズに進めていくために、FPであるあなたに相談することにした。
【自宅および賃貸マンション(甲土地)の概要】
<甲土地>
・敷地面積800u(敷地内に自宅と賃貸マンションがある)
・第1種住居地域(建ぺい率60%、容積率200%)
<自宅>
・延床面積160u、木造2階建て、築40年(リフォームを2回行っている)
<賃貸マンション>
・延床面積1,600u、RC5階建て、築40年
・間取り2DK(総戸数25戸中、空きが5戸ある)
【賃貸マンションの現況】
・水回り、間取りともに古いタイプのため、空室が目立つようになってきた。
・修繕費や設備の取換えなど、コスト負担が大きくなってきた。
(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから直接聞いて確認する情報
(2)FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.定期借家契約と普通借家契約の相違点を教えてください。また、定期借家契約を成立させるための要件について説明してください。
3.あなたは、Aさんが希望するように甲土地に2棟の建物が建築できると思いますか。難しいと思う場合はどのようなアドバイスをしますか。
4.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。
【甲土地(自宅および賃貸マンション)およびその周辺の概要】
注1:Aさんの父親は、35年前、D宅地(Dさん宅)を甲土地から分筆して売却している。賃貸マンションは、建築当時、南側の道路に接道することで建築確認(接道義務、容積率ともに基準内)を取得している。
注2:X市の建築基準条例では、共同住宅等の建築について、床面積の合計が1,000uを超えるものは6m以上の道路に間口6m以上で接する必要があり、かつ、その接する部分に主要な出入口を設けたものでなければならないと定めている。延床面積の上限は、容積率・斜線制限等に従うものとする。
注3:南側道路に接している西端の2m幅の路地状部分の長さは15m未満である。X市の建築基準条例では、このような「路地状部分を有する敷地」には、戸建て住宅を建築することができる。
part2 ポイント解説
1. アドバイスに当たって必要な情報
(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
現在の自宅に住み続けるか、自宅部分も含めてマンション建設を行うか等について、Aさん自身や妻の希望を確認することが必要。また、長男Cさんの妻の希望(夫の両親との近居や将来子供ができた場合のライフプラン等)についても、将来の家庭内トラブル防止のために現時点で確認しておくことが必要。
民泊については近隣トラブル防止のため、近隣で実施済みか、近隣住民や自治会との関係性も考慮しているか、確認が必要。
(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地の物理的状況を、実際に確認することが必要。
また、X市の建築基準条例により、賃貸マンションや自宅の建替えにどのような影響があるか、X市の建築局等の該当部署に確認することも必要。
さらに、民泊新法(住宅宿泊事業法)に従って運営する場合でも、今後地方自治体独自の条例で規制が上乗せられる可能性もあるため、X市における民泊関連の情報を収集することが必要。
2. 定期借家契約と普通借家契約の相違点と定期借家契約の成立要件
普通借家契約では、賃貸人(大家)が正当事由なしに更新を拒絶できないため、賃借人(入居者)と合意していなくても、更新したものとみなされる(法定更新)。
また、普通借家契約では、2000年3月1日より前の契約では存続期間の上限は20年までとなっているが、2000年3月1日以降の契約では存続期間の上限はない。ただし、1年未満の契約期間だと期間の定めのない賃貸借とみなされる。
これに対し、定期借家契約は、原則として更新がないため、契約期間満了後は、借主は退去することが必要。ただし、貸主と借主双方が合意すれば、再契約は可能。
また、定期借家契約には存続期間の制限がないため、1年未満の短期の契約期間も認められ、20年超の長期の契約期間も認められる。
なお、定期借家契約は公正証書等の書面によって行うことが必要で、賃貸人は賃借人に対し、あらかじめ、契約の更新がなく期間満了により賃貸借が終了することを、書面を交付して説明することが必要。
3. 甲土地への2棟の建物の建築可否と難しい場合のアドバイス
路地状敷地(旗竿地)の場合、建築基準法上の規制に加えて、地方公共団体の条例により独自に規制されていることがある。
本問の場合、路地状敷地には戸建て住宅は建築可能であるが、賃貸マンションは特殊建築物として再建築不可となる可能性がある。また、本問の賃貸マンションは延べ面積が1,000u超であるため、6m以上の道路に間口6m以上で接し主要な出入口を設ける必要があることから、現状のように自宅の前面道路を東側道路とし、自宅の後ろ側に賃貸マンションを再建築することは難しいと思われる。
詳細はX市の建築局等の該当部署に確認することが必要だが、自宅部分も含めてマンション建設を行ってマンションの一室を自宅とするか、自宅を西端の2m幅の路地状部分に接するように建築することを検討することも提案する。
4. 関与すべき専門職業家
定期借家契約の利用における、測量結果に基づく適正な賃料の算定は、不動産鑑定士が適当。
また、甲土地の相続税評価額や不動産収入に関する課税上の取扱いに関する具体的な税務相談については税理士、マンションの建替えにおける建物滅失登記や建物表示登記については土地家屋調査士、所有権保存登記については司法書士が適当。
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