問57 2019年1月応用
問57 問題文
X社の当期の〈資料〉と下記の〈条件〉に基づき、同社に係る〈略式別表四(所得の金額の計算に関する明細書)〉の空欄(1)〜(7)に入る最も適切な数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、別表中の「***」は、問題の性質上、伏せてある。
〈条件〉
・設例に示されている数値等以外の事項は、いっさい考慮しないこととする。
・所得の金額の計算上、選択すべき複数の方法がある場合は、X社にとって有利となる方法を選択すること。
〈略式別表四(所得の金額の計算に関する明細書)〉 (単位:円)
(注)法人税額から控除される復興特別所得税額を含む。
問57 解答・解説
法人税の計算に関する問題です。
まず、(1)の「損金経理をした納税充当金」ですが、納税充当金は、当期に確定した法人税等を翌期の支払いに充てるために計上するもので、本問では当期確定申告分の見積納税額16,500千円(未払法人税等の期末残高16,500千円)が該当します。
法人税等は企業会計上では費用としますが、税務上では損金不算入のため、当期利益に加算されるわけです。
よって、(1)の正解は、16,500,000(円)
次に(2)の「減価償却の償却超過額」は、法人税法上の償却限度額を超過した減価償却額については、償却超過額として損金不算入となり、翌期に繰越して、翌期以降に償却不足額が発生した場合に、不足額相当分が損金算入されます。
また、法人税法上の償却限度額に満たない償却不足額については、切り捨てられ、翌期以降に繰り越して損金算入できません。
従って、減価償却の償却超過額=4,800千円−3,900千円=900千円
よって、(2)の正解は、900,000(円)
次に、(3)の「役員退職給与の損金不算入額」ですが、資料の2.で、役員退職金を70,000千円支給したものの、適正額を上回るものについては自己否認した、とありますので、功績倍率方式で算出した退職金を超える金額については、損金不算入としたわけです。
役員退職慰労金=役員最終給与月額×役員在任年数×功績倍率 ですから、
損金算入した役員退職慰労金=1,000千円×10年×3=30,000千円
よって、役員退職給与の損金不算入額=70,000千円−30,000千円=40,000千円
従って、(3)の正解は、40,000,000(円)
次に(4)の「受取配当等の益金不算入額」ですが、他の法人への出資(投資)により法人が配当を受け取った場合、「受取配当金」として法人税の課税の対象となりますが、出資割合に応じて、受け取った配当金の一部または全額が益金不算入となります。
例えば、完全支配関係がある内国法人(普通法人)において、親会社が100%子会社から受け取った配当金は、全額益金不算入になります。また、株式等の保有割合が5%以下の場合、非支配目的株式等として、受取配当等×20%相当額が益金不算入となります。
よって、受取配当等の益金不算入額=1,500千円×20%=300千円
従って、(4)の正解は、300,000(円)
次に(5)の「法人税額から控除される所得税額(注)」ですが、問題文にある「預金の利子について源泉徴収された所得税額15千円・復興特別所得税額315円、受取配当金について源泉徴収された所得税額225千円・復興特別所得税額4,725円」が該当します。
既に源泉徴収されている所得税・復興特別所得税については、法人税を計算するときに控除されるわけですね(ただし、源泉徴収時に所得税・復興特別所得税は経費計上されているため、別表4では一旦所得に加算し、その後税額計算時に控除します)。
従って、15,000円+315円+225,000円+4,725円=245,040円
従って、(5)の正解は、245,040(円)
次に(6)の「欠損金または災害損失金等の当期控除額」ですが、これは「前々期からの繰越欠損金29,000千円」が該当します。青色申告法人は、過去の事業年度で赤字(欠損金)があれば、今期の黒字(所得)と相殺することが出来ます(災害損失金については青色申告法人でなくても繰越可能)。これが欠損金の繰越控除といわれるもので、欠損金の繰越控除の期間は10年間で、各事業年度の所得金額を限度として、損金算入できます。
従って、(6)の正解は、29,000,000(円)
最後に(7)の「所得金額または欠損金額」ですが、これは以下の数式で表せます。
所得金額または欠損金額=当期利益+加算分−減算分+法人税・復興特別法人税額から控除される所得税・復興特別所得税額+欠損金・災害損失金等の当期控除額
従って、
加算分小計=16,500,000+900,000+40,000,000=57,400,000
減算分小計=300,000
(7)所得金額または欠損金額=21,654,960+57,400,000−300,000+245,040+▲29,000,000
=50,000,000円 です。
※計算結果がマイナスの場合は欠損金額、プラスの場合は所得金額となります。
以上により正解は、(1)16,500,000(円) (2)900,000(円) (3)40,000,000(円)
(4)300,000(円) (5)245,040(円) (6)29,000,000(円)
(7)50,000,000(円)
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