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2019年2月17日実技part2

2019年2月17日実技part2

part2 問題文

●設 例●
大手企業に勤めるAさん(55歳)の実家は、住宅地として人気のあるN市にあり、母親Bさん(81歳)が1人で暮らしている。実家は、父親が昭和60年に甲土地を購入し、自宅を建築したものである。父親は10年前に他界したが、遺言書はなかった(課税価格の合計額は遺産に係る基礎控除額を下回っていた)。遺産分割を行わず、実家の土地および建物登記名義は現在も父親のままになっている。甲土地を購入した時の不動産仲介業者は、古くからこの地で商売をしているX社である。

【母親Bさん/弟Cさんの近況等】
Aさんには、弟Cさん(53歳)がおり、Aさんと弟Cさんは、ともに隣県に所有する自宅に妻・子と暮らし、実家に戻る予定はない。Aさんは大手企業に勤務し、生活は安定しているが、弟Cさんの経営する会社は資金繰りがやや心配であるとのことである。
母親Bさんの意思能力はしっかりしているものの、足腰が弱り、1人で生活することに不安を感じている。Aさん・弟Cさんはともに、母親Bさんと同居することができないため、有料老人ホームに入居してもらうことを検討しており、母親Bさんも入居したい意向を持っている。老人ホームの費用は、最低でも月額20万円程度かかる。

【実家の不動産(甲土地および建物)の売却】
実家の売却については、母親Bさんが亡くなるまでは急ぐ必要はないと考えているが、弟Cさんは資金を必要としており、Aさんも何とかしてあげたいと思っている。Aさんが甲土地の実勢価格を知ろうと、X社に相談したところ、6,000万円であれば売却が可能であるとのことであった(土地評価のみで、建物価格はゼロ評価)。
Aさんが甲土地購入時の取得原価を調べようと、実家で購入時の書類(売買契約書、重要事項説明書、領収書等)を探したが、何も見つからなかった。Aさんは、父親から「甲土地は5,000万円で購入した」と何度か聞いた記憶があり、X社にその話をしたところ、X社の保存していた取引台帳には、昭和60年当時甲土地を5,000万円で取引した旨が記載されているとのことだった。

【実家の不動産(甲土地および建物)および母親Bさんの資産状況】
・甲土地(敷地面積200u、登記名義人父親)
・建物(木造2階建て、延床面積120u、昭和60年築、登記名義人父親)
・預貯金1,500万円、年金収入月額約15万円

(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから直接聞いて確認する情報
(2)FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.実家の不動産を売却した場合の甲土地の取得原価はどのように考えればよいですか。
3.現時点において、父親の相続時の遺産分割を行うことはできますか。
4.母親Bさんと弟Cさんのために、実家の不動産をどうするのがよいと思いますか。
5.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

【実家の不動産(甲土地および建物)の概要】

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part2 ポイント解説

1. アドバイスに当たって必要な情報

(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
甲土地購入時の取得原価について、母親Bさんに思い当たる記憶や不動産購入時にローンを組んでいるかの確認が必要(ローンを組んでいれば、登記簿に抵当権の設定と当初借入額が掲載されていることがあるため、取得原価の参考とすることが可能)。
また、甲土地の売却要否や母親Bさんの預貯金の使途について検討していく関係上、弟Cさんが必要とする資金額や時期について確認することが必要。

(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地の物理的状況を、実際に確認することが必要。
特に、本問では自宅は10年前に父親から相続したものであるため、登記簿上は父親名義のままになっているが、売却時には相続したAさん・母親Bさん・弟Cさんの共有名義にしておく必要があることから、必ず確認が必要。
また、甲土地購入時の取得原価について、X社に改めて確認し、可能であれば当該取引台帳も確認することで、概算取得費の適用を避けることが必要。

2. 実家の不動産を売却した場合の甲土地の取得原価

贈与・相続により財産を取得した場合、その取得日・取得費を引き継ぎ、取得費には土地・建物の購入・建築代金等のほか、取得の際に要した登記費用・登録免許税・不動産取得税・仲介手数料等も含む
なお、土地の取得費が不明な場合には、概算取得費として譲渡価額の5%とし、実際の取得費と比較して、有利な方を選択可能

ただし、概算取得費で計算すると譲渡収入の95%が課税対象となってしまうため、購入当時の記録(預金通帳やメモ等、パンフレット、登記簿に記載された借入金額、売主や仲介業者の取引記録)を参考とした金額を取得費として計上することも可能

よって本問の場合、父親が取得した際の取得費は不明のため、譲渡所得を計算する際は概算取得費として300万円を算出(6,000万円×5%)するか、X社の取引台帳から推定される5,000万円を取得費とするかのいずれかとなり、より有利な5,000万円を取得費として計上可能となる。

3. 現時点における父親の相続時の遺産分割

遺言書がなかった場合でも相続は開始していることから、遺産分割協議をしていない状態では、遺産は相続人の共有として相続したことになる。
共有を解消するために遺産分割協議を行うが、遺産分割請求権には時効がないため、遺産分割協議が成立しない限り、相続人はいつでも遺産分割請求権を行使可能
ただし、相続の限定承認や放棄は、相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に実施することが必要であり、遺留分減殺請求権の時効は、権利者が相続の開始を知らない場合は、相続開始から10年、知っている場合は、相続開始および遺留分を侵害している遺贈・贈与があることを知ってから1年である。

よって本問の場合、現時点でも父親の相続時の遺産分割協議を実施することは可能であるが、限定承認・放棄はできず、遺留分減殺請求権は消滅しているため、遺産分割協議が成立しないと、共有状態が継続することになる。

4.実家の不動産の取扱いに関する提案

母親Bさんは老人ホーム入居後の月額費用、弟Cさんは経営する会社の資金繰りと、いずれも資金を必要としていることから、Aさんに問題が無いのであれば、実家の不動産を売却することを提案する。
この場合、母親Bさんは、自身の持分の売却において居住用財産の3,000万円特別控除を受けられるが、Aさんと弟Cさんは実家に住んでいるわけではないため、特別控除の対象外となる。

ただし、母親Bさんが亡くなるまでは実家を残しておきたいということであれば、母親Bさんがリバース・モーゲージにより持分の買い取り資金を確保し、Aさんと弟さんから買い取ることを提案する。

リバースモーゲージは、すでに保有している住宅を担保に、一定額の融資を受けるローンであり、返済はせずに借入者の死亡時に住宅を処分して返済資金に充当する(配偶者が遺された場合はそのまま居住可能で、配偶者死亡時に返済)。
リバースモーゲージを利用すると、自宅はあっても金融資産が少ない高齢者が、自宅に住み続けながら自由な資金を借り入れられるため、遺産を残す必要が無い場合に有効。
ただし、リバースモーゲージは年齢制限(申し込み時に60歳〜80歳までが平均的)があり、さらに、想定よりも長生きすることで融資額では不足するリスクがある。

本問の場合、Aさんは公的年金を収入とした生活を送っており、自己資金も1,500万円あることから、融資金は持分の買い取りと老人ホームの月額費用にのみに充当されるため、長生きリスクは公的年金と自己資金でカバーできると思われる。

5. 関与すべき専門職業家

甲土地の売却による譲渡所得税額等の具体的な税金の質問等に関しては税理士、甲土地の譲渡の際の土地・建物の所有権移転登記は、司法書士、測量結果に基づいた適正な不動産価格の算定は、不動産鑑定士が適当。
なお、土地売却における宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、不動産業者やデベロッパーが適当。

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