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2019年2月17日実技part1

2019年2月17日実技part1

part1 問題文

●設 例●
地方都市M市に所在する株式会社X社(非上場会社・金属加工機械製造業)は、代表取締役社長Aさん(70歳)が40年前に設立した会社である。X社の技術力は高く評価されており、業績は順調に推移してきた。Aさんは、2年前に胃がんの手術を受けている。現時点では、小康状態を保っているが、いつ何があるかわからないと感じており、自身の相続、とりわけ事業承継について早期に道筋をつけたいと考えている。

【Aさんの意向】
Aさんは、2年前、大手メーカーに勤務していた長男Cさん(45歳)を取締役(技術部長)としてX社に入社させた。長男Cさんの仕事ぶりは、取引先からの評判がよく、部下の信頼も得ている。先日、Aさんが長男Cさんに自身の病状、X社の事業承継問題、実家での同居などを改めて相談したところ、長男Cさんから「実家での同居について、妻や息子たちも賛成している。今後、X社を承継する方法や時期など、詳細を詰めていこう」との返事をもらった。Aさんは、X社を承継する方法として、事業承継税制の特例の活用を考えている。

【長男Cさんの意向】
X社を承継し、引き続き、堅調な業績を維持したいと思っている。父親は、相続税等の負担を考えて事業承継税制の特例の活用を検討しており、自分もその方法がよいと思っている。今後の事業承継のタイミング、具体的なスケジュール等を理解しておきたい。他方、自分の息子にX社を引き継がせることまでは考えておらず、将来的にいずれかのタイミングでM&A等によるX社売却の可能性を模索している。その場合を前提としたとき、事業承継税制の特例を活用することがどのような影響を及ぼすのか、理解しておきたいと思っている。

【Aさんの家族構成】
妻Bさん(68歳) :専業主婦(X社の役員ではない)。Aさんと自宅で同居している。
長男Cさん(45歳):X社取締役。妻と子2人で戸建て住宅(持家)に住んでいる。
長女Dさん(40歳):地方公務員。夫と子2人で賃貸マンションに住んでいる。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
現預金 :8,000万円
上場株式:2,400万円
X社株式:2億2,400万円
X社本社・工場土地(1,000u):1億2,000万円(注)
自宅土地(500u):7,000万円
自宅建物:3,000万円

合計:5億4,800万円

※Aさんの相続に係る相続税額は、約1億5,000万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。
(注):X社は土地の無償返還に関する届出書をAさんと連名で税務署に提出し、Aさんに通常の地代を支払っている。

【X社の概要】
資本金 :2,000万円
会社規模:大会社
従業員数:70人
売上高 :20億円
経常利益:5,000万円
純資産 :5億円
株主構成(発行済株式総数4万株):Aさん80%、妻Bさん20%
株式の相続税評価額:類似業種比準価額7,000円/株、純資産価額1万2,500円/株

【親族関係図】

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part1 ポイント解説

1.納税資金の不足、相続税の軽減対策

(1) 生命保険・金庫株の活用
(2) 役員退職金支払い(法人税の低減、退職所得控除による所得税低減効果も有り)
(3) 自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
(4) 小規模宅地の特例の活用
(5) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度の活用

2. 遺産分割対策・事業承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用
(3) 相続時精算課税制度・直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度の活用
(4) 孫への教育資金贈与の非課税措置の検討
(5) 金庫株を用いた長男Cから長女Dへの代償分割

3. 事業承継税制の特例の活用とタイミング・スケジュール

X社株式については、非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用により、税負担なく移転することが可能。
平成30年度税制改正により、適用対象の株式数の上限が撤廃され全株式が適用対象となっており、また、納税猶予割合も100%に拡大したため、承継時の税負担はゼロになっている。

非上場株式等についての贈与税の納税猶予・免除を受けるには、会社・後継者(経営承継受贈者)それぞれの適用要件を満たした上で2023年3月31日までに特例承継計画を都道府県知事に提出して確認を受け、経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定を受けることが必要(株式の贈与は2027年12月31日までに実施)。

4. 将来的なM&A等による会社売却の検討

事業承継税制の特例を活用後、M&A等による納税猶予された株式の譲渡や合併による会社消滅、会社の解散が発生した場合、特例適用後5年以内は一部譲渡でも猶予打ち切り、5年経過後は譲渡分のみ猶予打ち切りとなり、猶予税額の全部または一部と利子税の納付が必要となる。ただし、経営環境が非常に悪化している場合には、譲渡・合併・解散時の相続税評価額で納付金額が再計算され、当初の納税猶予額との差額は猶予される。

本問では後継者である長男Cさんは、将来のX社売却を検討していることから、役員給与や役員退職金の増額を社内規定で定めることで、将来発生する猶予税額の納付に備えておくことが必要である。

5. 相続人間の平等な相続方法

長男CさんがX社を承継することにより、長男Cさんの相続分が多くなる可能性が高いため、長女Dさんを受取人とした生命保険や、X社本社建物の賃料を原資とした代償分割(相続後に分割払い)による、ある程度均等な相続も必要と思われる。
また、Aさんの妻の相続発生時(二次相続時)に、長女Dにより多くの遺産を相続させることも検討可能(遺産分割協議の中でこれらを記した公正証書遺言や贈与契約書の内容を検討することが望ましい)。

さらに、教育資金の非課税特例や、相続時精算課税制度・直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度の活用により、積極的な長女Dへの生前贈与も検討できる。

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・遺産分割対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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