2019年2月16日実技part2
2019年2月16日実技part2
part2 問題文
●設 例●
Aさん(62歳)は、大都市圏近郊S市内の自宅で妻(60歳)および母親(84歳)の3人で暮らしている。Aさんは、大手メーカーに勤務しているが、休みを利用して母親と共有する甲土地(地目:畑、地積:1,760u)で母親の野菜作りを手伝っている。1人息子の長男(35歳)は大学病院に勤務し、病院近くの賃貸マンションに妻と子の3人で暮らしている。先月、
S市を中心に建売事業を行っている不動産業者X社の営業担当者から、Aさんに対して、以下のような提案があった。
【X社の提案およびAさんとの交渉経緯】
X社の営業担当者から、「弊社は甲土地に隣接する乙土地(地元のBさん所有、地目:山林、地積:3,360u)を購入して、宅地開発を行う予定ですが、できれば甲土地を組み入れて一緒に開発したいと思っております。甲土地を売っていただけませんか」との提案を受けた。Aさんは、甲土地を長男に残すことにしているため、その提案を断ったところ、先日、営業担当者が再度訪ねてきて、「売却のご意思がないということであれば、弊社が乙土地を取得後、価格が等価になるように甲土地のa部分(660u)と乙土地のb部分(600u)を交換して、甲2土地と乙2土地にすることはできませんか」と言って、図面を提示した。Aさんは、この提案にどのように対応すればよいか、わからないでいる。
【Aさんが考える甲土地の利用方法】
A家は、代々の農家であるが、5年前に父親が亡くなってからは、本格的な農業は営んでいない。甲土地は、父親の存命中、生産緑地の指定を受けていたが、父親の死亡後、解除した。Aさんと長男は、将来の甲土地でのクリニック開業を話し合っており、併せて二世帯住宅の建築を検討している。Aさんは相当額の金融資産を保有しており、資金面の不安はない。
【甲土地・乙土地およびその周辺の概要】
乙土地の現況は山林で、雑木が生い茂っている。甲・乙土地ともに地勢は平坦で道路と等高である。周囲は新たに開発された住宅(1区画140u前後)が多い新興住宅地であり、甲・乙土地周辺だけが取り残されている。甲・乙土地はいずれも代々からの所有地であり、境界トラブルはない。周辺地域は、都市計画法上の用途制限もあり、マンションはなじまないため、甲・乙土地のようなまとまった土地は130〜140u程度の区画に細分化し、一般住宅として利用されている。
(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報(確認)が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから何点か具体的に確認したいことがありますが、どのようなことですか。
(2)FPであるあなたが確認しておくべきことは、どのようなことですか。
2.
(1)a部分とb部分の交換について、どのように思いますか。
(2)X社が整形の乙土地を不整形の乙2土地にしてまで、交換を望むのはなぜですか。
3.
(1)土地の交換にあたり、固定資産の交換の特例の適用を受けることはできますか。
(2)上記特例の適用を受けるために、Aさんが留意すべき事項にはどのようなものがありますか。
4.本事案では、交換契約/分筆登記/所有権移転登記/税務上の特例の適用/土地の評価など、その業務は多岐に渡ります。このような業務について、どのような専門職業家に依頼しますか。
【甲土地・乙土地の概要(現在)】
(第1種低層住居専用地域 建蔽率50% 容積率100%)
【甲2土地・乙2土地の概要(交換後)】
(第1種低層住居専用地域 建蔽率50% 容積率100%)
【乙土地単独での開発図】
<S市の開発指導要綱による規制>
(1)区域内道路は幅員6m以上で通り抜けとする。
(2)1区画の最低区画は130uとする。
(3)開発時には、42条2項道路の反対側より5mのセットバックが必要である。
part2 ポイント解説
1. アドバイスに当たって必要な情報
(1) Aさんから具体的に確認したいこと
まず甲土地はAさんの母親とAさんが共有しており、母親は甲土地で野菜作りをしていることから、X社の提案に対する母親の意見がどのようなものであるかや、甲土地のAさんと母親の持分割合を確認することが必要。
また、Aさんと長男は、将来の甲土地でのクリニック開業を検討しているが、クリニック用の土地形質として、現状の甲土地と交換後の甲2土地のどちらでも問題ないのか、もしくはどちらがより良いのかの確認が必要。
加えて、乙土地の現所有者であるBさんと、X社への乙土地の売却意思の有無や交渉状況について、情報交換してもらい、X社の提案の具体性を確認することが必要。
(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地の物理的状況を、実際に確認することが必要。
また、用途地域・地方自治体の都市計画等を確認し、今後の開発予定・環境変化を把握することが必要である。
本問の場合、X社により乙土地の開発が行われることで、それなりの住宅供給となり今後の環境変化に影響が大きいと思われるため、周辺地域の開発状況の情報収集が必要。
2.a部分とb部分の交換案の検討
(1)a部分とb部分の交換案の是非
交換によってAさんが所有する甲土地は60u狭くなるものの、広い方の市道(幅員6m)に接する間口はより広くなり、土地形状も細長い長方形からより活用しやすい正方形に近い形になるため、土地の評価額はむしろ高くなる可能性もある。
また、隣接する乙2土地には交換によりより多くの住宅開発が実施されるため、将来クリニックを開業予定のAさん・長男にとっても、顧客となりうる周辺住民の増加が期待できることから、本問の交換案は十分に検討する価値があるものと思われる。
(2)X社が整形地を不整形地にしてまで交換を希望する理由
乙土地単独で住宅開発を実施した場合、区域内道路はUの字型となり、奥側の住宅は幅員6m市道へのアクセスが不便なため、販売状況に影響を与える可能性がある。そこで、a部分とb部分を交換することにより、区域内道路を幅員3m市道へもアクセスできるように整備し、どの区画の住宅も市道へアクセスしやすくすることで、確実に全ての区画の販売を完了しようとしているものと思われる。
3. 固定資産の交換特例の検討
(1)固定資産の交換の特例の適用可否
固定資産の交換の特例を受ける場合、交換により取得した資産は、交換により譲渡した資産の譲渡直前と同じ用途で使用することが必要であるが、同一用途かどうかの区分は、登記簿上の地目ではなくその現況により判定するため、a部分やb部分の地目が田畑や山林であっても、いつでも宅地として使用可能な状態であれば、宅地同士の交換として特例適用の対象となる。
その他、交換する譲渡資産と取得資産の差額が、高い方の資産の時価の20%以内であることや、譲渡資産は1年以上保有していたものであること、取得資産は交換の相手が1年以上保有し、かつ交換のために取得したものでないこと、があるが、X社が交換のためにb部分を取得したとみなされるリスクがあるときは、現所有者のBさんと交換して特例の適用を受け、BさんがX社に乙2土地を売却することも考えられる(交換後すぐにBさんが売却するとBさんは交換特例を受けられないが、Aさんは交換取得したb部分を所有し続けるならば、本特例の適用を受けることが可能)。
(2)固定資産の交換の特例を受けるための留意点
各土地の一部分同士の交換であるため、a部分とb部分をそれぞれ分筆登記し、交換対象とする部分を明確にしておくことが必要である。
なお、甲土地はAさんと母親の共有であるため、分筆された土地は各共有持分者による共有のままとなり、各共有持分者が交換特例を受ける手続きが必要。
4. 関与すべき専門職業家
土地の交換における契約に関しては弁護士、甲土地交換時の分筆登記については土地家屋調査士、土地の所有権移転登記等については司法書士、固定資産の交換の特例の適用等具体的な税金の質問等に関しては税理士、測量結果に基づいた適正な不動産価格の算定は、不動産鑑定士が適当。
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