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2019年2月16日実技part1

2019年2月16日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(70歳)は、金属加工業を営む株式会社X社(非上場会社)の代表取締役社長である。義父が創業したX社は、「高品質」「短納期」「適正価格」を追求し、長年にわたり蓄積してきた高い技術力を背景に、業績は堅調に推移している。また、工場は隣県に所在するY市に集約し、効率的な生産体制を構築している。

【X社の事業承継に関して】
Aさん夫妻には、子がいないことから、甥Eさん(38歳)を後継者候補として考えており、経営者としての資質を見極めるために、工場長を任せている。甥Eさんは、真面目な働きぶりで周囲からの信頼も得ているようであり、妻Bさんや義姉Fさんは、甥Eさんが後継者になることに賛同している。一方、Aさんとしては、甥Eさんのマネジメント能力に一抹の不安を感じるため、現時点ではM&AによるX社売却の選択肢も頭の片隅に置いている。
Aさんは、先日、メインバンクの支店長の訪問を受け、昨年創設された事業承継税制の特例に関する説明を聞いた。Aさんは、資力に乏しい甥Eさんに対する自社株式の承継に活用できるのではないかと感じたが、内容が複雑でよく理解できていない。

【Aさん自身の資産承継に関して】
妻Bさんおよび義姉Fさんは、創業者である父親から相応の財産を承継しているものの、残される妻Bさんの生活の安定を第一に、義姉Fさんにも十分に配慮したいと思っている。一方、Aさんの弟Cさんおよび妹Dさんに財産を承継することは不要であると考えている。
なお、法定相続分どおりに相続した場合の相続税の総額は、一次相続では約1億3,840万円(役員退職金支給前、配偶者の税額軽減および小規模宅地等の評価減適用前)と見込まれている。

【X社の概要】
資本金 :1,000万円
会社規模:大会社
従業員数:75人
売上高 :20億円
経常利益:7,000万円
純資産 :6億円
株主構成(発行済株式総数2万株):Aさん50%、妻Bさん35%、義姉Fさん15%
株式の相続税評価額:類似業種比準価額1万円/株、純資産価額3万円/株

【X社での役職等】
Aさん(70歳)  : 代表取締役社長
妻Bさん(68歳) : 取締役(経理担当)
甥Eさん(38歳) : 工場長(X社の役員ではない)
義姉Fさん(75歳): 現在はX社の経営等には関与していない
がぞうは考慮していない)
自宅土地:7,000万円(250u)
自宅建物:2,000万円
X社株式:1億円(X社株式の50%部分)
X社本社土地:1億5,000万円(350u、無償返還方式・通常の地代にて賃貸)

合計 4億8,000万円

【親族関係図】

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part1 ポイント解説

1. 相続税の軽減対策

(1) 生命保険の活用
(2) 金庫株の活用
(3) 役員退職金支払い(法人税の低減、退職所得控除による所得税低減効果も有り)
(4) 小規模宅地の特例の活用
(5) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度の活用

2. 遺産分割対策・事業承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用
(3) 金庫株を用いた甥Eから弟C・妹Dへの代償分割
(4) 義姉Fへの生前贈与や死因贈与・遺贈の検討

3. 事業承継税制の特例に関する説明

X社株式については、非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予制度の活用により、税負担なく移転することが可能。
平成30年度税制改正により、適用対象の株式数の上限が撤廃され全株式が適用対象となっており、また、納税猶予割合も100%に拡大したため、承継時の税負担はゼロになっている。
また、親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も適用対象になったため、本問のように、先代経営者とその配偶者から、後継者である甥(代表権を有し、議決権割合の10%以上かつ上位3位までの同族関係者)に贈与する場合も適用可能となっている。

さらに、5年間で平均8割以上の雇用を維持する要件を未達成の場合でも、納税猶予を継続可能になった(経営悪化等が理由の場合、認定支援機関の指導助言が必要)。

本問の場合、甥Eさんを後継者と決定する場合には、本特例や金庫株等を活用して、できるだけ甥EさんにX社株式を集約させることが必要となる。

4. M&A(株式譲渡)と親族内承継の選択

親族内承継では、その親族が後継者として目されてきた場合には、後継者として備えるべき心構えや覚悟が醸成されやすい。また親族が後継者であれば従業員や取引先も受け入れやすく、引き継ぎは比較的スムーズに運べるメリットがある。
ただし、後継者としての資質や能力が十分に備わっているかは承継のタイミングにも左右されるものであり、後継者として育成するための十分な時間的余裕があることが望ましい。

株式譲渡によるM&Aの場合、親族内承継と異なり、株式譲渡する理由や買い手の資質等について、従業員や取引先に理解を得ることが必要となる。
オーナー経営者(個人)にとっては、株式売却による創業者利益を享受できるメリットが大きいが、買い手は決算書上では認識できない簿外債務も含めたすべての財産を承継するため、専門家による現時点での会社や事業の価値の精査(デューデリジェンス)や適切な売却先の選定など、必要な事務負担も多くなる。

甥Eさんは38歳と、年齢的には後継者としてはちょうど良い頃合いだが、Aさんとしては甥Eさんのマネジメント能力に一抹の不安を感じているため、現時点では注意深く検討していくことが必要と思われる。

5.義姉Fに配慮しつつ弟C・妹Dが納得する遺産分割対策

義理の姉Fに対しては、まずFが所有するX社株式15%を、X社が金庫株で買い取ることで、Fの老後生活の安定とX社株式の集約化が可能となる。
Aさん自身の資産承継に関しては、Fさん自身の希望も確認が必要と思われるが、もし配分する場合には、妻Bさんに自宅とX社本社土地を相続させることで生活の安定を図りつつ、Fさんには預貯金等を中心に配分することが望ましいと思われる。
ただし納税資金の問題もあるため、AさんとBさんへの役員退職金の支給により自社株式評価の引き下げ効果を得つつ、預貯金等に余裕を持たせて置くことが必要と思われる。

弟C・妹Dに対しては、Aさんは財産を承継することは不要としているが、弟Cさんに関してはその子である甥Eさんを後継者とすることで納得してもらうことが可能と思われるものの、妹Dさんに対しては事前に十分な説明が必要となる。
弟Cさんについても、仮に甥Eさんに事業承継せずにM&Aとする場合には、相続分を主張する可能性があるため、その場合の分割案についても十分な検討が必要。

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)の4つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・事業承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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