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2019年10月5日実技part1

2019年10月5日実技part1

part1 問題文

●設 例●
株式会社X社(非上場会社・製造業)は、Aさん(80歳)が40年前に設立した会社である。X社は、複数の大手メーカーと取引をしており、業績は堅調に推移している。X社の余剰資金は7億円以上あり、経営は安定している。
Aさんは、2012年に社長職を二男Dさん(55歳)に譲り、現在は相談役としてX社に在籍している。Aさんが100%所有していたX社株式については、2013年に事業承継税制(一般措置)を活用して、8万株を二男Dさんに移転している。残りの4万株は、現在もAさんが所有している。Aさんは、現状のままで自身の相続が開始した場合、贈与したX社株式および所有しているX社株式の取扱いについて、整理しておきたいと考えている。

【X社の事業承継に関して】
本来の後継者は、10年前に他界した長男Cさん(当時X社の専務取締役)であった。Aさんは、長男Cさんの急逝に伴い、他社で勤務していた二男DさんをX社に入社させ、7年前に社長職を引き継いでいる。
二男Dさんは真面目な性格で事務能力は高いものの、経営者には向いておらず、二男Dさんもそのことを自覚している。そこで、Aさんと二男Dさんは、長男Cさんの子である孫Fさん(32歳)にX社を承継させることを検討している。孫Fさんは、大学卒業後、大手メーカーY社を経て、3年前にX社に入社した。現在は、課長職として製造ラインのリーダーを任せている。孫Fさんの業務スキル・統率力は非常に高く、社員からの信頼が厚い。
Aさんと二男Dさんが孫FさんにX社の承継を打診したところ、孫Fさんは「親父(長男Cさん)の思いを引き継ぎ、ぜひ挑戦したい」と快諾してくれた。

【X社株式の移転方法】
Aさんと二男Dさんは、孫Fさんへの移転方法として事業承継税制の特例措置を活用できるのか、特例措置を活用できる場合、2013年に納税猶予されている贈与税を納付しなければいけないのか等、内容が整理できず、苦慮している。また、Aさんは二男Dさんに取締役として孫Fさんをサポートしてもらいたいと望んでいるが、事業承継税制の特例措置を活用してX社株式を移転した場合、そのことが可能であるのか理解できないでいる。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
現預金 :1億5,000万円
X社株式:3億6,000万円
自宅土地:9,000万円(450u)
自宅建物:3,000万円
X社本社土地:1億円(500u、無償返還方式・通常の地代にて賃貸)
賃貸アパート:5,000万円(土地(200u)4,000万円、建物1,000万円)

合計:7億8,000万円

※Aさんの相続に係る相続税額(7億8,000万円に基づいて計算)は、約2億5,000万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

【X社の概要】
資本金 :6,000万円
会社規模:大会社
従業員数:100人
売上高 :30億円
経常利益:1億2,000万円
純資産 :10億円
株主構成(発行済株式総数12万株):Aさん4万株、二男Dさん8万株
株式の相続税評価額:類似業種比準価額9,000円/株、純資産価額1万2,000円/株

【親族関係図】

※妻Bさん・Eさん・Gさんは、現在および将来においても、X社の経営には関与しない。
※孫Hさんは、公立中学校の教員をしており、X社の経営に関与する予定はない。

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part1 ポイント解説

1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策

(1) 生命保険・金庫株の活用
(2) 役員退職金支払い(法人税の低減、退職所得控除による所得税低減効果も有り)
(3) 自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
(4) 小規模宅地の特例の活用
(5) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度の活用

2. 遺産分割対策・事業承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用
(3) 相続時精算課税制度の活用
(4) 孫への結婚・子育て資金贈与の非課税特例の検討
(5) 金庫株を用いた孫Fから二男Dへの代償分割

3. 事業承継税制の特例の活用

X社株式については、非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度の活用により、税負担なく移転することが可能。
平成30年度税制改正により、適用対象の株式数の上限が撤廃され全株式が適用対象となっており、また、納税猶予割合も100%に拡大したため、承継時の税負担はゼロになっている。
非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度は、事業承継税制として以前から運用されていたが、平成30年度の税制改正により、従来からの一般措置と、10年間の時限措置とした特例措置を選択可能となっている。
事業承継税制の特例措置を受けるには、会社・後継者(経営承継受贈者)それぞれの適用要件を満たした上で2018年4月1日から2023年3月31日までに特例承継計画を都道府県知事に提出して確認を受け、経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定を受けることが必要(株式の贈与は2018年1月1日から2027年12月31日までに実施)。
従って、従来からの一般措置の適用を受けている場合、上記の要件を満たしていないため、一般措置から特例措置への切り替えはできない。ただし、一般措置を受けている経営承継受贈者が、経営贈与承継期間(贈与税の申告期限の翌日から5年間)を経過後に再贈与する場合には、一般・特例のいずれも選択して適用可能となる。
また、親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継も適用対象になり、先代経営者は特例適用後に代表権がなければ役員として留任可能である。

本問の場合、2013年に事業承継税制の一般措置を適用してAさんから二男DさんにX社株式を贈与しており、二男Dさんが猶予された贈与税について特例措置への切り替えはできないものの、Aさんから孫Fさんへの贈与や、二男Dさんから孫Fさんへの再贈与については、特例措置の適用が可能であり、二男Dさんが代表権のない取締役として残留することも可能。

4.事業承継を考慮した株主構成

安定した企業経営の継続のためには、贈与税の納税猶予特例・金庫株・後継者の役員給与の増額等による株式譲渡といった対策を組み合わせ、できるだけ後継者に株式を集約させることが望ましい。

また、孫Fさんに妻Bさんに自宅とX社本社土地を相続させることで生活の安定を図りつつ、二男Dさんには預貯金等を中心に配分することが望ましいと思われる。
ただし納税資金の問題もあるため、Aさんと二男Dさんへの役員退職金の支給により自社株式評価の引き下げ効果を得つつ、預貯金等に余裕を持たせて置くことが必要と思われる。

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、法令の遵守(コンプライアンスの徹底)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)、能力の啓発の6つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・事業承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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