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2019年10月5日実技part2

2019年10月5日実技part2

part2 問題文

●設 例●
Aさん(78歳)は、首都圏にあるM市内に所有する戸建て住宅(敷地200u、敷地の相続税評価額2,000万円、建物の固定資産税評価額500万円)に妻Bさん(74歳)と2人で暮らしている。Aさん夫妻には2人の子(長男51歳・長女48歳)がいるが、それぞれの家族と別の都市に所有する持家に暮らしており、M市に戻る予定はないようである。

【甲土地の概要】
Aさんは、15年前に母親の相続により同市内M駅前商店街の甲土地を取得している。Aさんは、X社(コンビニ店舗運営会社)との間で事業用定期借地権の契約を締結し、甲土地をX社に賃貸している。契約の内容は、以下のとおりである。
・甲土地について、2005年6月〜2020年5月末までの15年間、X社の店舗所有目的で賃貸する。月額地代は、現在14万円。
・X社は、賃貸借期間満了後、建物を解体のうえ、更地で返還する。
・契約時に契約終了時の建物解体・更地化費用相当額として、250万円が敷金として差し入れられており、Aさんが他の預金と別口座の定期預金としている。

【X社の提案】
2019年4月、X社の担当者から「甲土地は立地が良く、商圏に恵まれているため、店舗の売上は堅調に推移しています。弊社としては甲土地でこのままコンビニ経営を継続したいと思っております。Aさんには、弊社提案のI案もしくはII案を検討してほしい」との申入れがあった。

(I案)
・建物はそのままで、契約を8年間延長する。月額地代は14万円から16万円に増額。
・敷金250万円はAさんに預けたままとし、8年後に建物を解体のうえ、更地で返還する。

(II案)
・Aさんに建物を簿価相当額の500万円で買い取ってもらい、建物について、新たに8年間の定期借家契約を締結する。毎月の賃料は23万円とする。
・Aさんには、建物の買取金額とその他費用を加えた資金576万円を保証金として差し入れる。保証金の毎月の償還(6万円)は、賃料から差し引く(償還後の手取額は17万円)。
・事業用定期借地権に係る敷金250万円を建物解体・更地化費用相当額として、改めて定期借家契約に係る保証金として差し入れる。保証金は契約終了時に全額償却する(返還不要)。

甲土地周辺の土地活用に精通している地元の不動産会社社長からは「14年前よりも建築費が3割ほど高くなっている。仮に、新たに賃貸アパート等を建築しても、高い収益性は見込めない。I案とII案のどちらかを選択するほうが望ましい」とアドバイスされた。
Aさんは、預貯金を5,000万円程度保有し、毎月の年金収入は企業年金を含めると夫婦2人で月額40万円ほどあり、経常的な生活資金は十分に確保している。Aさんは、自身の年齢のことを考えると、相続対策を重視した案を選択したいと思っている。

(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから直接聞いて確認する情報
(2)FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.事業用定期借地権方式の特徴を教えてください。また、事業用定期借地権の期間を延長することはできますか。
3.Aさんに対して、I案とII案のどちらを勧めますか。
4.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

【甲土地の概要】

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part2 ポイント解説

1. アドバイスに当たって必要な情報

(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
X社の提案内容に沿う場合、8年後はAさんは80歳代後半となり、健康上のリスクが顕在化してくる可能性が高いが、甲土地の活用を妻Bさんや2人の子に引き継ぐかどうかや、母親から相続した甲土地に何らかの思いれやしがらみ等があるのか等、Aさんに対して相続に向けた意向の確認が必要。
また、Aさんは経常的な生活資金は十分に確保しているが、将来的な相続も見据えて、甲土地の活用に関する妻Bさんや2人の子の意向についても確認しておくことが必要。

(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地・建物の物理的状況を、実際に確認することが必要。
また、X社が安定してコンビニ事業を継続していくことが可能か、用途地域・地方自治体の都市計画等を確認し、今後の開発予定・環境変化を把握することが必要である。
さらに、建物解体・更地化費用相当額として差し入れられている敷金250万円について、現状の相場から十分な額であるか、地元の不動産会社社長等に確認することも必要である。

2. 事業用定期借地権方式の特徴と延長可否

事業用定期借地権等(事業用定期借地権、事業用借地権) は、存続期間10年以上50年未満で用途は事業用限定、期間満了で借地関係は終了するため、原則として借地人は建物を取り壊し、更地にして返還する。
10〜30年:事業用借地権、30〜50年:事業用定期借地権

メリットとしては、大きな設備投資を必要とせず、長期間安定的な収入が確保でき、契約満了時には更地で返還されること。

デメリットとしては、利用用途が「事業用」に限られるため、汎用性が少ないことと、一般に地代収入は他の方式による収益よりも低いという点がある。

なお、事業好調等により、引き続きその場所での事業を継続するために、当初の設定期間を超えて事業用定期借地契約を継続したい場合には、当事者間の合意により、事業用定期借地権等は、最長50年未満までの法定期間内であれば、存続期間変更(延長)が可能である。

3. I案とII案のどちらを勧めるか

I案の場合、8年間の総収入は、月額地代16万円×12月×8年=1,536万円となる。敷金250万円は全額返還を要するものであるため、課税対象外であり、8年後の建物の解体費用も借地人であるX社が負担するため、預かっていた敷金250万円を返還するだけで契約満了となる。
ただし、土地は自用地価額から定期借地権価額を控除した金額で評価されるため、相続税負担の軽減は期待できない(定期借地権の残存期間に応じて減額割合が逓減するため、残存期間が5年超10年以下の場合10%減となると思われる。)。

これに対し、II案の場合、8年間の総収入は、(月額地代23万円−保証金返還6万円)×12月×8年=1,632万円となる。敷金250万円は契約終了時に全額償却により返還不要であることから、課税対象であり、8年後の建物の解体費用は借地権者であるAさんが負担するため、Aさんは敷金分への課税負担と、建物の解体費用の上昇リスクを負うことになる。
また、甲土地は貸家建付地として借地権と借家権分が減額評価されるため、貸家建付地の評価額=自用地評価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)となる。

両案の収入面の差額は96万円であるが、I案は甲土地の相続税評価額が1割程度の減額評価にとどまるのに対し、II案は貸家建付地として2割程度の減額評価になると思われるため、相続対策としてもII案の方が効果が高い。
ただし、敷金分への課税負担と、建物の解体費用の上昇リスクを負うことを考慮すると、経常的な生活資金は十分に確保しているAさんにとって、どちらが望ましいかは判断が難しいと思われるため、税理士を交えて具体的な金額を算出しながら顧客の判断も確認すべきと思われる。

4. 関与すべき専門職業家

地代や敷金の課税上の取り扱い等の、不動産の取引に関する課税上の取扱いに関する具体的な税務相談については税理士が適当。
また、事業用定期地権の延長や契約等における宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、不動産業者やデベロッパーが適当。
なお、将来的な甲土地の相続や売却における、土地の正確な測量と境界の明示については土地家屋調査士、測量結果に基づく適正な不動産価格の算定は、不動産鑑定士土地の所有権移転登記等については司法書士が適当。

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