問65 2020年1月応用
問65 問題文
X社株式の評価額を引き下げる方策やX社本社建物の敷地の取扱いに関する以下の文章IおよびIIの下線部(1)〜(3)のうち、最も不適切なものをそれぞれ1つ選び、その適切な内容について簡潔に説明しなさい。
〈X社株式の評価額を引き下げる方策〉
I 類似業種比準価額については、配当を比準要素の1つとしているため、配当を低く抑えることで当該価額を引き下げることができる。また、X社が、(1)記念配当や特別配当などの非経常的な配当をした場合にも、類似業種比準価額を引き下げる効果が期待できる。
純資産価額については、課税時期においてX社が有する資産を相続税評価額により評価して算出するため、相続税評価額が時価よりも低い資産を購入することにより引き下げる効果が期待できる。ただし、(2)純資産価額の計算上、課税時期前5年以内に取得等した土地や建物については、原則として通常の取引価額で評価することになる。
また、Aさんの勇退時、]社の内部留保を原資として、(3)Aさんに適正な役員退職金を支払うことで、X社の利益および純資産の額が引き下がり、類似業種比準価額や純資産価額を引き下げる効果が期待できる。
〈X社本社建物の敷地の取扱い〉
II 仮に、Aさんが現時点(2020年1月26日)において死亡して相続が開始した場合、(1)相続税の課税価格の計算上、Aさんが所有しているX社本社建物の敷地の評価額は、自用地評価額となる。
また、Aさんの相続により長男Cさんが当該敷地を取得し、相続税の申告期限まで保有する場合、(2)当該敷地は、特定同族会社事業用宅地等として「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の適用を受けることができる。
なお、相続により取得した土地が特定同族会社事業用宅地等に該当し、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の適用を受けた場合、(3)相続税の課税価格の計算上、400uを限度面積として評価額の80%を減額することができる。
問65 解答・解説
非上場株式・土地の相続税評価に関する問題です。
〈X社株式の評価額を引き下げる方策〉
I
(1)は適切。記念配当や特別配当は、類似業種比準価額の比準要素の計算に含まれないため、配当により会社の純資産が減少しても、比準要素の配当金額は変わりません。よって、記念配当や特別配当の実施・増額は、評価額を引き下げる効果があります。
(2)は、不適切。純資産価額を計算する場合、課税時期開始前3年以内に取得・新築した土地等家屋等は、課税時期における通常の取引価額相当額で評価します(通常は路線価や固定資産税評価額で評価)。
(3)は、適切。役員勇退時に生前退職金を支給した場合、会社の利益と純資産が減少しますから、類似業種比準価額と純資産価額の引き下げ効果があります(死亡退職金の場合は、純資産価額のみに引き下げ効果あり)。
〈X社本社建物の敷地の取扱い〉
II
(1)は、適切。借地権が設定されている土地で、「土地の無償返還に関する届出書」が税務署長に提出されている場合、その土地の借地権の価額は、評価せず0円とします。
借地権を設定していても、借りている土地を無償で返還する(借地権の買取なし)ことになるため、土地の使用権は経済的価値が極めて低いと考えられ、相続税評価上はゼロとなるためです。
ただし、借地権の評価が0円とはいえ、実際に土地が使用されていれば、借地人への法的保護も発生しますし、地主にとっては賃貸借契約により土地利用が制約されるため、貸宅地について「土地の無償返還に関する届出書」が提出されている場合は、借地権割合を20%として、その土地の相続税評価額を算出します。
しかしながら、「土地の無償返還に関する届出書」が提出されていても、対象となった土地が使用貸借により利用されている場合には、自用地として評価されます。
本問の場合、届出書が提出されていても地代はいっさい収受していないため、自用地評価となります。
(2)は、不適切。特定同族会社事業用宅地等として小規模宅地の特例を受けるには、被相続人・親族・特殊関係人で50%超保有する法人の事業用(貸付事業を除く)の宅地であることと、相続や遺贈で宅地を取得した者が、被相続人の親族で、かつ相続税の申告期限までその法人の役員であり、その宅地を申告期限まで保有していることが必要です。
ただし、対象となった土地が使用貸借により利用されている場合には、特定同族会社事業用宅地等としての小規模宅地の特例の適用対象外です。
(3)は、適切。小規模宅地の特例では、特定同族会社事業用宅地は400uを上限に、80%減額となります(取得者は法人の役員であり、宅地保有継続が条件)。
なお、特定同族会社事業用宅地とは、発行済株式総数または出資金の50%超を親族が保有するといった、特定の同族会社の事業(不動産貸付業、駐車場業等を除く)用の宅地のことです(一族経営の中小零細企業の相続税負担軽減が狙い)。
以上により正解は、
I :(2)課税時期前3年以内に取得等した土地や建物については、原則として通常の取引価額で評価することになる。
II:(2)当該敷地は、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の適用を受けることができない。
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