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2020年2月8日実技part1

2020年2月8日実技part1

part1 問題文

●設 例●
首都圏近郊のK市に所在する株式会社X社(非上場会社・洋菓子製造)は、代表取締役社長のAさん(72歳)が40年前に設立した会社である。大手企業との取引を拡大することで、設立以来、業績は堅調に推移してきた。最近では、新規取引先(法人)の開拓と同時に、個人顧客へのネット通販に力を入れており、5名程度の正社員の採用を検討している。

【X社の事業承継に関して】
Aさんは、75歳までに社長職を辞し、長男Cさん(42歳)に事業を承継する予定である。長男Cさんは、2年前に大手製粉メーカーを退職し、X社に入社した。現在は、工場長として製品の品質保証・製造工程を統括しており、従業員からの信頼は厚い。
Aさんは、X社株式の移転方法として事業承継税制の特例を活用することに魅力を感じているが、活用前にデメリットを把握しておきたいと考えている。また、他の株式移転の方法についても確認しておきたいと思っている。現在、X社株式の30%を複数名の親族が保有しているが、これらは設立時にAさんが出資金を負担したものである。これらの親族に配当金を支払った実績はなく、親族も名義のみを貸与したことを認識している。X社株式の移転に先立ち、親族名義の株式(名義株)を整理しておきたいと考えている。

【Aさん自身の資産承継に関して】
Aさんは、所有財産のうち、長男CさんにX社株式を承継し、妻Bさん(67歳)に自宅および相応の金融資産を相続させる予定であるが、他の資産をどのように承継するかは検討していない。同市内に暮らす長女Dさん(40歳)からは、住宅取得資金の援助を求められているため、ある程度の現金を渡してあげようと思っている。

【Aさんの家族構成(推定相続人)】
妻Bさん :専業主婦。Aさん・長男Cさん家族と二世帯住宅で同居している。
長男Cさん:X社勤務。妻と2人の子がおり、Aさん夫妻と二世帯住宅で同居している。
長女Dさん:会社員。賃貸マンションに夫と子の3人で暮らしている。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
現預金 :1億3,000万円(役員退職金は考慮していない)
X社株式:1億2,320万円
自宅土地(250u):4,000万円
自宅建物:2,180万円
賃貸マンション土地(800u):1億2,000万円
賃貸マンション建物:6,000万円(注)
月極駐車場(500u):7,500万円

合計:5億7,000万円

※Aさんの相続に係る相続税額(5億7,000万円に基づいて計算)は、約1億6,000万円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。
(注):1階貸店舗、2〜4階居住用、家賃収入は年間1,800万円

【X社の概要】
資本金 :2,000万円
会社規模:中会社の大
従業員数:67人
配当  :実施なし
売上高 :12億円
経常利益:4,000万円
余剰資金:3億円
株主構成(発行済株式総数4万株):Aさん名義70%、複数名の親族名義30%
株式の相続税評価額:原則的評価方式:4,400円/株・配当還元方式:250円/株
(類似業種比準価額4,000円/株、純資産価額8,000円/株)
※複数名の親族は、Aさんと特殊の関係にある者(同族関係者)ではない。
※X社株式は譲渡制限株式である。

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part1 ポイント解説

1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策

(1) 生命保険・金庫株の活用
(2) 役員退職金支払い(法人税の低減、退職所得控除による所得税低減効果も有り)
(3) 自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
(4) 小規模宅地の特例の活用
(5) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度の活用

2. 遺産分割対策・事業承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用
(3) 相続時精算課税制度・直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度の活用
(4) 孫への結婚・子育て資金贈与の非課税特例の検討

3. 事業承継税制の特例の活用

X社株式については、非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度の活用により、全株式を税負担なく移転可能(納税猶予割合100%)

ただし、非上場株式等についての贈与税の納税猶予・免除を受けるには、会社・後継者(経営承継受贈者)それぞれの適用要件を満たした上で2023年3月31日までに特例承継計画を都道府県知事に提出して確認を受け、経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定を受けることが必要。
ただし、非上場株式の贈与税の納税猶予・免除における特例承継計画には、会社概要や先代経営者・後継者の氏名、後継者の承継時までの経営計画と、承継後5年間の経営計画を定めることが必要。

また、雇用の8割以上を5年間平均で維持することが必要であり、納税猶予取消となった場合、猶予されている税額と利子税を納付する必要がある。

つまり、メリットとしては税負担なく全株式を移転できるが、デメリットとして、事務負担の増大と、雇用維持等の納税猶予条件を満たせなかった場合の猶予税額と利子税の納付が必要という点が挙げられる。

本問の場合、5名程度の正社員の採用を検討しているが、特例適用による雇用維持条件を満たしていけるかについても、事前によく検討しておくことが必要である。

4.事業承継を考慮した株主構成(名義株の整理)

安定した企業経営の継続のためには、贈与税の納税猶予特例・金庫株・後継者の役員給与の増額等による株式譲渡といった対策を組み合わせ、できるだけ後継者に株式を集約させることが望ましい。

1990年の商法改正前では、株式会社の設立には最低7人の発起人が必要であったため、創業者が出資金をすべて負担し、名義だけを借りる「名義株」により、会社登記する場合があった。
名義株の場合、株式の名義は他人であっても、名義人に対して配当が無ければ、実際に出資した人が真の株主とされるため、創業者の相続が発生した場合、名義株は創業者の相続財産に含まれることになる。

非上場株式の相続税の納税猶予・免除を受ける後継者は、相続開始日の翌日から5ヶ月経過時点で会社の代表権を有し、相続開始時に後継者と同族関係者等で総議決権数の50%超であることが必要であるため、特例適用のためにも、名義株を整理しておくべきである。

名義株を整理するためには、名義人による株主名簿の記載事項確認書と名義変更の合意書への署名捺印を経て、実印の印鑑証明書を添付した上で、名義人と真の所有者で会社への名義変更手続を行うことが必要。
ただし、無償の財産移転として贈与税の課税対象とならないように、名義変更手続き時の資料や配当金の支払い状況を示した資料等を残しておくことが必要。

5. 相続人間の平等な相続方法

Aさんが予定している、長男CさんにX社株式を承継し、妻Bさんに自宅と相応の金融資産を相続させる案には特に問題はないと思われる。
長女Dさんについては、賃貸マンションの土地・建物だけでも十分な額であり、相続時精算課税制度・直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度の活用により、積極的な生前贈与も検討できる。

なお、自宅土地の相続税評価額よりも、賃貸マンションの土地の方が大幅に相続税評価額が高いため、小規模宅地の特例については、賃貸マンションの土地に適用した方が相続税負担は軽減できる。
ただし、平成30年4月1日以降、相続開始前3年以内に賃貸開始した宅地は、小規模宅地の特例の対象外となっているため、事前に確認しておくことが必要。

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、法令の遵守(コンプライアンスの徹底)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)、能力の啓発の6つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・事業承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し、顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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