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2020年2月16日実技part2

2020年2月16日実技part2

part2 問題文

●設 例●
Aさん(73歳)は、大都市圏のK市内に所在する甲土地(地積600u)と乙土地(地積230 u)を2年前の父親の相続により取得している。父親の代から、甲土地は月極駐車場として 活用し、乙土地は借地人であるBさんに貸している。
Aさんは、同市内に所在する自宅(地積200u、敷地の相続税評価額6,000万円、木造、築 40年)に妻(70歳)と2人で暮らしている。駐車場収入および地代収入は、生活資金の一部 となっている重要な収入源であるが、その収益性は低い。また、父親の相続時に相応の税額 を納付したため、預貯金の残高は2,000万円と心許ない金額である。
Aさん夫妻の一人娘である長女(37歳)は、都心に購入した分譲マンションで夫と2人の 子の4人で安定した生活を送っている。Aさんは、3年前に胃がんの手術を受けており、現 在は回復しているものの、体調面に不安がある。Aさん夫妻は、今のうちに、管理に手間が かかる自宅を売却し、長女家族の近くにあるマンションに移り住みたいと考えている。

【X社の提案】
Aさんは、先日、駐車場の管理会社を通じて、マンション開発業者X社の担当者から「甲 土地はマンション用地として適地であり、需要は相当高いと考えています。甲土地だけでは なく、併せて乙土地を買わせていただければ、より高い金額で買い取らせていただきます。 借地人のBさんを説得していただけないでしょうか。Aさんが等価交換をご希望であれば、 対応させていただきます」との提案を受けた。

【借地人Bさんの相談内容】
借地人Bさん(71歳)は、親の代から乙土地に木造2階建ての店舗併用住宅を建て、地元 客を対象に飲食店を営んできた。Bさんから「親父の代から商売をしてきたが、そろそろ店 を閉めようと考えている。建物も古くなり、金もかかる。老後の生活資金を準備しなければ ならないし、借地契約をどうすればよいか悩んでいる。生まれ育ったこの街には住み続けた いと思っているが、売ることも考えなければと思っている」との相談があった。

Aさんは、X社の提案を前向きに検討したいと考えている。また、親友で小・中学校の後 輩のBさんの悩みをなんとか解決してあげたいと思っている。Aさんは、どのように対応し たらよいか、FPであるあなたに相談することにした。

(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのよ うな情報が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから直接聞いて確認する情報
(2)FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.X社が乙土地を取り込むことのメリットを教えてください。
3.Bさんの借地権について、Aさんに対して、どのような提案をしますか。
4.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

【甲土地および乙土地の概要】

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part2 ポイント解説

1. アドバイスに当たって必要な情報

(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
甲・乙土地については、等価交換により賃貸マンションの区分所有権を取得して賃料収入を得ていくか、底地状態を解消して駐車場としての活用を継続する等の方法があるが、父親から相続した土地の取り扱いとなるため、特段の思い入れがあるか等、Aさんの希望を確認することが必要。
また、借地人Bさんの借地権の取り扱いについて、Aさんによる買取りやX社への共同売却等、想定される処理方法についてAさん自身の意向を確認しておくことが必要。

(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地の物理的状況を、実際に確認することが必要。
特に、本問では甲・乙土地は父親の代から続いているものであり、売却時には相続したAさん名義にしておく必要があることから、必ず登記簿上の名義の確認が必要。
また、甲・乙土地を一体利用した賃貸マンションが今後安定して収益を発生させられるか、用途地域・地方自治体の都市計画等を確認し、今後の開発予定・環境変化を把握することが必要である。

2. X社が乙土地を取り込むことのメリット

甲・乙土地を一体活用することで、建ぺい率・容積率・路線価いずれについてもより有利な乙土地の方の規制を適用できるため、建築物の自由度・評価額が高くなるため。
(1) 建ぺい率・容積率:前面道路が幅員8mとなり、角地となるため緩和される。
(2) 路線価:甲単独だと200,000円/u(200C)だが、一体活用で300,000円/u(300C)となる。

3. 借地権の取り扱いに関する顧客への提案

(1)借地権の買い取り
Bさんが納得する価格で借地権を買い取り、借地関係を解消する方法。
○メリット :借地権解消後の土地を自由に有効活用可能。
○デメリット:残存価値がほぼないであろう住宅であるにも関わらず、買い取り費用が発生する(建物の解体費用はBさん負担にできる)。

(2)底地と借地権の共同売却
乙土地の底地と借地権を、共同で他者に売却し、土地から金融資産とする方法。
○メリット :分割しやすい金融資産へ整理可能。
○デメリット:賃貸収入の消滅。譲渡所得税負担の発生。

(3)底地と借地権の交換
乙土地の底地と借地権を、相当の価値に応じて交換し、それぞれの土地の所有権とする方法。
○メリット :借地権解消後の土地を自由に有効活用可能。交換特例により譲渡所得をなかったものとすることが可能。
○デメリット:賃貸収入の消滅

(4)マンション建設に伴う等価交換
デベロッパーとの等価交換事業により、マンションを建設し、底地・借地権に応じたマンションの一部を取得する。
○メリット :資金負担無しで建物を取得可能。建物の専有部分を複数取得することで、分割しやすい資産へ整理可能。買換え特例により、譲渡所得の繰り延べ可能。
○デメリット:土地は実質共有

Aさんの意向次第ではあるが、等価交換であれば、現状の甲・乙土地の低い収益性を改善し、借地人Bさんの希望もかなえられると思われる。

4. 関与すべき専門職業家

等価交換方式によるマンション建設における譲渡所得の特例適用といった具体的な税金の質問等に関しては税理士、自宅の譲渡の際の土地・建物の所有権移転登記は、司法書士、測量結果に基づいた適正な不動産価格の算定は、不動産鑑定士が適当。
また、賃貸マンションの譲渡・媒介等における宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、不動産業者やデベロッパーが適当。

2020年2月16日part1          目次
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