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2020年2月16日実技part1

2020年2月16日実技part1

part1 問題文

●設 例●
大都市圏K市に所在する株式会社X社(非上場会社・情報機器販売業)は、代表取締役社 長Aさん(72歳)が大手電機メーカーを退職して40年前に設立した会社である。創業当初は 経営状況の厳しい時期が続いたが、現在では顧客企業のニーズに沿った情報環境の構築支援 と据付から保守までの一貫したサービス体制を強みとして、業績は堅調に推移している。

【X社の事業承継に関して】
Aさんは、自身の年齢のこともあり、事業承継について道筋をつけたいと考えている。X 社では、大手商社出身の長男Cさん(45歳)が常務取締役として営業部門を統括している。 今期、長男Cさんは3億円の新規売上高(売上計上は次期の予定)が見込まれる大口得意先 を獲得しており、後継者としての実力に加え、自覚も備わってきた。
他方、自社株式の対策は未着手のままである。Aさんは、先日、メインバンク主催のセミ ナーに参加した際に紹介された事業承継税制の特例がX社の事業承継において、活用すべき ものであるか否か、判断できずに苦慮している。また、既に退職したX社の創業メンバーF さん(70歳)が保有しているX社株式の取扱いも課題であると考えている。

【Aさん自身の資産承継に関して】
Aさんは、所有財産のうち、長男CさんにX社関連の事業用資産を承継し、二女Eさん(40 歳)には自宅および相応の金融資産を相続させたいと思っている。ただし、兄妹間で相続財 産の偏りが生じることに一抹の不安を感じている。

【Aさんの家族構成(推定相続人)】
妻Bさん(70歳) :専業主婦。Aさん・二女Eさん・孫と自宅で同居している。
長男Cさん(45歳):X社常務取締役。持家(マンション)で妻と子2人の4人暮らし。
長女Dさん(41歳):地方公務員。賃貸マンションで会社員の夫と子2人の4人暮らし。遠方(県外)に住んでおり、X社の経営に関与する予定はない。
二女Eさん(40歳):X社従業員。一人息子(14歳)とともにAさん夫妻と同居している。 5年前に離婚し、X社に入社。現在は総務部で経理を担当している。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
現預金    :2,550万円(役員退職金は考慮していない)
X社への貸付金:5,000万円
X社株式   :1億2,450万円
X社本社土地 :9,000万円(300u、無償返還方式・通常の地代にて賃貸)
自宅     :6,000万円(土地(200u)5,000万円、建物1,000万円)

合計:3億5,000万円
※Aさんの相続に係る相続税額は、約6,600万円(配偶者の税額軽減、小規模宅地等の評 価減適用前)と見積もられている。

【X社の概要】
資本金 :1,000万円
会社規模:中会社の大
従業員数:40人
業種  :卸売業
売上高 :28億円
経常利益:3,000万円
純資産 :4億円
配当  :毎期実施なし
株主構成(発行済株式総数2万株):Aさん75%、妻Bさん15%、Fさん10%
株式の相続税評価額:原則的評価方式:8,300円/株・配当還元方式:250円/株
(類似業種比準価額7,000円/株、純資産価額2万円/株)
※Aさん・Fさんは、それぞれが特殊の関係にある者(同族関係者)ではない。
※X社株式は譲渡制限株式である。

【親族関係図】

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part1 ポイント解説

1.納税資金の不足、相続税の軽減対策

(1) 生命保険・金庫株の活用
(2) 役員退職金支払い(法人税の低減、退職所得控除による所得税低減効果も有り)
(3) 自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
(4) 小規模宅地の特例の活用
(5) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度の活用
(6) 法人からの貸付金の弁済受け入れ

2. 遺産分割対策・事業承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用
(3) 相続時精算課税制度・直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度の活用
(4) 孫への教育資金贈与の非課税措置の検討
(5) 金庫株を用いた長男Cから長女D・二女Eへの代償分割

3. 事業承継税制の特例の活用

X社株式については、非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度の活用により、全株式を税負担なく移転可能(納税猶予割合100%)

ただし、非上場株式等についての贈与税の納税猶予・免除を受けるには、会社・後継者(経営承継受贈者)それぞれの適用要件を満たした上で2023年3月31日までに特例承継計画を都道府県知事に提出して確認を受け、経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定を受けることが必要。
ただし、非上場株式の贈与税の納税猶予・免除における特例承継計画には、会社概要や先代経営者・後継者の氏名、後継者の承継時までの経営計画と、承継後5年間の経営計画を定めることが必要。

また、雇用の8割以上を5年間平均で維持することが必要であり、納税猶予取消となった場合、猶予されている税額と利子税を納付する必要がある。

つまり、メリットとしては税負担なく全株式を移転できるが、デメリットとして、事務負担の増大と、雇用維持等の納税猶予条件を満たせなかった場合の猶予税額と利子税の納付が必要という点が挙げられる。

本問の場合、業績は堅調で次期に大きな売上高が見込まれているが、特例適用による雇用維持条件を満たしていけるかについても、事前によく検討しておくことが必要である。
また、相続税の納税資金についも、法人からの貸付金の弁済受け入れや役員退職金、生命保険や金庫株の活用等を組み合わせることで対応可能な範囲と思われるため、大きな事務負担を負ってまで特例適用を目指す必要性は薄く、事前によく検討することが必要である。

4.創業メンバーが保有しているX社株式の取扱い

X社株式については、将来の相続発生による散逸防止のため、X社が余剰資金により金庫株として買い取ることが望ましい。

個人が非上場株式をその発行会社に譲渡した場合、買い取ってもらった金額のうち資本金等の額を超える分については、「みなし配当」(配当所得)となるが、会社側は、自己株式を時価より高額または低額で譲渡された場合でも、原則として時価との差額に対する認定課税は行われない(資本等取引)。
ただし、適正な時価よりも低額譲渡を行うと、時価で譲渡したとみなされ、みなし譲渡所得として課税される可能性がある。さらに、低額譲渡により当該株式の評価額が上昇すると、他の株主も株価上昇の恩恵を受けるため、譲渡した株主から他の株主への贈与(跳ね返り贈与)とみなされ、贈与税の課税対象となることがある。

本問では、Fさん所有のX社株式について、税理士とも相談の上で、適正な時価の範囲内でX社が買い取ることを勧める。

5. 相続人間の平等な相続方法

長男CさんがX社を承継することにより、長男Cさんの相続分が多くなる可能性が高いため、長女Dさんや二女Eさんを受取人とした生命保険や、X社本社土地の地代を原資とした代償分割(相続後に分割払い)による、ある程度均等な相続も必要と思われる。
さらに、教育資金の非課税特例や、相続時精算課税制度・直系尊属からの住宅取得等資金贈与の非課税制度の活用により、積極的な長女Dさんや二女Eさんへの生前贈与も検討できる。

なお、二女Eさんに自宅を相続させる場合、妻Bさんには配偶者長期居住権を定めて引き続き自宅に居住できるようにする(配偶者居住権には短期と長期があり、配偶者短期居住権は遺産分割で他の相続人が自宅を相続した場合にも、配偶者は最低6ヶ月間無償で居住を継続可能となる権利であるのに対し、配偶者長期居住権は遺産分割や遺贈で定めることにより、配偶者自身が亡くなるまで有効な居住権である。自宅の所有権と居住権を分けて評価することで、自宅の所有権は他の相続人が取得しても、配偶者は居住権を取得することで居住を継続可能とし、同時に居住権は所有権よりも評価額が低くなると想定されることから、金融資産の相続もしやすくなる。)。

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、法令の遵守(コンプライアンスの徹底)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)、能力の啓発の6つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・事業承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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