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2021年2月6日実技part1

2021年2月6日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(70歳)は、東京都甲区に所在する株式会社X社(非上場会社・金型製造業)の2代目社長である。先代が昭和30年代に設立したX社は、自動車・家電メーカーの成長に伴い、業績を大きく伸ばした。リーマン・ショック以降、中国・韓国メーカーとの競争により、価格が低下するなど、経営環境は厳しさを増している。Aさんは、熟練工の退職・高齢化や高付加価値製品に対応するための新規設備投資など、喫緊の経営課題に直面し、事業継続の決断を迫られている。

【X社の事業承継】
X社の本社・工場は先祖代々のAさん所有の土地にある。また、X社は過去の利益の蓄積から、収益不動産を2棟所有しており、内部留保は厚い。他方、前期決算において本業は赤字に転落し、賃貸収入によりかろうじて最終黒字を確保している状況にある。
Aさんは、専務取締役である長男Cさん(44歳)と協議を重ね、今のうちに本業の金型製造業を廃止し、不動産賃貸業に転換することを決めた。Aさんと長男Cさんは、従業員の転職先を確保したうえで、2〜3年後をめどに実行する予定である。
Aさんは、不動産賃貸業に転換するにあたり、Aさんが所有するX社株式を長男Cさんに移転する予定である。Aさんは、事業承継税制の特例を活用すれば、納税が免除されると考えている。

【Aさん自身の資産承継】
Aさんと妻Bさん(70歳)が、老朽化した自宅の建物を二世帯住宅に建て替えて、長男家族との同居を提案したところ、長男Cさんから快諾を得た。隣県に暮らす長女Dさん(42歳)は、会社員の夫と子2人で持家に暮らしているが、住宅ローンと子ども(15歳・13歳)の教育費の負担が大きく、Aさんに支援を求めている。Aさんは、残された家族が遺産分割で揉めることはないと思っているが、念のために自筆証書遺言の作成を検討している。

【Aさんの家族構成(推定相続人)】
妻Bさん :専業主婦。Aさんと自宅で同居している。
長男Cさん:X社専務取締役。賃貸マンションで妻と子2人の4人暮らし。
長女Dさん:パート従業員。夫所有の持家で会社員の夫と子2人の4人暮らし。

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
現預金  : 1億円(役員退職金は考慮していない)
X社株式 : 6,700万円
自宅   : 1億円(土地(300u)9,000万円、建物1,000万円)
X社本社・工場土地 : 1億5,000万円(500u、無償返還方式・通常の地代にて賃貸)
合計   : 4億1,700万円
※Aさんの相続に係る相続税額は、約1億円(配偶者の税額軽減・小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

【X社の概要】
資本金 :1,000万円
会社規模:中会社の大
従業員数:30人
配当  :実施なし
売上高 :7億円
経常利益:200万円
純資産 :3億円
株主構成(発行済株式総数2万株):Aさん100%
株式の相続税評価額:3,350円(類似業種比準価額1,500円/株、純資産価額2万円/株)
※X社株式は譲渡制限株式である。
※X社は収益不動産2棟(相続税評価額3億円)を所有している。

【親族関係図】

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part1 ポイント解説

1. 納税資金の不足・相続税の軽減対策

(1) 生命保険・金庫株の活用
(2) 役員退職金支払い(法人税の低減、退職所得控除による所得税低減効果も有り)
(3) 自社株式評価の引き下げ(配当・利益・純資産の引下げ)
(4) 小規模宅地の特例の活用
(5) 非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度の活用

2. 遺産分割対策・事業承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 遺留分に関する民法の特例の活用
(3) 相続時精算課税制度の活用
(4) 孫への教育資金贈与の非課税措置の検討
(5) 不動産収益を原資とした長男から長女への代償分割
(6) 配偶者居住権の設定

3. 不動産賃貸業への転換による事業承継対策の影響と、事業承継税制の活用の可否

不動産賃貸業に転換した場合、必要な従業員数は現状よりも少なくなる可能性が高く、また取引金額も縮小すると思われるため、人員整理や事業整理により会社区分が中会社からより小さな区分となり、株式評価に純資産価額の割合が増えることから、X社株式の評価額が高くなる可能性がある。

非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度は、贈与・相続時点の資産価額総額に対する収益不動産等の特定資産の割合が70%以上となる場合、資産保有会社として特例適用の対象外となる。ただし、贈与時点において常時使用従業員数5人以上で、営業所を構えて3年以上事業を継続していれば、資産保有会社でも特例適用可能である。
本問の場合、本業の金型製造業を廃止して不動産賃貸業に転換することを目指しているが、常時使用従業員数や営業所の要件を満たすならば、特例適用が可能と思われる。

4.自筆証書遺言の作成に当たっての提案

自筆証書遺言とは、遺言者が遺言の全文、日付および氏名を自書して印を押すものだが、自筆証書遺言の財産目録についてはパソコン作成や代筆、通帳のコピー添付も可能(遺言本文は手書き)となっている。
また、法務局に保管した自筆証書遺言は、公正証書遺言と同様に検認不要

遺言には秘匿性の高い秘密証書遺言や、公証人に口授する公正証書遺言もあるが、前者は家庭裁判所での検認が必要であり、後者は費用と証人2名を要する等の手続が煩雑というデメリットもあるため、自筆証書遺言を選択する場合には、法務局への保管申請を行うことを提案する(ただし、遺言者本人の出頭が必要)。

5. 相続人間の平等な相続方法

(1) 長男の相続分(X社株式と本社・工場土地)
X社株式を後継者である長男に集中させることが、円滑な事業承継上重要である。
また、X社本社・工場土地についても、今後のX社の不動産賃貸業に活かしていくことが効率的と思われるため、長男が相続する方が望ましい。

(2) 配偶者の相続分(自宅)
小規模宅地の特例は、特定居住用宅地で330u、貸付宅地で200uまで適用可能だが、貸付用宅地との併用では調整計算が必要となる。
本問の場合、現状ではX社本社・工場土地は特定同族会社事業用宅地等として、400uまで80%減額可能だが、不動産賃貸業に転換後はそれらもX社の不動産賃貸業に活用していくと思われる。その場合、貸付用宅地とされるため、相続発生時には前述の通りの取扱いとなることを想定しておくべきである。
また、小規模宅地の特例は、二世帯住宅については内部が独立していても適用可能だが、それぞれの居住部分を区分建物所有登記し、親子が別生計の場合には、敷地全てについて特例が適用されないことにも注意が必要。

(3) 長女の相続分(現預金)
X社が不動産賃貸業に転換すると事業運営は安定しやすく、長男は継続的な収入が期待できるため、長女が現預金のみの相続では不満が出る可能性がある。また、事業承継上遺産の大半を長男が相続すると、長女の遺留分を侵害する可能性がある。
そのため、相続時精算課税や孫への教育資金贈与の特例等の生前贈与の活用や、X社の 不動産収益を原資とした長男から長女への代償分割も検討することが必要と思われる。

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、法令の遵守(コンプライアンスの徹底)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)、能力の啓発の6つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・事業承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

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