問57 2021年5月応用
問57 問題文
X社の当期の〈資料〉と下記の〈条件〉に基づき、同社に係る〈略式別表四(所得の金額の計算に関する明細書)〉の空欄(1)〜(8)に入る最も適切な数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、別表中の「***」は、問題の性質上、伏せてある。
〈条件〉
・設例に示されている数値等以外の事項については考慮しないものとする。
・所得の金額の計算上、選択すべき複数の方法がある場合は、所得の金額が最も低くなる方法を選択すること。
〈略式別表四(所得の金額の計算に関する明細書)〉 (単位:円)
(注)法人税額から控除される復興特別所得税額を含む。
問57 解答・解説
法人税の計算に関する問題です。
まず、(1)の「損金経理をした納税充当金」ですが、納税充当金は、当期に確定した法人税等を翌期の支払いに充てるために計上するもので、本問では当期確定申告分の見積納税額9,700千円が該当します。
法人税等は企業会計上では費用としますが、税務上では損金不算入のため、当期利益に加算されるわけです。
よって、(1)の正解は、9,700,000(円)
次に(2)の「減価償却の償却超過額」は、法人税法上の償却限度額を超過した減価償却額については、償却超過額として損金不算入となり、翌期に繰越して、翌期以降に償却不足額が発生した場合に、不足額相当分が損金算入されます。
また、法人税法上の償却限度額に満たない償却不足額については、切り捨てられ、翌期以降に繰り越して損金算入できません。
従って、減価償却の償却超過額=7,800千円−6,900千円=900千円
よって、(2)の正解は、900,000(円)
次に(3)の「交際費等の損金不算入額」ですが、資本金1億円超の法人は、交際費のうち、飲食用の支出の50%まで損金算入可能で、資本金1億円以下の法人は、交際費のうち800万円まで、または飲食用の支出の50%までは損金算入することができます(有利な方を選択可能)。
本問の場合、資本金1,000万円ですので、いずれか有利な方を選択可能です。
また、1人当たり5,000円以下の社外の人との飲食費等で、所定の事項を記載した書類も保存されている場合の金額は、税務上損金不算入となる交際費に含まれません。
本問の交際費は1,260万円ですから、このうち1人当たり5,000円以下の飲食費10万円は交際費に含まれず、1,260万円から10万円を差し引いた残りの1,250万円のうち、800万円を超える分である450万円が損金不算入となるわけです。
これに対し、接待飲食費の50%までを損金とすると、まず接待飲食費における不算入額は900万円÷2=450万円。
さらに、接待飲食費以外の交際費(1人当たり5,000円以下の飲食費10万円を含まず)は全額損金不算入となるため、1,250万円−900万円=350万円も不算入となります。
よって、接待飲食費の50%損金算入を選択した際の不算入額の合計は、450万円+350万円=800万円。
損金不算入額が少ない(=損金算入額が多い)ほうが企業には有利ですから、交際費のうち800万円まで損金算入(450万円が交際費等の損金不算入額)を選択することになります。
よって、(3)の正解は、4,500,000(円)
次に、(4)の「退職給付費用の損金不算入額」ですが、資料の3.で、「退職給付費用3,900千円を損金経理するとともに、同額を退職給付引当金として負債に計上」とあります。
退職給付引当金とは、法人が従業員に支払う退職金を、あらかじめ見積って計上しておくものですが、退職給付引当金は企業会計上では損金で、税務上では損金不算入となります(退職金支給のために取り崩した額は、損金算入可能)。
このため、本問では退職給付費用390万円が、退職給付引当金の損金不算入額として、当期利益に加算されます。
よって、(4)の正解は、3,900,000(円)
次に(5)の「減価償却超過額の当期認容額」ですが、前期以前から償却超過がある資産の場合は、繰り越した償却超過額が、償却不足額の範囲内で当期認容額として損金算入されます。
X社の場合、当期の建物の償却不足額=320万円−300万円=20万円で、前期からの繰越償却超過額が30万円ですから、20万円まで損金算入可能です。
従って(5)の正解は、200,000(円)
なお、資産の種類・耐用年数・償却方法が全て同一であれば、同じ種類ごとに超過額・不足額を計算します(本問では「建物」・「器具備品」という別種類のため、それぞれで計算)。
次に(6)の「退職金支払の当期認容額」ですが、法人が従業員に支払う退職金をあらかじめ見積って計上しておく退職給付引当金は、企業会計上では損金で、税務上では損金不算入とするものの、退職金を支給した事業年度に支出した額は、損金算入できます。
このため、本問では退職給付費用390万円は当期利益に加算されるものの、当期中に退職金支給のために取り崩した退職給付引当金800万円は、当期利益から減算されます。
よって(6)の正解は、8,000,000(円)
次に(7)の「法人税額から控除される所得税額(注)」ですが、問題文にある「預金の利子について源泉徴収(特別徴収)されたた所得税額40千円・復興特別所得税額840円」が該当します。
既に源泉徴収されている所得税・復興特別所得税については、法人税を計算するときに控除されるわけですね(ただし、源泉徴収時に所得税・復興特別所得税は経費計上されているため、別表4では一旦所得に加算し、その後税額計算時に控除します)。
従って、(7)の正解は、40,000円+840円=40,840円 です。
最後に(8)の「所得金額または欠損金額」ですが、これは以下の数式で表せます。
所得金額または欠損金額=当期利益+加算分−減算分+法人税・復興特別法人税額から控除される所得税・復興特別所得税額+欠損金・災害損失金等の当期控除額
従って、
加算分小計=9,700,000+900,000+4,500,000+3,900,000=19,000,000
減算分小計=200,000+1,030,000+8,000,000=9,230,000
(7)所得金額または欠損金額=21,189,160+19,000,000−9,230,000+40,840+0=31,000,000円 です。
※計算結果がマイナスの場合は欠損金額、プラスの場合は所得金額となります。
以上により正解は、(1)9,700,000(円) (2)900,000(円) (3)4,500,000(円)
(4)3,900,000(円) (5)200,000(円) (6)8,000,000(円)
(7)40,840(円) (8)31,000,000(円)
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