問62 2021年5月応用
問62 問題文
Aさんが、下記の〈条件〉で借地権と所有権(底地)を交換し、「固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例」の適用を受けた場合、次の(1)〜(3)に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は100円未満を切り捨てて円単位とすること。なお、本問の譲渡所得以外の所得や所得控除等は考慮しないものとする。
(1)課税長期譲渡所得金額はいくらか。
(2)課税長期譲渡所得金額に係る所得税および復興特別所得税の合計額はいくらか。
(3)課税長期譲渡所得金額に係る住民税額はいくらか。
〈条件〉
〈交換譲渡資産〉
・交換譲渡資産:借地権(旧借地法による借地権)
※2015年10月に相続(単純承認)により取得
・交換譲渡資産の取得費:不明
・交換譲渡資産の時価 :5,000万円(交換時)
・交換費用(仲介手数料等):200万円(譲渡と取得の費用区分は不明)
〈交換取得資産〉
・交換取得資産:所有権(底地)
・交換取得資産の時価:4,500万円(交換時)
〈交換差金〉
・AさんがBさんから受領した交換差金:500万円
問62 解答・解説
固定資産の交換の特例適用後の譲渡所得・所得税・住民税に関する問題です。
固定資産の交換の特例は、交換する譲渡資産と取得資産の差額が、高い方の資産の時価の20%以内であることが必要です。
本問の場合、借地権5,000万円と底地4,500万円の交換ですから、差額=5,000万円−4,500万円=500万円。
よって、高い方5,000万円×20%=1,000万円≧差額500万円 ですので、特例適用が可能です。
また、固定資産の交換の特例は、土地や建物などの固定資産を同じ種類の固定資産と交換したときは、譲渡がなかったものとする特例ですから、Aさんの譲渡資産である借地権5,000万円と、交換取得資産である底地4,500万円については譲渡がなかったものとされ、課税されません。
しかし、特例を適用しても、交換に伴って交付された交換差金は、譲渡所得として課税対象となります。
本問の場合、Aさんは借地権と底地との差額の500万円を、交換差金として受け取っていますから、これに対して課税されるわけです。
固定資産の交換特例を適用した場合、受け取った交換差金から、交換差金分に対応する取得費・譲渡費用を差し引いた額が譲渡所得となります。
問題文では「交換譲渡資産の取得費:不明」となっていますが、取得費が不明な場合には、概算取得費として譲渡価額の5%とすることができます。
概算取得費=5,000万円×5%=250万円
また、譲渡費用のうち媒介手数料等のように譲渡と取得の費用区分が不明なものは、2分の1ずつを譲渡と取得のそれぞれに費用として配分します。
譲渡費用=200万円×1/2=100万円
これらの費用は、今回の交換全体(交換取得資産+交換差金)に関わる費用ですので、交換差金分の割合だけを算出することが必要です。
交換差金分の割合=交換差金/(交換取得資産の時価+交換差金)
=500万円/(4,500万円+500万円)=1/10
よって、
交換差金の譲渡所得=500万円−(250万円+100万円)×1/10
=600万円−350万円×1/10
=600万円−35万円=465万円
次に、長期譲渡所得は所得税15%・住民税5%であり、復興特別所得税は、その年の所得税額の2.1%分です。
●所得税
465 万円×15%=697,500 円
●復興特別所得税
697,500 円×2.1%=14,647.5 円
●所得税・復興特別所得税の合計額
697,500 円+14,647.5 円=712,147.5 円 ⇒ 712,100 円(100円未満切捨て)
●住民税額
465 万円×5%=232,500 円
以上により正解は、(1)4,650,000(円) (2)712,100(円) (3)232,500(円)
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