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2021年6月5日実技part1

2021年6月5日実技part1

part1 問題文

●設 例●
Aさん(70歳)は、大都市圏K市において不動産賃貸業を個人で営んでおり、K市中心部のK駅前に所有する分譲マンションにおいて、長女Cさん(33歳・会社員)および孫Eさん(7歳)と同居している。長女Cさんは、3年前に離婚し、それ以後、Aさんと暮らしている。Aさんは、娘と孫の今後の生活について心配している。

【母親Dさんと妻Bさんの相続手続】
2020年12月、K市内の実家で1人暮らしをしていた母親Dさんが死亡した。母親Dさんの法定相続人は、1人息子のAさんと母親Dさんの普通養子となっていた妻Bさんの2人である。遺言書がなかったため、Aさんと妻Bさんが遺産分割協議書の作成を始めようと思っていた矢先、妻Bさんが2021年3月に急死した。
Aさんは、母親Dさんと妻Bさんの相続手続等に着手しなければならないと思っているが、妻Bさん名義の財産は500万円の普通預金のみであるため、妻Bさんの申告は必要ないと思っている。先日、金融機関の担当者から「法定相続情報証明制度」を利用すると名義変更の手続を簡略化することができるとアドバイスされた。

【Aさんの不動産賃貸経営】
Aさんは、会社員時代より不動産投資を行っており、2件の賃貸物件を所有している。賃貸マンションは満室が続いており、経営は順調である。他方、築46年・木造の賃貸アパートは入居者の募集をしているが、6戸中3戸が空室となっている。Aさんは、空室のままで相続が開始すると不利になると聞いたため、新たな借入を行い、アパートを建て替えようと考えている。賃貸アパートはK駅前商店街にあり、潜在的な需要はあると思われる。なお、昨年、賃貸マンションの借入金を完済したため、Aさんに借入金等の債務はない。

【母親Dさんの相続財産の概要】
1.現預金等 : 4,800万円
2.自宅(Aさんの実家)
(1)土地(200u) : 6,000万円
(2)建物 : 200万円(1977年築)

【Aさんの所有財産の概要】(相続税評価額、土地は小規模宅地等の評価減適用前)
1.現預金等 : 5,000万円
2.自宅マンション : 6,000万円(2010年築・3LDK・専有面積80u)
3.賃貸マンション
 (1)土地(400u): 1億円
 (2)建物(20戸) : 5,000万円(2001年築)
4.賃貸アパート
 (1)土地(100u): 5,000万円
 (2)建物(6戸) : 50万円(1975年築)

合計 :3億1,050万円
※合計額(3億1,050万円)には、母親Dさん・妻Bさんの相続財産は含まれていない。
※Aさんの相続に係る相続税の総額(3億1,050万円に基づいて計算)は、約9,700万円(小規模宅地等の評価減適用前)と見積もられている。

【親族関係図】

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part1 ポイント解説

1. 納税資金の不足、相続税・所得税の軽減対策

(1)生命保険の活用(法人契約だとより軽減効果有り)
(2)小規模宅地の特例の活用
(3)長女を代表取締役とした法人の設立と法人への不動産の賃貸
(4) 孫への教育資金贈与の非課税措置の検討

2. 遺産分割対策・事業承継対策

(1) 遺言の作成
(2) 相続時精算課税制度の活用

3.法定相続情報証明制度と数次相続時の相続税申告

法定相続情報証明制度は、相続発生時に相続人が法定相続情報一覧図を作成して必要書類とともに法務局に提出することで、登記官がその内容を確認し、認証文付きの法定相続情報一覧図の写しの交付を受けることができる制度。交付された法定相続情報一覧図の写しは、相続人の範囲に関する公的な証明書として、相続登記や預金払戻等の手続で利用可能であるため、相続財産の名義変更手続きの際、その都度戸籍謄本等の相続証明書類一式を用意することなく、相続登記や預金払戻等を申請可能。
また、相続税の申告書の添付書類として、被相続人の全相続人を明らかにする戸籍謄本の代わりに、法定相続情報一覧図の写しも利用可能(子の続柄が実子・養子と明記されたもの)。

本問の場合、妻Bさんが母親Dさんの普通養子でもあることから、法定相続情報一覧図の写しを取得する際は、子の続柄が明記されたものを取得する方が良いと思われる。

また、被相続人の死亡後、遺産分割協議前に相続人が死亡してしまう数次相続が発生した場合でも、相続税の基礎控除はそれぞれの相続発生時の法定相続人の数で計算するため、基礎控除額に影響は発生しない。
相続税の申告は、課税価格の合計が基礎控除以下であれば不要であるため、母親Dさんの遺産分割協議における妻Bさんの取得分をゼロもしくは少額とすることで、妻Bさんの遺産額が普通預金500万円も含めて相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×1名)以下であれば、Aさんが想定している通り申告不要となる。

なお、相続税の申告と納税は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内に行うことが必要であるが、数次相続の場合、第一次相続の相続税の申告期限は第二次相続の期限まで延長される。
よって本問の場合、母親Dさんの相続税の申告期限は、妻Bさんの申告期限である2022年1月まで延長されることになる。

4. 顧客の不動産投資に関するアドバイス

貸家建付地の評価額=自用地評価額×(1−借地権割合×借家権割合×賃貸割合)であり、賃貸割合が高い=空き室が少ないほど相続税評価額は低くなり、税負担も軽減することから、アパートを建て替えて満室となれば相続税評価額を下げる効果が期待できる。
また、借り入れを伴う不動産投資をする場合、借入金は債務控除として相続財産から控除され、取得した物件は相続税路線価や貸家建付地としての評価減により、借り入れた金額よりも低額な評価額となるため、差額に対する相続税対策として効果が期待できる。
本問の場合、Aさんには潤沢な金融資産と良質な不動産を保有しており、借入を伴う不動産投資の経験もあることから、追加投資によるリスクは比較的低いと思われる。加えて、娘と孫の今後の生活を安定させるためにも、Aさんが壮健なうちに新たな借り入れと不動産投資を実施し、Aさんに万一の自体が発生した場合でも安定的な経営が継続できるようにしておく方が良いと思われる。

なお、不動産投資以外にも、不足する納税資金を生命保険の活用で補い、相続時精算課税や各種生前贈与の特例を活用して相続税負担の軽減を検討することも提案する。

●FPと職業倫理

FPの職業倫理は、顧客利益の優先、守秘義務、説明義務(アカウンタビリティ)、法令の遵守(コンプライアンスの徹底)、顧客の説明・同意(インフォームド・コンセント)、能力の啓発の6つ。
本問では、FPと顧客の利益相反や顧客の秘密漏洩を懸念する局面ではなく、金融商品取引法等における重要事項の説明義務に関わる段階でもなさそうですので、一番重要なのは、様々な相続税の軽減対策・事業承継対策の方法やそれを適用した結果をきちんと説明し顧客の理解度を確認する「インフォームド・コンセント」ということになるかと思います。

◆この試験問題の公開体験談

【note】tokeihira FP1級実技の当日レポート(Part1)

目次          2021年6月5日part2
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