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2022年2月19日実技part2

2022年2月19日実技part2

part2 問題文

●設 例●
Aさん(66歳)は、大都市圏近郊のK市内において、最寄駅から徒歩圏内の甲土地(地積200u)と丙土地(地積161.6u)を所有し、甲土地上の自宅に妻Bさん(59歳)と2人で暮らしている。丙土地は駐輪場として活用している。
妻Bさんは市役所に勤務しており、その給与収入とAさんの年金収入、駐輪場収入で日々の暮らしは賄えているが、預貯金の残高は2,000万円程度であり、将来の生活を考えるとやや心許ないと感じている。Aさん夫妻の1人息子である長男Cさん(33歳)は、東京都内に購入した分譲マンションに妻と2人の子の4人で暮らし、安定した生活を送っている。
昨年、甲土地に隣接する乙土地の所有者が死亡した。Aさんは、今年になって、その相続人が乙土地をマンションデベロッパーのX社に売却するらしいとの噂を耳にしたが、先日、そのX社から依頼を受けたというY不動産の社長の訪問を受けた。社長によれば、「X社が、乙土地上のマンション開発にあたって、甲土地をぜひ購入させてほしいと言っている。相場の3〜4割増しでもかまわない。また、Aさんが等価交換をご希望であれば、対応させていただく」とのことである。
甲土地上の自宅は、築40年の木造2階建てで、年々修繕費もかさむようになり、将来の生活資金を考えると、X社からの提案は魅力的な話だと思っている。ただ、妻Bさんに相談したところ、「近隣にはお友達も多いし、遠くには行きたくないわ。もし甲土地を売却するのなら、いま貸駐輪場としている丙土地に新しく家を建てるのもいいかもしれない。それにしても、どうしてX社はここをそんなに高値で買いたいのかしら」と腑に落ちない様子である。
丙土地は、もともと駐輪場だったところをAさんの父親が収益物件として購入したもので、そもそも家を建てることができるのかわからない。丙土地と隣接している丁土地はDさんが所有し、丁土地上の自宅兼診療所で内科医を営んでいる。
Aさんは、X社の提案を前向きに検討したいと考えており、今後どのように対応したらよいか、丙土地に新たに家を建築することができるのかなど、FPであるあなたにアドバイスを求めることにした。

(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから直接聞いて確認する情報
(2)FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.Aさん夫妻に対し、X社が甲土地を相場より高くても買いたいという理由をどのように説明しますか。また、今後のX社との価格交渉について、どのようなアドバイスをしますか。
3.丙土地上に新たに建物を建築することはできますか。
4.等価交換方式の概要とメリット・デメリットについて教えてください。
5.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

【甲土地・乙土地・丙土地・丁土地の概要】


【丙土地・丁土地の拡大図】

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part2 ポイント解説

1. アドバイスに当たって必要な情報

(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
妻Bさんは「近隣にはお友達も多いし、遠くには行きたくない」ということから、丙土地への自宅の新築を考えているが、乙土地上のマンションとの等価交換についてはどのように考えているかの確認が必要。
また、Aさんの現在の収支状況や資産状況を確認し、現状のままである場合や土地の売却や等価交換を場合を想定した、今後のライフプランの検討が必要。
なお、丙土地への自宅新築も検討する場合、接道義務の関係上、丁土地Dさんとどのような関係性があるかの確認が必要。

(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地・建物の物理的状況を、実際に確認することが必要。
また、用途地域・地方自治体の都市計画等を確認し、今後の開発予定・環境変化を把握することが必要である。
特に、本問では妻が「近隣にはお友達も多いし、遠くには行きたくない」と言っていることから、今後の環境変化の把握が重要となる。
また、X社の提案を検討するにあたって、X社の財務資料や取引実績等の調査が必要。

2. X社が甲土地を相場より高くても買いたいという理由と今後の価格交渉に関するアドバイス

甲土地を相場より高くても買いたいという理由は、甲・乙土地を一体活用することで、建ぺい率・容積率・路線価いずれについてもより有利な甲土地の方の規制を適用できることから、建築物の自由度・評価額が高くなるためと考えられる。
(1) 建ぺい率・容積率:前面道路が幅員8mとなり、角地となるため緩和される。
(2) 路線価:乙単独だと250,000円/u(250D)だが、一体活用で320,000円/u(320C)となる。

そこで、今後の価格交渉に関するアドバイスとしては、X社の申し出である「相場3〜4割増し」が妥当であるかの検討が必要。
現状の乙土地の路線価は、250,000円/u×900u=2億2,500万円
これに対し甲土地と一体利用した場合の路線価は、320,000円/u×(200u+900u)=3億5,200万円
甲土地を4割増しで購入した場合、320,000円/u×200u×1.4倍=8,960万円
従って、一体利用による評価額の差額は、購入代金を差し引くと、3億5,200万円−2億2,500万円−8,960万円=3,740万円 といえる。

つまり、単純な路線価で比較しても、X社は4割増しで甲土地を購入してなお、3,700万円の評価益を得られるため、一体利用による土地の価値向上分についてはX社に交渉できる余地があると思われる。

なお、本問のような増加した利用価値分を算定する方法として、総額法(土地の総額比で配分)と、買入限度額法(互いに相手の土地を購入し得る最高額の比率で配分)が用いられる。
よって、よりAさんに有利な配分となるよう、それぞれの配分方法による配分比を確認することが必要。

さらに、甲土地・乙土地の売却の際して実測売買を行う場合には、甲土地・乙土地の正確な測量と、境界の明示が必要となる。
その後、測量結果に基づいた、甲土地・乙土地の単独の不動産価格と、一体利用した場合の不動産価格を確認し、利用価値増加分の配分比率について、X社との交渉が必要となる。

3. 丙土地上への新たな建物の建築可否

都市計画区域内・準都市計画区域内では、建築物の敷地は、建築基準法に規定する幅員4m以上の道路に2m以上接している必要がある(接道義務)。
本問の場合、拡大図によると丙土地は、前面道路に接しているのが1.8mまでの路地状敷地(旗竿地)であるため、このままでは新たな建築物を建築することが出来ない。

よって、もし丙土地に自宅を新築したい場合には、隣地である丁土地所有者Dさんと交渉の上、接道義務に足りない20p分の土地を譲渡してもらうことが必要。その場合、Dさんとの間で過去にトラブルが無かったかどうか等、個人的な関係性も重要となる。

4. 等価交換方式の概要とメリット・デメリット

等価交換方式とは、土地の所有権者や借地権者がその権利の一部または全部をデベロッパーに譲渡し、代わりにデベロッパーが建てたマンション等の一部を取得するもの。
土地の所有権者や借地権者は、資金負担無しで建物を取得できるメリットがある。
ただし、土地・建物の所有権はデベロッパー等との共有になるため、その後の土地・建物の活用等については共有者全員の同意が必要となるデメリットがある。

また、三大都市圏の既成市街地等およびそれに準じる地域であれば、地上3階建て以上で耐火構造の共同住宅を建設する場合、立体買い換えの特例の適用を受けることにより、不動産の譲渡益に関する課税を100%繰り延べることが可能。
甲土地と乙土地のあるK市内は三大都市圏である明示はないが、大都市圏近郊の既成市街地等であり、他の要件を満たせば、立体買い換えの特例の適用を受けることが可能と思われる。

5. 関与すべき専門職業家

甲・乙土地の一体利用における、正確な測量と境界の明示および登記については土地家屋調査士測量結果に基づく適正な不動産価格の算定は、不動産鑑定士土地の所有権移転登記等については司法書士課税上の取扱いに関する具体的な税務相談については税理士、不動産売買の媒介等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、宅地建物取引士が適当。

◆この試験問題の公開体験談

【note】Lifespurt FP1級実技(金財)2022年2月19日 PartII 面接レポート

2022年2月19日part1          目次
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