TOP > 実技過去問ポイント解説 > 2023年2月1日実技 > 2023年2月12日実技part2

2023年2月12日実技part2

2023年2月12日実技part2

part2 問題文

●設 例●
Aさん(65歳)は、三大都市圏近郊のM市内において、ターミナル駅から徒歩圏内にある甲土地(地積500u)と乙土地(地積120u)を所有し、乙土地上にある自宅で妻Bさん(60歳)と2人で暮らしている。1人息子である長男Cさん(35歳)は、隣のK市内にある自宅で妻子と暮らし、2年前に起業したIT関連の事業を営んでいる。
甲土地は、5年前の父親の相続により取得したもので、父親の代からアスファルト敷きの月極駐車場として利用している。年間450万円程度の収入を得ているが、甲土地の固定資産税・都市計画税を毎年300万円程度支払っており、収益性は高くない。Aさんは、甲土地の収益性を高めたいと考えているが、自身が借入れをして建物賃貸事業を始める気はなく、これまでどおり土地の賃貸によって安定的な収益が得られる方法を望んでいる。
なお、Aさんは、不動産のほかに金融資産を3,000万円程度有しており、親しい税理士によれば、現状の資産で約1,800万円の相続税が見込まれている。
Aさんが甲土地について友人である地元不動産会社の社長に相談したところ、「甲土地が所在するエリアは商業性が高く、良好な住宅地としても人気があることから、引合いは多いだろう」とのことであり、その言葉どおり、後日、社長を通じて、X社とY社の2社から定期借地契約による活用方法の提案を受けた。

【X社の提案内容】
・事業用定期借地権方式
・X社(家電量販店)が甲土地上に店舗ビルを建築
 RC造4階建て、延べ面積1,500u、建設費4億5,000万円
・借地期間40年、保証金4,000万円、年間地代800万円(X社は、甲土地に係る固定資産税・都市計画税を年間300万円程度と推定)
・Aさんの希望に応じて建物譲渡特約付借地権を併用する対応も可能

【Y社の提案内容】
・一般定期借地権方式
・Y社(不動産会社)が甲土地上に分譲マンションを建築し、平均販売単価80万円/専有面積(u)で分譲する計画
 RC造7階建て、延べ面積1,500u、専有(販売)面積1,300u
・借地期間70年、権利金2,000万円、年間地代600万円(Y社は、甲土地に係る固定資産税・都市計画税を年間100万円程度と推定)
・年間地代の50%の70年分(総額2億1,000万円)を前払地代として支払可能

Aさんは、甲土地の収益性を高めるとともに、安定的な運用により長男Cさんに相続したいと思っており、X社とY社の提案が所得税や将来の相続税にどのような影響を及ぼすか、FPであるあなたに相談することとした。

(FPへの質問事項)
1.Aさんに対して、最適なアドバイスをするためには、示された情報のほかに、どのような情報が必要ですか。以下の(1)および(2)に整理して説明してください。
(1)Aさんから直接聞いて確認する情報
(2)FPであるあなた自身が調べて確認する情報
2.事業用定期借地権と一般定期借地権にはどのような違いがありますか。
3.保証金、権利金、前払地代として受け取った金銭は、所得税および相続税について、どのように扱われますか。
4.X社の提案とY社の提案について、それぞれのメリットや留意点を教えてください。
5.本事案に関与する専門職業家にはどのような方々がいますか。

【甲土地の概要】

※近隣商業地域、指定建蔽率80%、指定容積率300%、第3種高度地区、準防火地域
※地元不動産会社によれば、甲土地の時価は約3億円と査定されている。

ページトップへ戻る

part2 ポイント解説

1. アドバイスに当たって必要な情報

(1) Aさんから直接聞いて確認する情報
甲・乙土地と自宅は相続で取得しているが、相続により財産を取得した場合、その取得日・取得費を引き継ぐことから、当時の状況の詳細が分かる資料があるかという確認が必要。
また、提案されている土地活用は数十年にわたる長期間のプランであるため、今後のライフプランやその資金計画等、推定相続人の意向についても確認が必要。

(2) FP自身が調べて確認する情報
顧客が関知していない状況や、忘れている事項がある可能性もあるため、物件の登記簿と、現地の確認を行うことで、所有権・抵当権等の権利状況や土地・建物の物理的状況を、実際に確認することが必要。
また、用途地域・地方自治体の都市計画等を確認し、今後の開発予定・環境変化を把握することが必要である。
本問の場合、特に土地活用による安定的な収益を得ることを希望していることから、土地活用方法やX社・Y社の経営状況等についてあらかじめ地元の不動産業者と接触して周辺事情を把握しておくことが必要。

2. 事業用定期借地権と一般定期借地権の違い

事業用定期借地権等(事業用定期借地権、事業用借地権) は、存続期間10年以上50年未満で用途は事業用限定、期間満了で借地関係は終了するため、原則として借地人は建物を取り壊し、更地にして返還する。
(10〜30年:事業用借地権、30〜50年:事業用定期借地権)

メリットとしては、大きな設備投資を必要とせず、長期間安定的な収入が確保でき、契約満了時には更地で返還されること。

デメリットとしては、利用用途が「事業用」に限られるため、汎用性が少ないことと、一般に地代収入は他の方式による収益よりも低いという点がある。

これに対し、建物に用途制限がない一般定期借地権の存続期間は50年以上で、契約は書面(公正証書でなくても可)で締結する必要がある。

なお、建物譲渡特約付借地権は、存続期間30年以上で、期間満了で契約が消滅し、地主が建物を買い取る特約が付いた借地権である。

3. 保証金・権利金・前払地代の所得税・相続税における取り扱い

賃貸借契約における保証金を無利息で預かっている場合、保証金により生じる経済的利益については、返還するまで毎年の不動産所得において総収入金額に算入される。よって、本来ならローンを組んで利息を払う必要があったことから、支払わずに済んだローンの利息分が総収入金額に算入される。
また、保証金は債務となるため、相続税負担の軽減が期待できる。

次に、権利金を受け取った場合、原則として不動産所得の収入として計上されるが、権利金が借地権の設定対価として受け取ったものであり、その土地の更地価額の2分の1を超える場合には、譲渡所得となる。
また、権利金や礼金は一般に借地人に返還を要しないため、債務控除の対象外であり、相続税の課税対象となる。

最後に、前払地代方式の場合、一括で受け取った前受地代は、税務上期間に応じて均等に不動産所得における収益計上することになるため、権利金のような一時金としての多額の所得税負担を回避することができる。ただし、借地期間中に中途解約があった場合には、未経過地代の返還が必要となる。
また、前払地代のうち、相続発生時の未経過地代については、定期借地権を設定した宅地として評価上減額されるため、債務控除の対象外であり、相続税の課税対象となる。

4. X社とY社の提案におけるそれぞれのメリットや留意点

●X社の提案
メリット:借地期間が40年であるため、期間満了時も後継者の長男Cは75歳で、その後の土地活用について問題なく判断できると思われる。
留意点 :入居する事業者の業績や経営方針の変更により、中途解約の申し出が発生する可能性がある。
なお、建物譲渡特約付借地権の併用も可能とあるが、Aさんは建物賃貸事業よりも土地の賃貸による安定的な収益を望んでいることから、併用は不要と思われる。

●Y社の提案
メリット:利用目的が宅地開発であるため、長期にわたって安定的に契約が継続される可能性が高い。また、前払地代を原資として甲土地上の分譲マンションの一部を取得することで、借り入れをせずに不動産賃貸収入を向上させることも可能。
留意点 :借地期間が70年と非常に長期間であり、期間満了前には後継者の長男Cの相続が発生する可能性が高く、将来の土地活用については予測が立ちにくい。

いずれの提案もメリットと留意する点があるものであり、借地期間の満了前には相続が発生する可能性が高いことから、推定相続人である長男Cさんも交えながら検討していくことが必要である。

5. 関与すべき専門職業家

甲土地の有効活用における、正確な測量については測量士測量結果に基づく適正な不動産価格・地代、賃料の算定は、不動産鑑定士課税上の取扱いに関する具体的な税務相談については税理士、不動産賃貸の媒介等の宅地建物取引業法に規定する業務に該当するものについては、宅地建物取引士が適当。

◆この試験問題の公開体験談

【note】かちょー @中小企業診断士×1級ファイナンシャル・プランニング技能士 #1 2022年度第3回FP1級実技試験Part2(2/12)

2023年2月12日part1          目次
ページトップへ戻る

FP対策講座

<FP対策通信講座>

●LECのFP講座(キーワード検索欄で「1級」と検索) ⇒ FP(ファイナンシャル・プランナー)サイトはこちら

●1級FP技能士(学科試験対策)のWEB講座 ⇒ 1級FP技能士資格対策講座(資格対策ドットコム)

●通勤中に音声学習するなら ⇒ FP 通勤講座

●社労士・宅建・中小企業診断士等も受けるなら ⇒ 月額定額サービス【ウケホーダイ】

ページトップへ戻る

Sponsored Link

実施サービス

Sponsored Link

メインメニュー

Sponsored Link

サイト内検索

Sponsored Link

Copyright(C) 1級FP過去問解説 All Rights Reserved.